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iPhoneアプリ、お買い物ダイアリー「レジカメ」をリリースしたカシオが意図するもの

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iPhoneアプリ、お買い物ダイアリー「レジカメ」をリリースしたカシオが意図するもの
●カシオの新作iPhoneアプリ「レジカメ」とは?
時計やデジタルカメラ、楽器など、自社製品の機能サポートあるいは販促を目的としたスマホ用アプリを数多くリリースしているカシオ。そのカシオが、また新しいiPhoneアプリを発表した。その名も「レジカメ」。「お買い物ダイアリー」との枕詞を掲げるそれは、特定の製品とはまったく関係のない、単独で使用するアプリだという。しかも、すべての機能が無料。その具体的内容と狙いについて、企画を担当したカシオ計算機デザインセンタースタッフにお話を伺った。

○家計簿で得られる成果は"楽しくない"

「レジカメは、インスタグラムのような写真アプリと家計簿アプリのいいところを組み合わせたような、そんなアプリです」。レジカメを企画したカシオ計算機デザインセンタープロダクトデザイン部の三崎直昭氏はそう語る。


三崎氏「"お買い物ダイアリー"と銘打っている通り、自分の買った物や食べたものなどを撮影して、その金額を入力できるようになっています。そして、それをカテゴリーに分けて管理できる。そういった意味では家計簿的なのですが、このアプリはもっとユルい発想でつくられているんです」

読者諸氏も経験がおありのことと思うが、家計簿はなかなか続かないものだ。それは何故か。「買った物や使ったお金を毎日欠かさず入力しても、得られる成果が楽しくないから」ではないかと三崎氏は言う。

三崎氏「家計簿を付けてわかることは、自分がどれだけ無駄遣いをしたかや、どんなものにお金を多く使ったかといった、反省材料みたいなものが多い(笑)。しかも、1カ月の生活で使ったお金をすべて入力しないと、正確さから意味がない。これを続けるのは大変です。
そうではなくて、こんなものを買って嬉しかった、この料理は美味しかった、などの買い物の思い出を日記のように記録することができれば続けられるんじゃないかと思ったんです。しかも、写真があれば、後から見返しても楽しいですよね」

このレジカメ、使い方はきわめて簡単。アプリを起動すると、画面上部にカメラのスルー映像、下部にはレジのようなテンキーが表示される。ここで買った物を撮影して、その金額と名前、ひとことコメントなどを入力。あとは、グルメ、スイーツ、ドリンク、ファッション、雑貨、プレゼントやおみやげ、音楽や映画、本や雑誌、スポーツ、旅、観光(入場料など)といったカテゴリーアイコンから最適なものを選ぶだけ。保存時にGPSの場所情報も一緒に保存される。

三崎氏 「記録が面倒だと続かないので、操作はなるべくシンプルにしました。また、海外への旅行や出張で使用することを考えて、金額入力の際にリアルタイム円換算が使えるようにしています」

使用できる通貨は、「マイ通貨」(普段使う通貨)として3種類、「使用通貨」(旅行先の現地通貨)として15種類。
10分ごとに更新される為替レートをリアルタイムで参照するためインターネットへのアクセスが必要となる。この機能は、海外で買い物をするときにも役に立ちそうだ。

三崎氏「自分の感覚と実際の為替レートがずれていると、(買った物が)思っていたより高かったなぁとか、帰国してから思ったりしますよね(笑)。この機能を使えば、日本円でいくらかがわかるので、海外でも安心して買い物ができますよ」

レジカメはまず日本国内向けでの公開を考えているため、現状の通貨はドルやユーロのほか、日本人の渡航先として人気のあるアジア圏を中心に絞り込んで設定されている。ただし、実際にはもっと多くの為替情報を取得しており、将来的には対応通貨を増やしていきたいそうだ。

○お金を使って良かったと思えるアプリに

記録した内容は、Facebookのタイムラインに近い「リストビュー」、画像ビュワー風の「サムネイルビュー」、場所情報をもとに地図上に買った物の情報を表示する「マップビュー」で閲覧でき、それぞれワンタッチで切り替え可能だ。ちなみに、リストビューとサムネイルビューの右上には、その月に記録したものの合計金額が表示される。これも家計簿的な要素だ。


三崎氏「レジカメはあくまでも"ダイアリー"なので、合計金額はさりげなく出しています。でも、ビューはカテゴリー別に絞り込んで表示できるので、『今月はこんなことにこのくらい使った』ということがわかるのは楽しいですよ。写真があると家計簿的な反省よりも、『お金は使ったけれど楽しかったな』と思えますし。レジカメは、お金を使って後悔するのではなくて、お金を使って『こんなものが買えた、良かった! 』と思えるアプリにしたかったんです」

カテゴリーについてもさらに増やしていきたいとのこと。「より細分化して、たとえばラーメンのアイコンなんかがあっても楽しいですね。マップビューで表示すれば、簡単にラーメンマップが作れます」(三崎氏)。●家計簿だけでなくライフログとしての要素も
また、カテゴリーにはクローバーのアイコンがあり、日常生活の中で楽しかった思い出などに使用することを想定している。クローバーアイコンだけを絞り込めば、タイムラインが今月の楽しかった思い出のシーンで溢れるのだ。
レジカメは買い物に使うだけでなく、毎日のライフログとしても十分に活用できる。

