愛あるセレクトをしたいママのみかた

デジタルマーケティングのフロンティアに聞く - 楽天マーケティングジャパン事業の戦略と戦術

マイナビニュース
デジタルマーケティングのフロンティアに聞く - 楽天マーケティングジャパン事業の戦略と戦術
●テレビCMとブランドサイトの役割

2014年4月、楽天は、新たな事業体として楽天マーケティングジャパン事業(RMJ)を創設した。楽天グループでは、同事業を楽天市場・楽天トラベルに続く新たな主力ビジネスと位置づけ、グローバルで1000億円規模の売上げを目指していく構えだ。

楽天会員約9500万人のIDを軸にしながら、新タイプのネット広告ビジネスを推進するというRMJ――。その革新性・差別化のポイントはどこにあるのか。同事業部門でRMJマーケティング部 部長を務める向谷和男氏に話を聞いた。

***

―― まずお聞きしたいのは、楽天マーケティングジャパン事業(RMJ)の強みです。RMJが提供するマーケティング・ソリューションのアドバンテージはどの辺りにあるのでしょう。

向谷氏 : RMJは、楽天が展開・保有する「メディア」と、膨大な数の消費者の「データ」、そして先進の「テクノロジー」を駆使して、総合的なマーケティングのソリューションを提供する事業体です。
言い換えれば、メディア・データ・テクノロジーといった楽天の事業資産が、差別化の源泉ということです。

―― メディアとは、ショッピングサイトの「楽天市場」を意味しているのですか。

向谷氏 : それも1つですが、楽天ではこの他にも旅行サイトの「楽天トラベル」や、料理レシピの投稿・共有サイト「楽天レシピ」、基礎体温管理アプリ「楽天キレイ℃ナビ」、ゴルフ場予約サイトの「楽天GORA」、クチコミ就職情報サイト「みんなの就職活動日記」など、多数の特化型メディアを運営しています。

このうち楽天市場では、四半期ごとの購買者数が約1400万人に達していますし、楽天レシピについても、スマートフォンからの利用者だけで月間360万人を超えます。また、楽天GORAも、ゴルフ場予約件数ベースで日本最大級のサイトへと成長しており、ネット経由でゴルフ場の予約を行っているゴルファーのほぼ100%をカバーしていると言っても過言ではありません。さらに、みんなの就職活動日記については、就活中の学生の8~9割が利用している人気サービスです。

このように、楽天のメディアは、消費者のさまざまな生活シーンに深く浸透しており、多くの消費者が日々の生活の中で、そのサービスを利用しています。加えて楽天には、楽天カード・楽天Edyなどのファイナンスサービスもあります。
「こうしたメディアやファイナンスのサービスを適材適所で用いながら、新しいデジタルマーケティングのあり方を提案し遂行する」というのが、RMJの大きな役割です。

○テレビCMとブランドサイトの役割

―― では、RMJのソリューションによって、企業はマーケティングの何を、どう変えられるのですか。

向谷氏 : 例えば、消費者とのコミュニケーションを図るうえで、テレビというマスメディアで効果を出していくことが難しくなっていると言われます。ただし一方で、消費者をセグメント分けし、メッセージの訴求力を高めるというデジタルマーケティングの手法にも、1つのネックがありました。それは、ターゲットのセグメンテーションによって、マーケティング対象の絶対人数がどうしても少なくなり、「マス」のレベルからはほど遠い規模になることです。

ところが、楽天の場合、約9500万人の消費者を会員として擁しているほか、特化型メディアの利用者も数百万強のレベルにあります。

そのため、例えば、「料理好き」というセグメンテーションをかけたとしても、楽天レシピの利用者数百万人にリーチできますし、「直近一年間で、楽天市場で何らかの化粧品を購入した利用者」というセグメンテーションをかけても、数百万レベルの消費者にリーチすることが可能なのです。

つまり、楽天のメディアやデータをうまく活用すれば、ターゲットを絞り込みながら、マスレベルの消費者にリーチすることができ、マスマーケティングの一環として、潜在顧客との新たな接点・コミュニケーションのあり方を形成していくことができるというわけです。


―― その強みを生かして、具体的にどんな提案をクライアントにしているのですか。

向谷氏 : 私たちが現在注力しているのは、テレビCMを主軸にブランドマーケティングを展開しているクライアントを、ネットの世界に引き入れることです。

その戦略の一環として手がけているのが、楽天レシピなどの特化型メディアを活用した「Ads asコンテンツ(番組)」の取り組みです。これは、例えば、楽天レシピの「番組(動画コンテンツ)」として、特定の調味料・食材を使ったレシピ・調理法を提案し、無理のないかたちで、調味料・食材の新しい活用法を消費者の間に根づかせるというものです。また、楽天のメディアを使えば、特定の商品のファン層を会員化し、囲い込む仕組みを作るのも簡単です。というのも、楽天のメディアはそもそも会員制のサービスが多く、その中にできた組織ならば、利用者は、手持ちのIDを通じて、スムーズに入会の手続きを行うことができるからです。しかも、楽天はある意味で、日本最大級の会員サイトを運営する企業体です。ですから、私たちは消費者を会員化し、その維持・囲い込みを行うのは「お家芸」と言えるほど得意なんです。
これも、クライアントから見たRMJの魅力と言えるのではないでしょうか。

