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春秋航空日本の覆面取材で見えた国内LCCの今--ボーイング機運航にも理由あり

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春秋航空日本の覆面取材で見えた国内LCCの今--ボーイング機運航にも理由あり
●低価格・手荷物無料・使いやすさなど、後発LCCを生かしたサービス
今夏、国内で4社目となる低コスト航空会社(LCC)が運航を始めた。春秋航空日本(スプリングジャパン)である。就航路線は成田~佐賀/広島/高松。成田空港は国内最多の4社が集中する"LCC銀座"だが、後発のスプリングジャパンはどんなサービスを提供してくれるのだろうか。

結論から言えば、この新しい国内LCCは後発であることを逆にメリットに変えていた。他のLCCの成功と失敗から学び、それを自社便に反映していたのである。そもそも、佐賀や広島といった他社が就航していない路線を中心に運航している点に独自性があるわけだが、日本のLCCは諸外国に比べてサービスのレベルが高くなってきている。スプリングジャパンのサービスには、それが強く感じられたのだ。


○電話が通じやすく銀行振り込みもOK

予約段階からサービスは特徴的だった。搭乗した成田~佐賀線の運賃は、キャンペーンの「ラッキースプリング」を除けば最安の「スプリング運賃」で片道5,700円。成田~広島/高松線もほぼ同じ料金設定だ。土日にはこれより1,000円~3,000円前後高くなることもあるが、いずれにしろ文句なしに安い。しかも、受託(預け)手荷物の手数料も10kgまでなら無料だ。

そして、特徴的だと思わされたのが支払い方法。クレジットカード払い、コンビニ払いに加え、コールセンターで電話予約した場合のみに限られるが銀行振り込みもできる。電話がなかなか通じないLCCが多い中、スプリングジャパンのコールセンターは比較的つながりやすいのも好印象だった。
予約の段階から、サービス一つひとつに細やかさが感じられた。

○突然の搭乗券紛失にも親切に対応

搭乗当日。空港での対応にも同じ細やかさがあった。自動チェックイン機の近くにはスタッフがおり、使い方がよく分からない乗客に親切に教えている。

また、筆者は搭乗券を紛失してしまったのだが、それも無料で再発行してくれた。すいている席を予約し直す形なので満席だと物理的に無理だと言われたものの、幸い空席があった。オプションで座席指定をしていたのだが、これも事前に支払っていたからだろうか、追加手数料を徴収されることもなかった。LCCの場合、こういうケースでは手数料を取られるケースも多い。
航空券を紛失した筆者はセキュリティー上の理由で、最後にゲートを出たのだが、他の客が搭乗をすませる間、スタッフは「もう少しお待ちくださいね」と親切に声をかけてくれた。時間に遅れている乗客に対しても、何度もアナウンスをして探している。海外のLCCなら、遅れた客は取り残されるのが半ば常識である。

●日本人向けに徹するにサービス好感! 機内販売は"百均"風の価格設定
○他社と違う機材を使い、座席も広め

さて、アクシデントがあったものの、バスに乗って駐機場に向かい無事にボーディングできた。機内に入ってうれしかったのは、「やっぱり座席が広い」と分かったからだった。

というのも、スプリングジャパンはボーイング737-800を使っている。この機種は他の国内LCCが使っているエアバスA320と比べると190cmほど縦長。両方とも同じナロウボディ(単通路)の小型機で、座席の広さは航空会社やシートによって違ってくるから一概には言えないが、1席あたりのシートピッチ(前後間隔)は737-800の方が広いことも多いのだ。
実際に計ってみると普通席は75cm。他の国内LCCの普通席は平均70cmなので、やはり余裕がある。筆者は身長178cmでやせ形の体型なので前後幅があるほど楽なのだ。

○"中国系"を感じさせない日本的なサービス

中国の春秋航空が最大の出資者であるため、"中国系"というともすればマイナスイメージを持たれがちの同社だが、サービスにそれはほとんど感じられなかった。この日のキャビンアテンダント(CA)は4人とも日本人だった。国内の航空会社から転職したCAも少なくないのだが、気遣いのある言葉遣い、乗客の質問に対する丁寧な対応などを見ていると、会社としての方針であるのは間違いないだろう。

○手軽さを追求した"100均"風の機内販売

機内サービスで印象的だったのは税込100円の機内販売品。お茶やコーヒーからお菓子、ビールのつまみまで税込100円の商品がずらり。
イタリアのコーヒー「カリアーリ」はお替わりも自由だった。350mlのビールなど100円では買えないものもあるが、全体的に安く良心的な料金設定。就航地の商品をそろえて"地元愛"を演出するのも忘れていなかった。

○格安運賃を実現する徹底したコスト削減

LCCは運航経費(コスト)を削らなければ安い運賃を提供できない。そのため、削れるところは削る。例えば機内販売品のメニューカードはなく、ボーイング737-800型機を使っているのも、国内の旅客機はボーイング社製が多く管理コストを節約しやすいという利点があるからだ。メニューカードがないのも、鉄道を思えばさほど違和感はない。なお、CAに聞けば、機内販売品が書かれたリストを見せてくれる。


ついでに言えば、親切さや丁寧さ、笑顔での接客などは日本人のCAやスタッフならば心がけ次第の、"無料のサービス"である。特に日本では総じてそうした接客が好まれる傾向が強いため、徹底すれば印象が良くなるメリットもある。

スプリングジャパンが設立されたのは2012年9月。その直後に筆者は王●(●は「火韋」で1字)会長に直接話を聞いたことがある。氏は上海出身だが日本の大学を卒業し、日系企業に10年近く勤め日本的なビジネスを学んだ日本通であり、日本語もペラペラだ。日本のサービスにも詳しい。

あの会長の存在も期待以上のサービスを経験できた理由だろう。そんなことを思いめぐらせているうちに、スプリングジャパンIJ601便は快晴の有明佐賀空港に定刻通り着陸した。
ちなみに、佐賀空港から佐賀市内まではバスで約35分(600円)、福岡・博多駅までだと約98分(1,650円)である。

成田から佐賀まで預け荷物の手数料込みで5,700円。食事や予約時の手数料を入れても約8,000円。その運賃を考えると満足過ぎるフライトだった。

※記事は2014年10月に搭乗し取材したもの。機内販売品などのサービスは変更されている場合がある

○筆者プロフィール : 緒方信一郎
航空・旅行ジャーナリスト。旅行業界誌・旅行雑誌の記者・編集者として活動し独立。25年以上にわたり航空・旅行をテーマに雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアで執筆・コメント・解説を行う。著書に『業界のプロが本音で教える 絶対トクする!海外旅行の新常識』など。

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