ついに登場、「Ubuntu」携帯とはどのようなものか
英Canonicalは2月6日(現地時間)、スペインのBQが初のUbuntu OS搭載スマートフォン「Aquaris E4.5」の提供を間もなく開始すると発表した。BQは中国のMeizuとともに、2014年2月にバルセロナで開催されたMobile World Congressにおいて発表された2つのローンチパートナーのうちの1社であり、同年後半に何度もデバイスの登場が噂されながら、ようやく発売にこぎつけた形だ。2013年1月に最初のUbuntu Touch (Ubuntu for Phone)が公開されてから2年、Firefox OSやTizenに続く第3のOSといわれながらもなかなか登場しなかったUbuntu携帯だが、どういった特徴を備えているのだろうか。
○製品登場までの2年の歴史
Linuxのディストリビューションの1つとして知られる「Ubuntu」だが、これを携帯電話(スマートフォン)向けにハードウェアサポートやユーザーインターフェイス追加を行ったのが「Ubuntu Touch (Ubuntu for Phone)」となる。
筆者の記憶している限り、最初のデモストレーションは2013年1月のCESで行われ、Canonical創業者のMark Shuttleworth氏が自らデモを実演していた。リンク先のデモ画像を見ればわかるように、当初のUbuntu TouchはAndroid携帯(Galaxy Nexus)向けのカスタムROMとしてOSイメージが提供され、開発者らはこれをベースにテストやアプリ開発を行うことが推奨されていた。
当時のShuttleworth氏の話によれば、すでに興味のあるOEMパートナーやディストリビューターとの交渉が始まっており、早ければ2013年後半にも最初の製品が出荷可能になるとの見通しだった。実際、同年2月にWall Street Journalによって報じられたニュースによれば、最初の製品は10月登場の見込みとされていた。
だが実際には製品が登場する動きは2013年後半になってもみられず、最初のパートナーが発表される2014年2月のMWCを待たなければならなかった。
最初のパートナーとなった2社のうち、BQはスペインを拠点とした小規模な端末メーカーで、スマートフォンやタブレット、電子書籍端末の開発や製造を行っている。もう1つのMeizuは中国で少しずつ勢力を拡大しつつある携帯メーカーで、もともとは「山寨機(さんさいき)」と呼ばれるコピー端末の製造で知られていた。
●ようやく製品化された端末は誰向けに?
一方で、ローンチパートナーが発表されながらもなかなか製品は登場せず、最初はMeizuからの製品登場が2015年末に噂されていたものの話は流れ、同年11月に2015年初頭での製品登場の話が出て、その報道の数日後にUbuntuとMeizuの間でUbuntu TouchをベースとしたFlyme OSの開発とプロモーションで合意したことが発表された。FlymeはUbuntu TouchのUIをカスタマイズした、Meizu独自のディストリビューションとみられる。だが、当初噂されていた「Meizu M1 mini」は1月を過ぎても発表されず、もうしばらくの準備期間が必要になったと考えられる。
○Aquaris E4.5は誰向けの端末か
こうしたなかでようやく登場したのがBQの「Aquaris E4.5」だ。4.5インチのフルHDタッチスクリーンに8GBのストレージ、デュアルフラッシュを備えた800万画素の背面カメラ、MediaTekが提供するARM Cortex-A7の1.3GHz駆動クァッドコアと1GBメモリを備える。
スペック的には現在の世代から考えればミッドレンジ以下のスペックだが、価格は169.90ユーロ(約200米ドル、約2万3000円)と、格安SIMを利用して安価に運用する、いわゆる低価格端末として提供されるもので、比較的手を出しやすいのが特徴といえる。
携帯キャリアのパートナーは特に明示されていないものの、端末自体はSIMロックフリーであり、スウェーデンの3、スペインのAmena.com、英国のGiffgaff、Portugal Telecomなど、特定地域のキャリア(MVNO)や販売チャネルではSIMつきで販売提供が行われることになるという。
●Ubuntu Phoneの特徴とは
○インターフェイスの特徴は?
1年前にUbuntu Touchのインターフェイスを触った範囲では、画面の4隅から中央に向かってスワイプ動作を行うことでアプリを切り替えたり、メニューを移動したりと、さまざまな機能が呼び出せ、ちょうどWindows 8のUIに近い体裁だった。だが前述のFlymeのように、こうした仕組みと標準UIは必ずしも強制されるものではなく、メーカーによるカスタマイズがある程度許容されているようだ。これはUIを厳密化しつつあるGoogleのAndroidや、そもそもカスタマイズを許容していないWindows Phoneなどとは大きく異なる。
また、基本となるアプリはLinuxでネイティブ動作するクライアントが用意されているほか、サードパーティのデベロッパーがアプリを開発できるよう、HTML5をベースにしたSDKが用意されている。このHTML+CSS+JavaScriptという発想はFirefox OSのそれに近い。また開発言語としてはQtを利用するQMLや、C++なども利用可能だという。
もともと、Ubuntu TouchはLinuxディストリビューションであるUbuntuにタッチUIをスキンとして被せたものであり、仕組みそのものは普通のLinux OSだ。ゆえにLinux向けに開発させたネイティブアプリをそのまま実行することが可能だ。
ただし、X11が現時点で提供されていないため、いわゆる"ウィンドウ"やGUI部品を使ったデスクトップアプリケーションはそのままでは動作しない。とはいえ、使い方しだいでは「Linuxが動作する小型コンピュータ」として開発者の裁量でいろいろカスタマイズが可能と考えられ、ある意味でギーク向けの端末ともいえるかもしれない。
おそらく、一般向けの端末として成功することは難しいが、日本でギーク向け端末として「Fx0」がKDDIから発売されたように、ニッチを対象に一定のファンを獲得できる可能性はある。その意味で、これが大々的にプロモーションされるとみられる、MWC 2015での動向に注目したい。