―― 今日では、企業が自社のブランドサイトを使って、消費者を囲い込むための仕組みやコンテンツを提供しようとする動きが活発化しています。RMJの施策は、そうした動きとコンフリクトしないのですか。

向谷氏 : あるメーカーの商品がいくら好きだとしても、その企業のPRコンテンツを常に得ようとしたり、単体商品での会員化を継続させるのは困難な事が多い。ですから、ブランドサイトは作ったものの、集客や運営、システム開発、導入にコストがかさむというジレンマに陥るケースが少なくないと思います。とすれば、すでに多くの利用者(会員)を擁するサイトでブランディングの施策やコンテンツを展開し、顧客の囲い込み図ったほうが格段に効率的なはすです。

また、消費者ニーズが多様化し、目まぐるしく変化する中では、どんなにテレビCMを打ったところで、例えば「食の新しいカルチャーを作り上げること」は至難です。その意味でも、楽天の特化型メディアを使って、消費者と継続的なコミュニケーションを図ることの意義は大きいのです。


●オールジャンルのマーケティング予算を取りに行く
○オールジャンルのマーケティング予算を取りに行く

―― Ad asコンテンツの取り組みですが、編集枠だけを広告主に提供して、ネイティブアドを展開させるほうが、サービスとしては手間がかからないと思うのですが。

向谷氏 : 確かにそうなのですが、以前、編集スペースだけをクライアントに切り売りした結果、ユーザビリティが下がり、サイトの評判を落としてしまうという苦い経験を味わいました。ですから、クライアントとともに、消費者のニーズととらえた番組(あるいは、編集コンテンツ)をしっかりと作り込むことは大切ですし、それが最終的に、利用者にも、クライアントにも大きな利をもたらすと考えています。実際、楽天レシピが展開しているAd as コンテンツは、クライアントからの受けが抜群によく、ネット広告への依存度が低かった大手企業と新たな関係を築くことにも成功しています。今後は、他の特化型メディアでも、同様の展開を積極的に図っていくつもりです。

―― データという楽天の資産を活用することの意義についても、確認したいのですが。

向谷氏 : 言うまでもなく、楽天の中には、「どのような消費者」が「どんな情報をよく閲覧しているのか」、あるいは、「どんな買い物をしているのか」といったデータが日々大量に蓄積されていきます。要は、消費者の嗜好や購買パターンを割り出すためのデータが潤沢にあるということです。


こうしたデータを分析していくと、消費者の価値観・世界観が明確にとらえられるようになり、それに応じて潜在顧客層をグルーピングし、マーケティングの施策を細分化しながら、それぞれの実効性を高めていくことができるようになるのです。

―― ところで、一般消費財・食品のメーカーは(コンビニエンスストアの要請もあり)新商品を単サイクルで投入し、短期間に売り切る必要にも迫られています。こうした課題へのソリューションとして、RMJでは何が提供できるのですか。

向谷氏 : 1つは、リアル店舗での販促に、楽天Edyなどのファイナンシャル・サービスを使うことです。実際、ある缶コーヒーの販促として、「楽天Edyを使って当該の缶コーヒーを購入すると3本目が無料になる」というキャンペーンを展開し、実質的な効果を上げています。

企業には、「セグメント化されたマスにリーチしたい」「腰を据えて、ブランディングや顧客の囲い込みを行いたい」「特定商品の売上げを、短期的にアップさせたい」といった、さまざまなニーズがあります。RMJは、楽天のアセットを駆使して、そうしたマーケティング・ニーズに全方位で対応しているのです。

―― 最後に2015年の具体的な目標があれば、教えてください。


向谷氏 : 楽天マーケティングの事業では、グローバル全体で「Driving the Omni Experience(オムニ体験をドライブする)」というスローガンを掲げています。

先に触れたとおり、消費者が日々の生活を送る中で、楽天のサービスは必ず複数存在していますし、消費者はスマートフォンやPC、実店舗、楽天市場、イベントなどの多様なチャネルを通じて、楽天のサービスを利用しています。そのネットワークの中で、IDをハブにしながら、消費者の体験を総合的にマネジメントし、消費者の嗜好・ニーズ・生活スタイルに合致したマーケティング活動を推進していく――それが、楽天マーケティングの基本コンセプトです。

今年は、こうしたコンセプトを「かたちにすること」に力を注ぎ、その活動を通じて、単純な販促を目的にしたデジタル広告の案件だけではなく、ブランディングを含めたオールジャンルのマーケティング予算を獲得していくつもりです。

言い換えれば、購買直前の消費者の背中を押すマーケティングだけではなく、「認知・興味」の喚起から始まるマーケティング全体の先鋭化に統合的に取り組んでいくのが、私たちの当面の目標であり、戦略であるということです。

―― ありがとうございました。

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード