日向坂46キャプテン・佐々木久美の奮闘 「本当は先頭に立つのが苦手」も覚悟を決めて
●小坂菜緒&佐々木美玲も絶賛するキャプテン力
昨年末、『NHK紅白歌合戦』に初出場するなど、大躍進を遂げたアイドルグループ・日向坂46のデビュー1年目に完全密着したドキュメンタリー映画『3年目のデビュー』が、新型コロナウイルス影響による公開延期を経て、7日に公開を迎えた。
デビュー1年目に完全密着といっても、2019年2月に「けやき坂46(ひらがなけやき)」から前代未聞の改名をする以前の映像も含まれ、1stシングル「キュン」が発売初週で47万枚を売り上げるなど、華々しいデビューを飾り日々拡大していくグループの人気とは裏腹に、その内側に隠れたメンバー一人ひとりの苦悩をも余すところなく映し出される。自分たちだけの名前を手に入れてからもなお、日向坂46らしさを求めて模索を続けてきた、その葛藤と努力の日々を追ったエモーショナルな力作だ。
その渦中にいたメンバーの中で人知れず葛藤していた人こそ、キャプテンの佐々木久美だろう。ひらがなけやき時代からキャプテンとしてグループをまとめ、自分たちのアイデンティティーを模索し続けた3年間について、キャプテンは何を思い、本作の公開をどう迎えているのか。彼女に加え、日向坂46メンバー小坂菜緒、佐々木美玲にも、キャプテンとしての佐々木久美について話を聞いた。
――昨年大きくグループを取り巻く環境が変わったと思いますが、日向坂46としての1年間を振り返っていかがでしょうか?
佐々木久美:私は潰れそうとか、今までの人生で1回もなかったのですが、去年の夏だけはちょっと忙しすぎて、寝ているのか起きているのかわからないような状態になりました。その当時の記憶があんまりないんです。
毎日が必死すぎて、ほかのことが何にもできなかった。とりあえず毎日仕事に行って現場でとりあえず頑張るみたいな。その日暮らしみたいな感じだったので、考えごとをする時間もなくて大変でした。
――けやき坂46時代の苦しい時からグループの魅力に自信を持って牽引していたと思いますが、その自信はいつから持てるようになりましたか?
佐々木久美:今でも自信は全然ないので、堂々と見せるように心がけているんです。かっこつけたがりというか、自信があるんだなって思われるように頑張っている感じです。メンバーにはバレてもいいのですが、ファンの人に弱い部分を見られたくないという気持ちがあって、「キャプテンさすがじゃん!」って思われたいんです。ヘロヘロしているところを見せないように踏ん張っている感じです(笑)。
――そのキャプテンらしさは、どうやって身に着けたのでしょうか?
佐々木久美:誰に教わったわけではないのですが、キャプテンという自覚はしていますし、そういう立場でもあることはわかっているので、いつもそう振る舞っているんです。
周囲にもグループのキャプテンとして見られるので、私がへなちょこだったらグループ全体が「あ、大丈夫?」って思われちゃうじゃないですか。グループとして表舞台に立つ時は普段の自分を断ち切って、キャプテンとして頑張ろうと心がけています。
――頑張るキャプテンの普段の素顔はどんな感じなんですか?
佐々木久美:あんまり真面目なことが好きじゃなくて、とりあえず笑っていたい感じです(笑)。実はピリピリした雰囲気が本当に苦手で、平和でいたいという気持ちがあるんです。けんかとかも嫌いだし、誰かのことを陰で言うことも好きじゃないし、平和に暮らしたい気持ちがあるので、自分が先頭に立って何かを言うのも苦手。それが本当の私です(笑)。
――久美さんはこう言われていますが、美玲さんから見てどんなキャプテンですか?
佐々木美玲:すごいなって思います。本当にキャプテンらしいキャプテンです。
みんなでふざけている時は一番にふざけているのですが、キャプテンの仕事の時はキャプテンの仕事をしている。みんなをまとめたり、MCをやってくれたり、すごいなって思います。久美はもう大人なので、そんなにグイグイみたいな感じではなく、みんなを見守っている感じです。憎まれることはまったくないですよね。むしろ一番慕われています。
佐々木久美:彼女(美玲)は細かいところを見てくれていたりしますが、私はお父さんみたいな感じです(笑)。お父さんは家族のひとりひとりの細かいところはわからないけれど、家族全体を見守ってくれているじゃないですか。反面、お母さんってすごくひとりひとりに細かくお世話をしてくれますよね。
子供のこととか。メンバーひとりひとりにピンポイントで気にかけてくれます。
――小坂さんはいかがですか?
