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CES 2015 - 「Beyond 4K」テレビを2015年前半にも発売? - シャープ水嶋繁光副社長に訊く4Kのさらに先の世界

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CES 2015 - 「Beyond 4K」テレビを2015年前半にも発売? - シャープ水嶋繁光副社長に訊く4Kのさらに先の世界
●Beyond 4Kのように、誰もやっていないことをやる必要がある
シャープの水嶋繁光副社長は、米ラスベガスで開催中の「2015 International CES」の会場において取材に応じ、同社が発表した「Beyond 4K」テレビを2015年度前半にも発売する意向を明らかにした。価格は100万円を切る可能性もあるという。一方、韓国勢などが積極的に市場投入している湾曲画面のテレビについては、「製品化は予定していない」と述べた。また、量子ドット技術の採用についての見解も述べた。

シャープの水嶋繁光副社長と、シャープ 執行役員 米州マーケティング統轄兼シャープ・エレクトロニクス・コーポレーション社長の大澤敏志氏に話を聞いた。

―― 今回の2015 International CESにおけるシャープブースの展示のポイントはなにか。

水嶋「日本でラジオを最初に作ったのはシャープであり、テレビの量産を行ったのもシャープである。液晶テレビを世の中に問うたのもシャープ。
このように、歴史の変化を先取りする会社でありたいというのがシャープの基本姿勢だ。4Kテレビは、2004年にシャープがCESに初めて出品し、今年のCESではもはや当たり前の技術になっている。

そのなかで、シャープは4Kをしっかりやるという姿勢をみせながらも、4Kの次の時代をどうつくるのかを提案したいと考えている。過去5年ほど、シャープブースでは8Kの展示をしてきたが、今回のCESでは、『Beyond 4K』という新たな提案を行っている。いよいよ4Kの次の時代がスタートする。それを展示のメインにしている。新たなBeyond 4Kの位置づけとはどういうものなのかということを、世の中の人にわかっていただきたい。

そのほか、フリーフォームディスプレイや、世界最大となる120型の4K液晶ディスプレイの展示など、新たなディスプレイの提案も行っている。
また、バックライトに量子ドットの蛍光体を使用したテレビの試作品も展示している。ここでは、赤の表示がキレイに表示されることを見てもらえる。シャープは、新たなテレビ、ディスプレイの流れを積極的に提案し、次代を築くのはシャープであるということを、技術、製品を通じて評価してもらいたい。

CESを訪れる方々は、BtoB関係者が増えている傾向にある。自動車業界の関係者も増えている。また、北米地区だけを対象にしたイベントではなく、全世界から人が訪れている。そうした来場者に対して、きちっと情報を提供したい。CESでは、映像、音響、情報機器関係が中心に展示されてきた経緯があるが、シャープは、あくまでもディスプレイという切り口でのビジネス提案を行っていく」

―― シャープが提案する「Beyond 4K」とはどういうものなのか。


水嶋「8K並みの解像度を実現し、4Kのクオリティとは明らかに異なるのが、Beyond 4Kだ。CESのシャープブースでは、8Kテレビ、4Kテレビと一緒に展示し、Beyond 4Kの品質を体感してもらえるようにした。正式な商品名称は、今後改めて発表することになる。製品投入時期は、2015年度の早い時期。つまり、上期には日本および北米で投入したいと考えている。価格は、最終的には決定していない。今後マーケティング活動などを通じて決めていきたい。いま8Kディスプレイを作ると、1台1,000万円ぐらいになるが、Beyond 4Kは、いまの4Kテレビの最上位という位置づけでの価格設定となる。
100万円前後がひとつの目安になる。言い換えれば、いまの4Kテレビと同じ価格設定では売りたくはない。画面サイズは80型を中心に上下に展開していく。

NHKでは、8K(スーパーハイビジョン)において、100型を推奨しているが、あまり大きくても家庭の中に入らないという問題が起こると考えている。2016年には8Kの試験放送が日本国内で開始され、2020年には本格放送が始まる。その前に、リーズナブルな価格で、8Kの世界を体験してもらうことができる。Beyond 4Kを8K時代の実現に向けてエポックメイキングな製品に位置づけたい。一方で、Beyond 4Kに関する知財は、きちっと守っている。
すぐに他社が真似ができるものではない。パネルだけでなく、画像エンジンも一緒に作っている点が特徴であり、この点からも他社が、早期にキャッチアップできるものではないと考えている。

テレビは誰も儲かっていない。テレビのトレンドを後ろから追ったり、真似をしても収益がでない。誰もやっていないことを、最初にやることしか、収益をあげる方策はない。Beyond 4Kのように、誰もやっていないことをやる必要がある」

●高い付加価値や、シャープの特色を持った製品を出して利益を得る
―― 「Beyond 4K」のマーケティング戦略はどう考えているか。

水嶋「Beyond 4Kはまだ日本でも見せていない初公開の製品となる。その反応をみた上で、マーケティング戦略を考えたい。
ただ、一般的なテレビがコモディティ化していくなかで、横並びの商品展開ではなく、独自技術を生かした戦略に持って行きたい。日本、北米、中国といったハイエンド商品が受け入れられる市場がターゲットになる」