三崎氏「実は、もらったプレゼントや入場無料の観光地など、金額を0円で入力したものも絞り込めます。いわゆる"プライスレス"な思い出ですね。」

写真のアスペクトは正方形。現状は1種類ではあるが撮影すると自動でフィルター効果が適用され、お洒落な写真が残せるなど、冒頭にも話の出たインスタグラムを想起させる。

三崎氏「アプリが使われるシーンから、インスタグラムを意識はしています。でも、正方形なのは画面レイアウトの都合という理由が大きい。画面下部に電卓ボタンやコメントを表示しなければならないので、画像を大きく表示しようとすると必然的に正方形になるんです」

フィルター効果は、使われるシーンを想定して、食べ物が美味しそうに見えるようパラメーターを調整したという。主に彩度とコントラストを上げているが、その調整はコンマいくつというレベルで追い込んでいるとか。


三崎「ドーナツを買ってきて、これが一番美味しく見えるように調整してくれと開発にお願いしたりしましたね(笑)」

記録した画像はTwitterとFacebookで共有が可能なので、買い物の報告や自慢、頼まれたお土産の確認もできる。Twitterで共有する場合、つぶやきに自動的にハッシュタグ(#レジカメ #regicame)が追加されるので、他のユーザーのレジカメ画像を手軽に探すことができる。買い物上手やセンスの良いユーザー、海外雑貨が好きなユーザーなどをフォローすると、自分の買い物やお土産探しにも役立つはずだ。現在はプライバシーを考慮して場所情報は共有されないが、今後はユーザーからの希望次第で対応を検討するとのこと。また、LINEなど他のSNSへの対応も視野に入れていきたいと花房氏は語る。なお、レジカメ専用のSNSを開設する予定は今のところないという。

このように、実に楽しそうなレジカメ。現在はOS7.1以上のiPhone用のみ公開されているが、カシオではOS8でも検証を続けているという。
デザインセンタープロダクトデザイン部の花房紀人氏は語る。

花房氏「日本国内でのユーザー数の多さ、そして開発環境が整っていることから、まずはiPhoneアプリとしてリリースしました。将来は海外展開も見据え、Android用のリリースもおこなっていきたいですね。」

花房氏によれば、ターゲットユーザーは当初、女性を想定していた。が、多くの人々の意見を聞くうちに、男性からも非常に興味を持ってもらえていると感じたという。考えてみれば、家計簿を付けるのが苦手なのはむしろ男性だ。そして、男性のSNSユーザーも数多くいる。こんなアプリが無料なら、老若男女を問わず使わない手はない。

○企業イメージをアプリが変える

しかし、ここまで凝ったアプリを無料で提供するとは驚きだ。カシオは一体、これをどうビジネスに繋げる考えなのだろうか。

花房氏「レジカメで直接お金を稼ごうとは、あまり考えていません。カシオという会社にユーザーが感じているであろう堅いイメージを、こういうアプリで変えてみたいんです。なんといっても社名に"計算機"ですから(笑)。これはこれで、会社の起源と業務を物語る良い名前ではあるんですが、我々がユニークな発想と柔軟な姿勢で物づくりに取り組んでいることを、もっと多くの人々に知ってほしい。そんな方々が将来的に増えてくれれば、カシオという会社も世の中もさらに面白く変化していくんじゃないか、という期待があります」

レジカメは元々、デザインセンターの提案活動から生まれた。ご存じの通り、カシオはG-SHOCKをはじめとする時計やデジカメのEXILIM、電子辞書のEX-WORDや電子楽器のPriviaなどなど、多岐にわたる製品作りを行っている。そして、これら数多くの事業部と製品に、串刺し的に関わっているのがデザインセンターなのだ。

花房氏「その立ち位置から、私たちは社内でも各事業部の強みを客観的に見られる部署でもあるんです。そこで半期に一度、自由な提案をする機会があるんです。レジカメは、そこで三崎が提案したプロダクトです。最近では、スタンプメーカーのポムリエなどもここから誕生した製品ですね」

今までは、「物としての製品」を前提に考えてきたデザインセンタースタッフだったが、その心の内には、それがアプリやWebサービスでもいいのではないかという思いが常日頃からあったという。アプリは、プロダクトの開発に比べて予算とスケジュールを抑えることができ、開発のハードルが低い。そこで思い切って提案したところ、レジカメは無事、上層部のゴーサインを得てスピーディに開発が進められた。

花房氏「"物としての形"にならない資産とでもいいますか。最初はカシオのアプリと気付かず使っていただいてもいいかな、くらいに実は考えているんですよ。アイディアや使いやすさが気に入って使っていたら、ある日、あれ? カシオって書いてある、と気付く。そのとき、カシオってこんな面白い物も作るんだなぁと思っていただければいいんです。次にデジカメを買うときにEXILIMを選んでいただければ、もっといいなぁと(笑)」

お話を伺っている間、我々取材陣からも「カテゴリーごとに値段順でソートできるようにしてはどうか」、「高額な買い物にランキングマークを付けては? 」など、こんな機能が欲しい、こう使ったら面白そうといった雑談が途切れなかった(おかげで、原稿をまとめるのに苦労している)。

花房氏「今回いただいたような意見も、できるだけ迅速に形にしていきたいですね。そういった価値もレジカメの価値になり、ひいてはカシオの企業的価値になっていくと思うのです」

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