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ティアック「HA-P90SD」を試し聴き - ハイレゾプレーヤー機能を内蔵したポータブルアンプ

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ティアック「HA-P90SD」を試し聴き - ハイレゾプレーヤー機能を内蔵したポータブルアンプ
●音の"源流"はReference 501シリーズにあり
ティアックからポータブルアンプ第2弾「HA-P90SD」が発売される。今度はネイティブDSD再生に対応、しかも5.6MHz。そのうえプレーヤー機能を内蔵し、PCに頼らず再生できるポータブルオーディオ機としての要素も備えている。今回、開発途上版を試用する機会に恵まれたため、その音質と使い勝手を報告しよう。

○HA-P90SDの音の"源流"

HA-P90SDのレポートへ進む前に、2014年春に発売されたティアック初のポータブルアンプ「HA-P50」について簡単に説明しておきたい。HA-P50がどのような経緯で開発されたかを知ることは、HA-P90SDという製品の"持ち味"の理解につながるからだ。

HA-P50は、同じ米Gibsonグループであるオンキヨーとの協業により開発された製品だ。基本的にはハードウェアおよびファームウェアの開発がティアック、iOS/Androidアプリの開発がオンキヨーにより進められ、ティアックからはHA-P50、オンキヨーからはDAC-HA200として発売された。
いわば"兄弟機"だが、それぞれ異なるオペアンプを採用するなど音の性格は微妙に異なり、ティアックとオンキヨーそれぞれの音に対する考え方が見てとれる。そして、この開発スキームはHA-P90SDでも踏襲されているようだ。

だから、HA-P90SDの音の"源流"はティアックの製品に求めることができる。A4サイズのハイコンポシステム「Reference 501シリーズ」がいわばリファレンスであり、その粋を昇華させた製品がHA-P90SDと言っていいだろう。実際、HA-P90SDにおいて、ヘッドホンアンプ部にプッシュプル回路とオペアンプをディスクリート構成(LR各チャンネルが完全に独立)に配置したことは「HA-501」に、DACにBurrBrown PCM1795を採用したことは「UD-501」に由来している。サイドパネルの質感などデザインもReference 501シリーズを彷彿とさせ、ティアックのアイデンティティを感じさせる。

●DSDの生々しさをポータブルで
○DSDの生々しさをポータブルで

HA-P90SDという製品は、ポータブルアンプでありUSB-DACだが、単体で音源を再生できるポータブルオーディオでもある。高音質・ハイレゾ対応をうたうポータブルオーディオには、Astell&KernのAKシリーズやソニーのウォークマンなどがあり、すでに大きな製品カテゴリとして確立されているが、HA-P90SDはここに完全一致しない。
軸足はあくまでポータブルアンプ/USB-DACに置きつつ、利便性を高めるために再生機能を付加したというスタンスの製品だからだ。

実際、プレーヤーとしての機能はごくシンプル。アーティスト/アルバム別再生やプレイリスト、シャッフル再生には対応するが、表示はモノクロでアルバムアートワークを表示するようなUIの華やかさはない。レートを付けたり歌詞を表示したりする機能もない。片手で操作できるマルチウェイスイッチは使いやすいが、本機の売りではない。

というのも、本分たる"音"が強い印象を残すからだ。リーズナブルな価格帯ながら高い描写力を持つ開放型ヘッドホン「AKG K612 PRO」と組み合わせ、内蔵プレーヤーでmicroSDカードの音源を試聴したところ、その臨場感に息を飲んだ。Mathias Landaeus Trioの「Opening」(5.6MHz DSD)は、とにかくドラムのスティックワークの緻密さが印象に残る。
情報量が多く、微細な音まで忠実に再現されているからか、スタジオの残響音も生々しく聞こえる。

PCM音源も好印象。ファームウェアが開発途上版ということもあってか、FLAC再生時には散発的にノイズが発生していたが、88.2kHz/24bitおよび96kHz/24bitのWAVはクリアな音を愉しめた。音の立ち上がり/立ち下りが鋭く、ハイハットやスネアのアタックも余分な間を置かず収束する。ベースなど低域寄りの音も制動よく、モタつかない。左右の分離感に優れ、定位も鋭い。

これはUD-501などでノウハウが蓄積されたDAC「PCM1795」もさることながら、プッシュプル回路とオペアンプ(BurrBrown OPA1602)をディスクリート構成としたことの効果が大きそうだ。

●PC接続での再生か、本体のみでの再生か
○PC接続での再生か、本体のみでの再生か

HA-P90SDには、PCと接続して使うUSB-DACとしての側面もある。
アシンクロナスモードに対応しているため、PC側のクロックに依存せず内蔵の高精度なマスタークロックを使い再生できる。マスタークロックとして使用されるオーディオ用の高精度水晶発振器は、44.1kHz系と48kHz系の2基が搭載されており、再生する音源のサンプリング周波数系統に合わせることで、正確なDA変換およびジッター低減効果を期待できる。

その音だが、DSD再生に関していえば本体のみで再生したときに軍配が挙がる。PC(Mac)側のプレーヤーソフトには「ティアック HR Audio Player」を使用したが、本体のみで再生したほうが音の輪郭や音場感が際立っていた。原因として考えられるのは、USBケーブルを経由しPCのノイズの影響を受けたか、PCとHA-P90SDどちらで再生(DSFデコード)を行ったかだが、伝送経路が最短となる本体のみの再生のほうに分がある。

また、ここまで触れてこなかったが、HA-P90SDはスマートフォン対応に力を入れている。iOSデバイスとのLightning接続(Aポート使用)、またはAndroidデバイスとのOTGケーブル接続(micro Bポート使用)のどちらでも、DSD 2.8/5.6MHzのネイティブ再生およびPCM 192kHz/24bitの再生が可能なのだ。

今回の試用機はファームウェア(v0.82)が完成版ではなかったため、スマートフォンを接続した再生は不安定だったが、スマートフォンのハイレゾ音源をケーブル直結で再生できることは、ユーザにとって大きな魅力となることだろう。


テストした時点のファームウェアは若干安定性に欠けたが、それを除けばHA-P90SDというポータブルデバイスには十分以上の魅力がある。microSDカードにPC、スマートフォンと音源の保存場所を選ばないこと、そしてReference 501シリーズで培ったノウハウを惜しげもなく投入した音質面でのこだわり。コストパフォーマンスにも優れ、2015年話題のモデルとなることは確実だろう。

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