日向坂46小坂菜緒、センターの重圧と戦いながら成長「気持ちは強くなった」
●メンバーの明るさに引っ張られて自身も変化
昨年2月に「けやき坂46(ひらがなけやき)」から改名し、1stシングル「キュン」が発売初週で47万枚を売り上げるなど華々しいデビューを飾ったアイドルグループ・日向坂46。『NHK紅白歌合戦』に初出場するなど大躍進を遂げたデビュー1年目に密着したドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』が、新型コロナウイルス影響による公開延期を経て、8月7日に公開を迎える。
本作で映し出されるのは、輝きと苦悩が交錯する彼女たちの姿。追加メンバーオーディションによって2017年8月に2期生として加入し、1stシングル「キュン」から4作連続でセンターを務める小坂菜緒の苦悩も明かされる。「なんで私が?」となかなかセンターを受け入れることができず苦しかったいう小坂に、その苦悩をどのように乗り越えてきたのか話を聞いた。
友達に連れられて「けやき坂46」のライブビューイングを見て、追加メンバーオーディションを受けようと決意したという小坂。それ以前から「いつか芸能界に入りたい」と漠然とした思いはあったものの、ライブビューイングでアイドルのパワーを実感し、けやき坂46加入が明確な目標となった。
「当時中学3年生で、受験や部活などいろいろ悩んでいたんですけど、ライブビューイングを見ていたら自然と笑顔になって、気持ちが軽くなっていて、アイドルのパワーは人の気持ちを変えるくらいすごいんだと感じました。
自分は前に出るのがあんまり好きなタイプではありませんでしたが、自分が与えられるものって何だろうと考えたときに、だれかを喜ばせることはできないのかなと思って、けやき坂46を目標にアイドルを目指したいって思って応募しました」
引っ込み思案だった小坂にとってものすごく勇気のいる挑戦だったと思うが、「そのときあまり夢がなくて、将来このまま普通に高校に行って、大学に行って、就職して……という風に進んでいくのかなと悩んでいた時期でもあって、本気で目指したいと思った夢を見させてくれた瞬間だったので、ここでいくしかない! と思いました」と、当時の心境を明かす。
見事オーディションに合格し、2期生として加入すると生活は一変。「大阪出身なので上京する形になり、親元を離れるという、家に帰っても親がいない空間も初めてですし、全国から集まった女の子たちがいるグループに飛び込んだものの、人見知りでしゃべれないしどうしようって不安ばっかりでした。もともと落ち着きがあるって言われることが多かったんですけど、違う意味で関わりづらいのかなって悩んでしまった時期もあって」と振り返る。
だが、「先輩たちが楽しい雰囲気を作ってくださるので、そこに便乗して気持ちが楽しくなっていって、最初は自分の中でも暗いところがありましたが、このグループに入って活動するにつれて変わっていきました」と、メンバーの明るさに引っ張られるように変化。「自分が戸惑っているところを、手を引っ張って連れていってくれたという感じでした」と表現した。
○■メンバーが心の支えに「話を聞いてもらえるだけで気持ちは変わる」
本作では、今だから明かせる本音を赤裸々に語っている。「いろいろ思うことはあるんですけど、ファンの皆さんに対してそれを表に出すのもよくないですし、だからこそ密着カメラで撮っていただいて、それが映像に残ってドキュメンタリーになるのはいいことなのかなと思います。
当時は絶対に言えないので。今だから、本当はこう思っていたんだって知っていただくのは、思い出になるなって感じます」
1stシングル「キュン」でセンターに抜てきされたときの苦悩も涙ながらに告白している。当時どのように乗り越えたのか尋ねると、「あの時は気合みたいな感じでした」と笑い、「もともと周りの目を気にしちゃう性格なので、集団にいるのがあんまり居心地よくなかった部分もあったんですけど、自分の居場所は今ここしかないんだと思ったら必死についていくしかないなと。だから人間関係を築くのも自分の課題なのかなって、それが一番大事だと感じました」と、人間関係構築を最も優先すべき課題に掲げた。
そして、グループ内で人間関係を構築していくことで、結果的にセンターの苦悩を乗り越えられたという。「センターで悩むことやプレッシャーを感じることは絶対にあるんですけど、そのときにメンバーに頼れるか頼れないかで気持ち的に大きく変わってくるので、先にメンバーとの関係を築いて、頼れる存在を作るのが一番だなって。話を聞いてもらえるだけで自分の気持ちは変わってくるので」
