なぜ今、缶チューハイ「本搾り」が売れているのか - "味覚コンサルタント"が分析
同製品は、2003年にメルシャンブランドで誕生。高い果汁率と高品質果汁にこだわっており、お酒と果汁だけでつくるチューハイのパイオニア的存在として、2015年で発売から13年目を迎える。居酒屋の生搾りチューハイの味を目指して開発され、缶入り飲料ながら甘さを抑えた味に仕上がっているのが特徴だ。
年間3000万ケースを出荷するメインブランド「氷結」の陰で、「本搾り」は2012年に179万ケース、2013年に341万ケース、2014年に552万ケースとここ3年で大きく販売数を増やしている。
口福ラボ・味覚コンサルタントの菅慎太郎氏は、このような高果汁飲料が売り上げを伸ばしている背景を、飲料業界全体の味覚傾向の観点から次のように分析する。
「味の濃い食事や赤身肉のブームなどにより、飲料はライトな方向にシフトしていると思います。特に、食前食中食後を通して、リフレッシュや口内をさっぱりとさせることのできる飲料が注目されています。
酸味がちょっと増した果実系飲料や、スパークリングウォーターなどがそれにあたります」。
つまり、さっぱりした果汁系飲料への消費者の嗜好性の高まりを受け、従来から高果汁を謳ってきた「本搾り」も昨今のトレンドを追い風に、さらに売り上げを伸ばしていると思われる。
「PB(プライベートブランド)商品市場が拡大したことによって、NB(ナショナルブランド)の商品は、より質の高い商品を求めるニーズが高くなっていると言えます。特に、鮮度や“生”、“ストレート”といった素材の味を際立たせた本物感の味わいに人気が集まっています(菅氏)」というように、メーカーもシンプル・ピュアを売りにしたな商品を続々登場させていることが伺える。昨今の日本人の嗜好は、「生麺」や「生ふりかけ」など、素材そのものを楽しめる商品にシフトしつつある。
そして、2015年度の味のトレンドについて菅氏は次のように予測。「味としては“コク”(旨味)→“甘味”へのトレンド変遷、そして、甘味と酸味のバランスについて見直しがされてきていると思います。健康志向は依然として高く、嗜好性としても酸味は病みつきになる学習の要素を備えていますから、フルーツフレーバーが、デザートだけでなく、ソースや飲料など、多様なジャンルに展開がされることが期待されます」
今後、この勢いで高果汁飲料にさらなる光があたるか、2015年のトレンドにも注目だ。