小坂菜緒:表に出ている印象の通り本当にしっかりされている方で、私たち2期生とか、3期生とか、同期の1期生の中でも、悩んでいる子がいたらちゃんと気にかけてくれるところは視野が広いなと感じていて、本当に頼りにしていますし、だれとでも仲がよくて幅広くメンバーのことを愛してくれるている姿が見られるのが、私も安心できるところです。――印象の残っているエピソードがありましたら教えてください。
小坂菜緒:私はけっこう人見知りで、最初あんまりメンバーと話したりすることが上手にいかなかった時期があったんですけど、久美さんにご相談したら、「こさかなはこさかならしくていいんだよ」っていう言葉をかけてくださって、無理に急いでみんなとすぐに仲良くなろうとしなくてもいいんだって。徐々に徐々にゆっくりでも話していけたらいいなって思うようになったんです。そこで気持ちが軽くなったので、そういうご相談ができるのはすごくいいなって思いました。
●キャプテンの視点から感じるグループの魅力
――キャプテンとして厳しいことも言っている姿も映画では映されていましたね。
憎まれ役じゃないけれどキャプテンってつらいなって、思うこともあるのでは?
佐々木久美:それがみんなすごく優しくて…本当に優しいんですよ。ダンスの面でこういう風にしたほうがいいと言っても、みんながすごく大人なので、私たちのために言っているという雰囲気をすごく出してくれるんです。なんかまた言っている、みたいなことを感じたことは1回もないです。本当にみんな優しくて、日向坂は素敵なグループだと思います。
――日向坂46のみなさんは確かに優しいイメージがありますよね。
佐々木久美:私たちは人数が20人程度なので、ひとりひとりと会話する時間があります。ひとりひとりと、ちゃんと話ができることは強みかもしれないです。
――キャプテンとして転機になったなと思った瞬間はあったのですか?
佐々木久美:最初はこういう性格なので、やりたくはなかったんです。
みんなの先頭に立っていくことも向いていないなって思っていたので、「なんで私が?」と思ったこともありましたが、時が経つにつれて、そういう思いを吹っ切ってやっていかないといけないなという気持ちになりました。そこからは胸を張っていこうというと思うようになりました。
――個人として雑誌の専属モデルも務めていますが、モデルのやりがいや面白さはどう感じていますか?
佐々木久美:私は本当に自分に自信がないので、最初はすごく撮影が怖くて……。ネットとかみんなで一緒に見ちゃうタイプで(笑)、(専属モデルの)5人が一斉に叩かれていたので、実力で専属になれたわけじゃないのかなって思ってしまい、本当に自信がなくなって撮影のたびに怖かったんです。アイドルの時とポージングもまったく違うし、カメラマンさんにも「もっとこうして」と言われたりして、「ごめんなさい!」みたいな気持ちでずっとやってました。でも、ほめてくださる方々もたくさん出てきて。そうしたらある日、実家に雑誌が山積みになっていたことに気づいたんです。お父さんは熱心に雑誌とか買うのですが、母はあまり自分から買ったりしないのですが、『Ray』だけは毎月買って大事にとっておいてくれて。
それがすごくうれしくて、もっと頑張ろうと思うようになりました。
――今は楽しいですか?
佐々木久美:すごく楽しいです。ポージングが違うことも楽しいと思えるようになってきて、お洋服がそもそも大好きなので、いろいろなお洋服が着られることもうれしいですし、アイドルとは違う新しい一面を見せられるということが喜びに変わって、毎月撮影も発売も楽しみになりました。
――グループにおける自身の目標は何でしょう?
佐々木久美:日向坂46という名前がもっと大きくなって、ちゃんとそれに見合った実力で自分たちも進んでいきたいなってすごく思います。自分たちの今のセールスポイントは全力で気持ちよく取り組み、観ている人も楽しくさせることが目標なので、そういう気持ちも忘れずに目の前にあることをひとつひとつ大事に積み上げて行きたいなと思っています。
――今後の個人としての目標はいかがですか?
佐々木久美:もっと自分にしかできないことを見つけていきたいなって思います。いまは女優業をやっているメンバーがいたり、ゲームのお仕事しているメンバーがいたり、最近はそういうことが顕著になってきたのですが、自分は何もできていないなって思うんです。でも、面白いことが大好きなので、そういうことに関わりたいと思っています。
――具体的には、どういうことですか?
佐々木久美:私は芸人さんが大好きで、バラエティしか観ないんです。録画もバラエティばかりで、毎日その録画を消費することに必死です(笑)。私の中のレジェンドは、サンドウィッチマンさんとオードリーさんで、そのお二方の番組は全部観ています。もちろん第7世代の若手の方もすごくいっぱい観ているのですが。サンドウィッチマンさんは全部のネタを観ていて、毎年ライブも応募していますが外れちゃって(笑)。面白いことが大好きなので、自分がそういうものに関われたらいいなあと。私が面白いことをするというよりは、そういう現場で関わっていれば幸せだなと思うので、もっと頭の回転が速くなればいいなと思っています(笑)。
■佐々木久美
1996年1月22日生まれ。千葉県出身。2016年、「けやき坂46オーディション」に合格。大学を卒業した2018年、けやき坂46のキャプテンに就任。以後、日向坂46でもキャプテンを務め、グループを牽引している。グループで出演したテレビ東京系ドラマ『Re:Mind』(2017)、日本テレビ系ドラマ『DASADA』(2020)で演技にも挑戦。2019年4月号より女性ファッション誌『Ray』の専属モデルに起用され、ファッションイベントなどでも活躍している。
衣装:トゥービー バイ アニエスベー