ここが変わった! 「EOS M3」と「EOS M2」実機比較 - チルト液晶&EVF対応で撮影自由度が大きくアップ
キヤノン「EOS M3」は、APS-Cサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラだ。2012年の「EOS M」、2013年の「EOS M2」に続くEOS Mシリーズの第三弾であり、新型センサーの搭載やチルト可動式モニターの採用などさまざまな進化を遂げている。本記事ではEOS M2との違いを確認しながら、EOS M3のファーストインプレッションをお伝えする。
本記事で使用した「EOS M3」は開発中の試作機であり、製品版とは異なる場合があります。
EOS M3の発売は3月下旬。キヤノンオンラインショップにおける価格は、ボディ単体が56,800円、18-55レンズキットが71,800円、ダブルレンズキットが85,800円、ダブルズームキットが96,800円(すべて税別)。
○自分撮りもできる180度チルト可動モニターを搭載
まずは外観から見てみよう。ボディは一新され、グリップ部が少し突き出た長方形デザインを採用している。
EOS M2と比べた場合、幅と高さ、奥行きはそれぞれ数mmアップし、重量は約92g増えている。ミラーレスカメラとして標準的なサイズ感といっていい。
新型のグリップは曲線的な形状で、手にしっくりとフィットする。特に望遠ズームなど大きなレンズを装着した際の安定感が高まった。マウントアダプターを装着し、EFレンズやEF-Sレンズを使用するユーザーにとってはありがたいポイントだろう。
外観上のもうひとつの大きな改良は、これまでは固定式だった液晶モニターがチルト可動式になったこと。可動角度は上に最大180度、下に最大45度。ローポジションやハイポジションでの撮影に役立つほか、自分撮りが気軽に楽しめる。
液晶のサイズとドット数はEOS M2から継承され、3型/104万ドット。屋外でも十分な見やすさを確保している。
さらに、ボディ天面のアクセサリーシューに、EVF(電子ビューファインダー)を装着可能になったことも見逃せない。オプションの「EVF-DC1」は、同社の高級コンパクトカメラ「PowerShot G1 X Mark II」と共通のもの。上方向のチルト可動や、液晶モニターとの自動切り替えに対応する。こちらも視認性は良好。よりしっかりとカメラをホールドして撮影したいときや、強い逆光などで液晶モニターが見えにくいシーンで重宝する。
●アクセス性能の向上とAFのスピードアップ
○アクセス性能の向上とAFのスピードアップ
使い勝手に関しては、これまでのオート主体のシンプルな操作性から一歩上に進み、より細かい機能へのアクセス性が向上した。
具体的には、タッチパネルを継承しつつ、ボタンやダイヤルの数を増やしている。
撮影モードは、オートからマニュアルまで11モードが用意され、天面に新設されたモードダイヤルで切り替えを行う。絞りやシャッター速度は、シャッターボタンまわりの電子ダイヤル、および背面十字キーのまわりに配置したダイヤルでそれぞれダイレクトに調整できる。
露出補正については天面の専用ダイヤルで操作し、ホワイトバランスやドライブモードなどは背面のQボタンを押して、クイックメニューから設定する。また、シャッターボタンの横に新設した「M-Fn」ボタンと、背面の動画ボタン、ゴミ箱ボタンに関しては、割り当てる機能をカスタマイズができる。
AFには、像面位相差AFとコントラストAFを併用する「ハイブリッドCMOS AF III」を採用する。従来の「ハイブリッドCMOS AF II」からバージョンアップし、位相差AF用画素の高密度化やコントラストAF制御の改善を図っている。合焦スピードは、メーカー公称値で従来比最大3.8倍となる。
試用では、既存モデルよりも確実に高速化したAFを体感できた。動体をスムーズに撮影するのはさすがに厳しいが、スナップ程度なら大きなストレスを感じることはない。
●クリエイティブアシストモードを新搭載
○クリエイティブアシストモードを新搭載
新機能として、「クリエイティブアシストモード」を搭載した。これは絞りや露出補正、ホワイトバランスなどのカメラ用語を「ぼかす~くっきり」「暗く~明るく」「寒色~暖色」などのやさしい言葉に置き換えて、ビギナーでもさまざまな機能設定を簡単にできるように配慮したモードだ。各項目はタッチ操作でスムーズに調整できる。
従来のクリエイティブオートでは、電源をオフにすると各設定がリセットされるようになっていたが、今回のクリエイティブアシストでは自分好みの設定を6つまで保存でき、必要に応じていつでも呼び出せるように改善されている。さらに、静止画と同時に動画を記録するプラスムービーオートモードや、クリエイティブフィルターのひとつとしてHDRモードを新搭載した。
撮像素子には、新開発したAPS-Cサイズの有効2,420万画素CMOSセンサーを採用。
画像処理エンジンは「DIGIC 6」で、感度はISO100~25600に対応する。今回の試作機では画質を評価できないので、これは後日あらためてテストしてみたい。
トータルとしては、チルト可動液晶をはじめとする各種装備の強化によって、狙いに応じた撮影がしやすくなったことに好印象を受けた。細かい部分では、再生ボタンがやや押しにくいことに戸惑ったが、全般的な操作感は悪くない。押すだけのフルオート撮影から、凝ったマニュアル撮影まで幅広く対応できる。
気になるのは、専用のEOS Mレンズの種類がまだ少ないこと。現在発売されているのは、標準ズームと広角ズーム、望遠ズーム、単焦点レンズの4製品。マウントアダプターを利用することで豊富なEFレンズとEF-Sレンズが使えることは確かに魅力だが、それとは別に、より小型軽量のEOS Mレンズのラインアップをさらに充実させてほしいと思う。
EOS M3は、小型軽量と撮影自由度を兼ね備えたカメラだ。レンズ交換式カメラの入門者だけでなく、すでに一眼レフを所有しているユーザーが、より持ち運びやすい2台目や3台目のカメラとして選ぶのもいいだろう。