―― 中長期的にみると、「Beyond 4K」はシャープのテレビ事業において主力になりうる製品なのか。

水嶋「2020年に8K放送がスタートしても、コンテンツそのものはほとんどが、4Kコンテンツになると予想している。10年ほどはそうした時代が続くのではないか。Beyond 4Kは、4Kコンテンツを8Kのクオリティに高めて映すテレビである。そして、8Kのコンテンツも8Kのクオリティで映し出すことができる。一般的な4Kテレビでは8Kのコンテンツのクオリティを映し出せないし、8Kテレビで4Kコンテンツばかりを見ていては、オーバースペックのクオリティとなり、もったいない。そうした点でも、多くのお客様にとって、Beyond 4Kは、選択の中心になり、主力になる可能性があると考えている」

―― 韓国勢、中国勢は、湾曲(カーブド)テレビに力を注いでいるが、シャープはどう考えているのか。


水嶋「カーブドテレビに価値を見いだせるのか、という点で、私には疑問がある。技術的に曲げることはできるが、価値につながらないものをやる必要はないと考えている。他社がやるから、うちもやるではなく、テレビメーカーとしては価値はなにかという点をしっかりと見極めなくてはならない。実際、売れているという話はきかない。私の知る限り、シャープにおいては、カーブドテレビの製品化の計画はいまのところはない」

―― 量子ドットに対しては、シャープとしてどう取り組むのか。

水嶋「量子ドットの蛍光体は市販されており、今年からテレビメーカー各社が参入してくる分野であろう。CESでも各社が展示している。量子ドットは、半導体物性とは違うエリア。粒子の大きさを変えるだけで色が変わる。色を自由に出しやすいといったメリットがある。ただ、問題があるのも事実である。量子ドットは光学フィルム面に貼っている状況であり、コストが高いこと、水分などから劣化の影響を受けやすいこと、さらにカドニウムを含んでいる材料であるため、市場の抵抗感があることも想定される。しかし、色をキレイに出すためにはカドニウムが必要である。量子ドットもモールド樹脂に練り込むことが理想だ。技術的には、LEDのランプとして、新たな蛍光体をモールド樹脂に分散させて色を出すのが本来の姿だろう。だが、それができないため、各社ともに量子ドットを利用している。シャープは量子ドットについては、長年に渡って開発してきた経緯がある。

だが、技術的な課題が解決できていない。シャープでは同時に、新たな蛍光体の開発を進めており、量子ドットと並行させて検討している。最終的にどちらで行くかを、開発チームが決定することになるだろう。これは今年の製品展開のなかで決めていく。消費者にとっては、量子ドットでも新たな蛍光体でも構わない。色がキレイであれば構わないということになる。今年発売するいくつかの製品で、量子ドットを使用するということも考えられるが、市場が望む形で投入できる体制は担保している」

―― 2015年のテレビの販売計画はどうなるのか。

水嶋「シャープのテレビ事業は、コモディティ化した領域を追ったり、出荷台数を大きく伸ばすということは考えていない。むしろ、一定の規模を維持しながら、利益重視でテレビ事業をしっかりとやっていく。高い付加価値や、シャープの特色を持った製品を出すことで、利益を得るビジネスを狙う」

大澤「米国のテレビ市場は3,200万台の規模があり、今後、市場はフラットで推移すると見られている。そのうち、2014年度には4Kテレビの出荷台数が約100万台になるだろう。これは2015年度には、前年比2倍~2.5倍の規模になる。逆算すれば、3,000万台規模のコモディティ市場があるともいえるが、収益重視の姿勢は変わらない」

水嶋「4Kテレビは、今年から本格需要が始まっていると考えている。ハイエンドテレビユーザーが、4Kに乗り換えるというトレンドはすでに顕在化しており、我々が5年前に予測したものよりも速い速度で訪れている。60型以上のテレビにおいては、半分を4Kが占めるというタイミングがすぐ目の前にきている。だが、これは、日本が遅れているかもしれない。中国は昨年の時点で50%に達し、北米でも3割が4Kとなる。こうした流れに対して、テレビメーカーがしっかりと追随できているかというと疑問がある。

4Kのコンテンツを、4Kテレビで見せることは誰でもできる。フルハイビジョンのコンテンツがほとんどの世の中においては、それらのコンテンツを4Kにアップグレードして見せることが必要になる。そこでは、映像エンジンの優劣が鍵を握る。パネルだけは4Kテレビだが、ハイビジョンコンテンツを視聴する際に、4Kで実現しなくてはならない解像度が出ていない製品も多い。

私から言わせれば、その価値を実現できているのは、日本と韓国のテレビメーカーなど、昨年の時点で5社程度。映像エンジンを作るのはそう簡単ではない。映像処理の技術が蓄積しているテレビメーカーだからこそ実現できる。シャープのBeyond 4Kも、映像処理技術の蓄積によって実現したもの。こうした製品を通じて収益を生んでいく考えだ」

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