様々な要因で変動する原油価格
○原油価格
原油価格は、原油の国際単位である「バレル」(1バレル=約159リットル)あたりの取引価格のことで、「1バレルあたり○ドル」といった表記が一般的です。
取引される主な原油としては、北米市場の「WTI」、欧州市場の「北海ブレント」、アジア市場の「ドバイ原油」があり、これらの価格は原油取引の際の指標とされています。
原油などの商品(コモディティ)市場では、「先物取引」の規模が大きく、先物価格が注目される傾向にあります。先物価格とは、将来の特定の期日・価格で商品を受け渡すことを事前に約束する「先物取引」における価格です。原油を売る生産者や購入する企業などは、先物取引によってあらかじめ取引価格を決めておくことで、急激な価格変動による損失を回避(ヘッジ)しています。
また、先物取引では、実物の商品を持たずに売買することが可能なことに加え、取引の差額のみを受け取る「差金決済」を行なうことができます。こうしたことから、価格変動による収益獲得を目的とした投資家の多くは、先物取引によって原油などの商品を売買しています。
先物市場に短期的な投機資金が流入し、先物価格が大きく変動することで、現物の原油価格に影響を与えることもあるようです。
ステップアップ
米国のテキサス州などで産出される「WTI」(West Texas Intermediate)や、イギリスの北海油田で採れる「北海ブレント」は、硫黄分が少なく、ガソリンや灯油などを多く取り出せる高品質な原油とされています。一方で、「ドバイ原油」は硫黄分が多く、比較的安値で取引される傾向があります。
○需給バランスと原油安
原油などの商品が、株式や債券と大きく異なるのは、取引によって利ざやを得るだけでなく、実際に商品を消費・利用する目的でも売買が行なわれるという点です。そのため、中長期的には、現物の需要と供給のバランスが原油価格に影響を与えます。
中東などの主要産油国12ヵ国が加盟しているOPEC(石油輸出国機構)は、原油の生産量をコントロールし、需給を調整することで、原油価格の安定をめざしています。
加盟国は、総会で決定した生産量の目標を達成することをめざし、協調しています。
ただし、OPECの原油生産量は世界全体の4割程度に留まっており、原油生産はOPEC以外の国々でも行なわれています。そのため、OPECの原油価格への影響力には限界があり、産油国が自国の収益やシェアを優先して増産や減産を行ない、需給バランスが崩れて原油価格が乱高下することもあります。
昨今、世界的な原油価格の下落傾向、いわゆる「原油安」と呼ばれる状態が続いています。背景には、中国や欧州などの景気減速に伴なう需要減少や、シェール・オイルの生産増加により、原油の供給が需要に対して過剰であるとの見方が市場で強まっていることがあります。また、2014年11月にOPECが原油の減産を見送り、生産目標を据え置いたことで、そうした懸念は更に強まりました。
一般に原油安は、産油国やエネルギー関連企業にとって収益の悪化などにつながる一方で、エネルギー輸入への依存度が高い日本や欧米などの純輸入国にとっては、景気回復や企業業績への追い風になると考えられます。原油安が景気を刺激し、世界経済の回復期待を背景に原油の需給見通しが改善すれば、原油価格は持ち直していくことも考えられます。
今後も原油価格の動向には注目が集まりそうです。
ステップアップ
最近の原油価格の下落の背景には、供給過剰のほかに、米ドル高の進行が挙げられます。原油は主に米ドル建てで取引されるため、米ドル高は原油の調達コストの上昇につながり、原油市場から投機的な資金が流出する傾向にあります。
(2015年1月7日 日興アセットマネジメント作成)
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