人間関係構築においては「笑顔」を意識。「笑い話としてですが、昔から『話しかけるなオーラすごいよ』って言われることがあって、人見知りというところから話しかけづらいオーラが出ているのかなと思ったので、ことあるごとに笑顔で接してみるとか、そういう細かいところを意識するようにしていったら、いつか心が開けるときが来るんだなと感じました」と笑顔の効果を感じているそうで、「今では本当に自分でもこんなに笑うんだっていうくらい笑うようになりました」とまぶしいほどの笑顔で語った。
●4作連続センターの恐怖感「締め付けられている」
相談できる仲間ができたことでセンターの重圧も乗り越えてきた小坂だが、今年1月に4thシングル「ソンナコトナイヨ」で4作連続センターが決定した際、ブログで「正直なところ、私じゃないと思ってました。だから、最後まで残った時、なんと言っていいか分からないけど、、、恐怖感に襲われました」と本音を吐露した。
「あまり振り返りたくない部分かもしれませんが……」と当時の心境を尋ねると、「全然大丈夫です」とにっこり。自身の思いをゆっくりと打ち明けてくれた。
「ここまでずっとセンターを務めてきて、3枚目まではあり得るのかなって思っていた時期はあったんですけど、4枚目のときに、何があったというきっかけは特にないんですが、なぜか気持ちの中で変わるだろうなというのがあって、そういう気持ちでフォーメーション発表を聞いていたら最後まで残って、あぁそうなんだって。そして、今まで感じたことのない不安が襲ってきました。4作まで続いて、メンバーから『4作!?』みたいな感じは全然ないですが、周りの方々からどう思われるんだろうという不安が大きくなって。薄れかけていた怖いという思いが、改めて4作目のときにドーンと出てきた感じがありました」
その恐怖と戦いながら4作目もセンターとしての役割を果たしてきた小坂だが、「その気持ちは1回感じると今でも消えなくて。
やっぱり、『4作連続』という言葉がすごく締め付けているな、締め付けられているなっていうのがあって。だからこそのプレッシャーを感じることが多く、一つ一つの曲をパフォーマンスするたびに『大丈夫かな』という不安はずっと今もあります」と、その重圧と戦い続けているという。
「でも、それでもその気持ちに負けないでいることが大事だなって思うし、自分が不安がっていたり、怖がっている思いを見せてしまうと、ファンの皆さんも心配するだろうし、メンバーのみんなも気を遣ってしまうと思うので、パフォーマンス中はそう思わないように、全力でそのステージを楽しむようにしています」と目の前のパフォーマンスに集中することで一つ一つ乗り越えているそうで、「気持ちは強くなったなと思います」と語るその姿はとてもたくましい。
○■日向坂46は「フォーメーションにとらわれず全員が輝いている」
さらに、「うちのグループは変にフォーメーションにとらわれないというのがあって、『この子はこの位置にいるから……』というのがあるとみなさん想像されているかもしれませんが、うちのグループは本当にそういうのがまったくないんです。どの子がセンターにいても1曲1曲をみんなで楽しむし、その子を支えるというのもあり、どこの位置にいても一人一人、22人全員が輝いているというのがグループの強みだと思います」と明かす小坂。
「いつか(センターから)変わるときは来るってわかっていますが、そこに関してグループ内での不安はまったくないです」と言い切り、「それは日向坂46だからこそ思うことなのかなって思います」とメンバー同士の絆の強さを感じさせた。
個人として女優やモデルとしても活躍している小坂。最後に今後の目標を尋ねると、「やっぱり一番やりたいのはアイドルなのでそのお仕事を一番に頑張りながら、女優さんなど個人としてのお仕事も少しずつでも挑戦できたらと思います。
グループとしては、今年東京ドームでの公演がありますが、いい意味で自由に幅広く活動していきたいという思いがあり、最終目標を無理やり決める必要はないのかなと思うので、自由にのびのびと私たちらしく前に進んでいきたいです」と力強く語った。
■小坂菜緒
2002年9月7日生まれ。大阪府出身。2017年、「けやき坂46 追加メンバーオーディション」に合格し、2期生としてグループに加入。2018年、「Rakuten GirlsAward 2018 SPRING/SUMMER」でランウェイデビューも果たしたほか、『Seventeen』の専属モデルにも就任。翌2019年、日向坂46の1stシングル「キュン」でセンターを務めることが発表され、このデビューシングル以来4作連続でセンターの座を守り続け、日向坂46の絶対的エースとして人気を得る。また、グループで出演した日本テレビ系ドラマ『DASADA』(2020)で主演、ホラー映画『恐怖人形』で映画初出演にして初主演を務めるなど、女優としても活躍する。
衣装:トゥービー バイ アニエスベー