ノルウェーの海を優雅に漂う船「フッティルーテン」に“中まで”迫ってみた
ノルウェー沿岸急行船「フッティルーテン」が創業したのは1893年のこと。人や食料、衣服や郵便などあらゆるものを運び、今日でも沿岸住民の生活を支えている。一方で、ノルウェー西岸を12日間かけて往復する船旅は、その景色の美しさも相まって、世界の観光客に極上なひとときを提供している。そこで今回、フッティルーテンの魅力に“中まで”迫ってみた。
○夏はフィヨルド、冬はオーロラを
フッティルーテンは、南のベルゲンからロフォーテン諸島やハシュタ、トロムソなどに寄航しながら、ロシアとの国境に位置するキルケネスまでを往復する。一年中運航しているため、夏はフィヨルドや太陽が沈まない「白夜」を、冬はオーロラを楽しむことができる。船内には客室が用意されているが、泊まらずに隣の港までのプチ船旅も昼間なら可能だ。
船は全部で11艘(そう)あり、それぞれ大きさやコンセプトが異なる。
今回筆者が体験したのは、1997年に就航したノールノルゲ。623人を乗船できるその大きさは、全長123.3m、全幅19.5m、1万1,384トンである。船内は木のぬくもりを生かしたデザインを採用しており、シックな印象を受けた。
○完全なるオーシャンビューのジャグジーも!
船内は7階建てで、客室があるのは2,3,5,6階。客室の多くは2台のベッドが備え付けられており、ソファーやデスク、シャワー、トイレを完備している。また、海に面した作りになっている部屋が多いので、窓からのんびり景色を眺めて過ごすのもいい。
しかし、ただ部屋にこもるだけではもったいない!船内にはレストランやカフェスペースのほか、バーラウンジもあり、さらに、ジムやサウナ、ジャグジーまで備え付けられている。乗客の中には子供連れも多かったが、子供が遊べるスペースも用意されていた(※設備は船によって異なる)。
また、ノルウェーならではのアイテムを集めたショップには、ここでしか売っていない切手もある。フッティルーテンの消印を押してもらい、船内のポストから投函すれば、その郵便は特別なお土産になるだろう。
●ヨーロッパ最北の岬「ノールカップ」。荒涼とした極地は異世界だった!
○ノルウェーゆかりの無料イベント
ノルウェー沿岸急行船「フッティルーテン」の船内では、随時、無料で参加できるイベントが行われている。筆者が乗船した時は、スカンジナビア半島やロシアの北部に居住する先住民族「サーミ人」の文化や、ノルウェーのカニ漁師によるキングクラブ(タラバガニ)の生態のレクチャーが行われていた。
ずしりと重みのあるキングクラブを手にして、記念撮影をしている人も多かったが、「みなさんがこれからディナーで食べるカニはこうしたカニなんです」という言葉もあったからか、その日のビュッフェディナーでは、キングクラブを求める人の行列ができていた。
○船を降りて小旅行も
こうした無料のイベントのほかに、有料のツアーも用意されている。このツアーを利用して是非足を伸ばしてほしいのが、ヨーロッパ最北の岬「ノールカップ」だ(ツアー料金はひとり990ノルウェークローネ・約1万6,710円)。
ノールカップへは、トロムソからキルケネスのちょうど間に位置するホニングスヴォーグで降り、バスで30分程度走る。ツアー中、フッティルーテンはそのまま港に停泊しているので、客室に荷物を置いたまま身軽に出発できる。
夏季であれば、ホニングスヴォーグからノールカップへの路線バスがあるが、除雪車がなければ通行できない冬季はアクセスが限られてしまう。北緯71度10分21秒、東経25度47分40秒、北極点からは2,102.3kmの距離に位置する“北岬”への道のりは険しいものの、何も遮るものがない白銀の世界は、異世界に通じているような気持ちにさせられた。
○極地感あふれる風景の前で
そのノールカップでどう過ごすか。水平線を望む断崖絶壁の前で記念撮影をするもよし。地下に設けられたミュージアムでノールカップの歴史に触れるもよし。ショップでノールカップ到着記念証を購入したり、ヨーロッパ最北の地から手紙を出したりするもよし。
「せっかく来たのだから何かしないと!」と思ってしまうが、周りを見るとカフェでただくつろいでいる観光客もいたりする。強い北風に吹かれながら、そして、ここまでの道のりをかみ締めながら、1杯のコーヒーとともに過ごす時間も格別のように思われる。
フッティルーテンが提案するツアーは、バイキング博物館やカヤック、犬ぞりなど、オールシーズン楽しめるものを用意している。のんびりとした船旅とともに、小旅行を楽しんでみるのもいいだろう。※取材協力:スカンジナビア政府観光局