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FTF Japan 2014 - クルマ、通信、セキュリティが創る「明日のインターネット(IoT)」

マイナビニュース
FTF Japan 2014 - クルマ、通信、セキュリティが創る「明日のインターネット(IoT)」
●Internet of Thingsを支える製品開発を目指す「Internet of TOMORROW」
半導体大手メーカーFreescale Semiconductorの日本法人フリースケール・セミコンダクター・ジャパンは、12月4日に顧客向けの講演会兼展示会「Freescale Technology Forum Japan 2014(FTF Japan 2014)」を東京都港区高輪のホテルで開催した。本稿では、同イベントで実施された基調講演の概要をお届けする。

基調講演では米国本社の上級副社長で販売・マーケティング部門のトップをつとめるブランドン・トラニー氏と、2014年11月に日本法人フリースケール・セミコンダクター・ジャパンの社長に就任したケンリック・ミラー氏が登壇し、Freescaleの事業概要とFTF Japan 2014のハイライトを紹介した。

トラニー氏は冒頭の挨拶で、10月6日に開催を予定していた「FTF Japan2014」が台風の影響によって中止せざるを得なかったにもかかわらず、ここに改めてFTF Japan 2014を開催できたことは、とてもうれしいと発言した。実際、FTF Japanに毎年のように参加していた日本のエンジニアにとって、10月6日(月曜日)のイベントが前日の5日(日曜日)には中止と決まり、すぐに参加者全員に知らされたことはかなりの衝撃だった。わずか2カ月後にイベントが開催されると考えていたエンジニアは多くなかっただろう。それどころか、今年度のFTF Japanはないものと考えていたエンジニアが少なくなかった。

ミラー氏は、2020年にオリンピックとパラリンピックの開催を控えている日本に対する期待を述べていた。
前回のオリンピック、つまり、1964年の東京オリンピックでは日本は新幹線というすばらしい高速鉄道を開業させ、世界を驚かせた。2020年は、1964年と同様に日本が世界を驚かせる機会になるとした。

また2020年には、世界中でインターネット接続されたデバイスの数は、280億個に達する見込みである。そして1億5,200万台の自動車が、インターネット接続されるようになるとした。

○自動車用と通信用のプロセッサで強み

ところでFreescaleの事業部門は現在、5つに分かれている。「マイクロコントローラ」、「デジタル・ネットワーキング」、「自動車用MCU(マイクロコントローラ)」、「アナログとセンサー」、「RF(高周波)」である。言い換えると、汎用マイコン、デジタル通信用半導体、車載マイコン、アナログ半導体とセンサー、無線(ワイヤレス)通信用半導体、となる。

製品開発で特に注力しているのは「IoT」分野である。
「IoT」は、普通はInternet of Thingsの略なのだが、Freescaleはわざとこれを「Internet of TOMORROW」(明日のインターネット)と呼称していた。明日のIoT(Internet of Things)を支える製品の開発に注力しているという意味なのだろう。

そのIoTを支える半導体製品を、通信用IC、プロセッサ、センサー、マイコンとアナログ、の4つに分け、それぞれの製品分野でFreescaleの製品が重要な位置に付けていることをアピールしていた。

通信用ICでは、通信向けの組み込みプロセッサ市場でシェアトップ、プログラマブルDSP市場でシェア2位に付けているという。プロセッサでは、車載情報娯楽機器用プロセッサ市場でシェア2位、マイクロプロセッサ市場でシェア3位を占めているとする。センサーでは、外販の自動車用加速度センサーでシェアトップ、外販の自動車用MEMSでシェア2位に付けているという。マイコン(マイクロコントローラ)では、世界のマイコン市場でシェア2位、自動車用マイコン市場でシェア2位を占めているとした。このほか、無線通信のインフラ機器向けRFパワートランジスタ市場でシェアトップに付けていることをアピールしていた。


●ガソリン車の開発と異なる大部屋方式での開発を採用したトヨタのHV車
○ハイブリッド車の開発で見せたトヨタの底力

続いては、Freescaleの重要な顧客であるトヨタ自動車による、ハイブリッド自動車開発に関する基調講演が実施された。講演者はトヨタ自動車でハイブリッドシステムの開発を主導してきた、嵯峨宏英氏である。講演のタイトルは「トヨタのHV開発マネジメント」で、世界初の量産ハイブリッド自動車「プリウス」の開発から始まる、ハイブリッドシステムの開発体制と開発マネジメントの歴史を一気に解説してくれた。

1997年に発売されたトヨタのハイブリッド自動車は、今年(2014年)9月に累計販売台数が700万台に達したと嵯峨氏は始めにハイブリッド車の現状を示した。ハイブリッド自動車や電気自動車などのエコカーは「普及してこそ環境に貢献できる」との思想でトヨタはエコカーを開発してきた。700万台という台数は世界の自動車販売台数に比べればわずかな台数であるものの、電気自動車に比べれば、はるかに膨大な台数である。特に日本市場では乗用車販売台数のランキングには常にハイブリッド乗用車が上位に入っている(2014年11月の新車販売台数実績はハイブリッド車「アクア」がトップ、ハイブリッド車「プリウス」が2位、日本自動車販売連合会の公表データ)。日本の乗用車市場では、ハイブリッド車はベストセラー車になっている。


そのハイブリッド車は、技術的にはきわめて複雑なシステムである。このため、システム全体を見渡せる技術者が存在しない。そこで開発にあたっては、これまでのガソリン車の開発(開発主査が開発チームを率いる)組織とまったく異なる。大部屋方式を採用した。エンジン、制御、電池、モータ、パワー制御ユニット(PCU)、トランスミッション、回路などの各ユニット開発チームをなるべく1カ所にまとめ、各ユニット間を強く連携させることで開発にあたった。初代プリウスの開発では、モーターとPCU、電池の開発を大部屋にまとめた。このハイブリッドユニット開発の大部屋が、ユニット生産の部門とやり取りした。

そして3代目のプリウスを開発するときには大部屋体制を拡大し、開発部署をハードと制御の2部に分けるとともに、拠点の集約を本格化した。
大部屋にはエンジン、トランスミッション、モーター、PCU、電池の開発チームが入り、各チームがそれぞれの生産技術部門と連携した。

またこれらの開発を通じて年間30万台の販売という普及目標と、ガソリン車に比べたコスト増分を3代目プリウスでは2代目の2分の1にし、4代目の開発ではコスト増分を3代目の4分の1は減らす(25%減)、5代目ではコスト増分を8分の1減らす(12.5%減)という原価低減目標が設けられた。

そして小型ハイブリッド乗用車「アクア」の開発では、サプライヤ(具体的にはデンソーの開発エンジニア)を含めた大部屋による開発体制を構築した。大部屋にはトヨタ側では設計、生産技術、製造、材料技術、メカトロニクスのエンジニアが集まり、サプライヤのエンジニアと同じ拠点で開発を進めた。総勢で約300名という大所帯である。この結果、発電機とモーターを新規開発したにも関わらず、短期間に高品質の完成車を開発できたという。特にモーターの開発では、開発途上で重要な問題が発覚して設計変更を余儀なくされたにも関わらず、実質的な開発期間をさらに縮めることで対応した。

嵯峨氏はハイブリッドシステムの開発リーダーを10年間経験して学んだこととして、リーダーに要求される大事なこととは、「部下になめられない総合的技術力」と「多くの組織やメンバを惹きつけて動かす人間的パワー」であると心の底から感じている、とコメントし、講演をまとめた。

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