新年会への"秘密兵器"はしじみ? - 美容効果も期待できる成分の謎に迫る
何となく「しじみのみそ汁=二日酔いによい」などと感じている人も多いかもしれないが、何が具体的にどうよいのかまでを理解している人となると、その数は少なくなるだろう。しじみのみそ汁がアルコール疲れにお勧めな理由は、しじみに豊富に含まれる「オルニチン」という成分にある。オルニチンの隠れたパワーを紹介しよう。
○「宴会疲れ」は「肝臓の疲れ」?
肝臓の働きを助けるオルニチンとは、血液に溶け込んで体内をめぐる「遊離アミノ酸」と呼ばれるアミノ酸の一種だ。いろいろな食べ物に微量は含まれているが、特にしじみに多く含まれているという。
肝臓はアルコールなどの代謝をはじめ、脳のエネルギー源であるブドウ糖の供給、脂質の消化吸収を助ける胆汁の生成など、人間の臓器の中でも多彩な仕事をこなす"働き者"だ。
少々のことではへこたれず、その不調のサインを体に送らないため、「沈黙の臓器」とも呼ばれる。これが、私たちが肝機能の不調になかなか気付きにくい理由だ。
暴飲暴食などにより肝機能の能力が限界を超えると、脳をはじめとして全身へのエネルギー供給が不調となり、疲労感を覚えるようになる。宴会シーズンの疲労感は、肝臓の疲労からきている可能性があるというわけだ。
そんな肝臓の代謝を促し、疲労回復につなげてくれるのがオルニチン。アルコールを摂取すると、エネルギー生成を妨げてしまう物質「アンモニア」が増加する。オルニチンの解毒サイクルによってこの「アンモニア」が消費され、エネルギー生成がスムーズに行われるようになるという。
○「美肌」や「快眠」効果も期待
そんなオルニチンには、疲労回復のほかにもさまざまな効果がある。
オルニチンがいかに私たちの生活に寄与するかを研究している「オルニチン研究会」によると、オルニチンには美容効果も期待できるという。例えば、眠る前にオルニチンを摂取すると、美容に不可欠な成長ホルモン分泌が増加するという調査も報告されている。
成長ホルモンは、骨や筋肉の成長だけでなく、体の恒常性を保つ代謝を促すホルモンでもある。例えば、肌のターンオーバー(生まれ変わり)を促進させるため、「肌の弾力(ハリ)」や「しみの改善」などにも効果が期待できるとされている。同調査では、25歳から40歳までの働く日本人女性19人を対象に研究を実施。参加者を「オルニチンを毎日800mg摂取する群」と「オルニチンを含まない食品を毎日摂取する群」(プラセボ)に分け、それぞれの試験食品を就寝直前に継続的に摂取させた。さらに、試験開始前と開始後のそれぞれ3日間、起床時に採尿を行い、夜間尿中の成長ホルモンを測定した。
その結果、オルニチンを摂取すると、睡眠中に分泌される成長ホルモンが増加する可能性が示唆されたという。
他にも、就寝前にオルニチンを摂取することで眠りの質が向上したり、翌朝の頭の働きが改善されたりする可能性も示唆されており、さまざまな検証が進められている。
オルニチン研究会によると、女性も肝臓の不調を訴える人が多くなってきているという。運動をせずにスイーツなどの高カロリーなものを摂(と)ることで、消費されなかったカロリーが脂肪として肝臓に蓄積し、結果として肝臓に負担がかかってしまう。そのため、特に女性は美容と肝臓ケアの両面から、オルニチンを摂取してもいいかもしれない。
○自分のために購入する女性も増えている
そんなオルニチンを含むしじみを使った商品は、「しじみラーメン」や「しじみスープ」など、多数販売されている。ただ、その中でもやはりしじみのみそ汁が、最も日本人がホッとする味ではないだろうか。「1杯でしじみ70個分のちから」を販売する永谷園によると、同製品は女性層からの支持を多く集めているという。
永谷園広報部の萩尾安希奈さんは、「当初は男性の方がよく購入するかと想定していたんですが、テスト販売のときに6割くらいの方が女性の購入者だったんです。
ご主人やご家族のために購入する、という形ですね」。
美容雑誌などでオルニチンが取り上げられるようになると、自分のために購入していく女性の姿も見られるようになってきたという。「しじみ70個分のちから」の支持層が広がっているのを、同社も感じてきている。
もともと同社は、乳酸菌由来の発酵産物を作ろうとするプロジェクトの過程で、オルニチンのもつパワーに注目。「オルニチンといえば、しじみ、しじみといえばみそ汁ですよね。そこで、発見した乳酸菌を使ってオルニチンを含むみそをつくる研究をはじめました」と、同社の研究・開発本部の石川拓也さんは開発経緯を明かす。
肝臓を元気にしてくれるオルニチンを手軽にたっぷりと摂(と)れる食品は、年始の飲み会が続くこのシーズンに、実にありがたい。新年の生活習慣に、オルニチンをプラスしてみてはいかがだろうか。
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