俺のハートにオンデマンド! CP+2015で発見したおもしろアイテム - カメラの未来はどっちだ?
パシフィコ横浜で開催されている「CP+2015」へ行くために「みなとみらい」駅の改札を出たオレをまず驚かせたのは、クイーンズスクエアの天井にぶら下がる大きなスヌーピーだ。オレはスヌーピーには敏感なのだ。
そして、子供が周りを走り回ったり、特撮ドラマ(「仮面ライダー」か?)の撮影が行われていたり、パシフィコ横浜に到達するわずか数分の間に、さまざまなものが襲いかかってきた。めまぐるしい街だ。パシフィコ横浜に着くと「ああ、今年も来たなあ」という感慨がある。この季節には、何年もこのパシフィコ横浜に足を運んでいるのだ。
今年、CP+2015でオレを待ち受けていた興味深いアイテムを紹介していこう。
○ピント位置を撮影後に変えられる次世代カメラ「LYTRO ILLUM」
米LYTRO社は撮影後にピント位置を変えられるカメラのメーカーとして有名だ。
LYTROが最初に作ったカメラは筒状のトイカメラのようなものだったが、その後の進化によって誕生したのが「LYTRO ILLUM」(ライトロイルム)だ。
LYTRO ILLUMは焦点距離30-250mm(35mm判換算時)の光学8倍ズームレンズを搭載し、一般的なユーザーが十分満足して使える程度の焦点距離をカバーしている。レンズ部分はよくあるコンパクトデジタルカメラと比較すると長く、サイズはズームレンズを装着した一眼レフという感じ。ただし、重量は940gなので見た目ほど重くない。
この大きなボディの理由は、4,000万「レイ」(画素ではない)の「ライトフィールドセンサー」を搭載しているからだとか。このセンサーが光の強さや色に加えて、光の"方向"(光線)の情報も記録する。そのため、撮影後に写真のピント位置や絞りを変えられるほか、3D映像も生成できるのだ。ちなみに、多くのデータを記録するせいで、1枚の画像データが50MBにもなってしまう。
ピント位置の変更は、背面モニター(タッチパネル式だ!)での再生時にも行えるし、パソコンやタブレットから専用アプリを用いても行える。
LYTRO ILLUMは、カメラにとって"フォーカス"とは、ひいては"写真"とは何なのか? という概念を根本から変えてくれそうで、強いインパクトを持つ未来的なカメラだ。○自分で組み立てられるカメラ「KONSTRUKTOR」
現在、多くの人がデジタルカメラを使っているが、なかば趣味的にフィルムカメラを使う人も存在する。ある意味究極といってもいい、自分で組み立てられるフィルムカメラが、ロモグラフィーの「KONSTRUKTOR」だ。
まるでプラモデルを組み立てるように、自分でパーツをネジ止めして組み立てていくと実際に使えるカメラが完成する。組み立てに要する時間はだいたい1~2時間だという。サイズはコンデジ程度だが、なんといっても軽い。
ちなみにレンズもプラスティックで、焦点距離50mm・絞りF10というスペック。
シャッター速度は1/80秒固定で、バルブモードも持っている。固定焦点で0.5m~∞にピントがあう。富士フイルムの「写ルンです」と似た仕様、という感じだろうか。いや、現在の「写ルンです」にはフラッシュがあるから、ちょっとだけ遅れをとっているかもしれない。もちろん「写ルンです」は自分では組み立てられないが。自分で組み立てるカメラというのは斬新だし、価格も3,790円(税別)と気軽に楽しめそうなのがいい。
○歴史の影に消えていたレンズの復活「ペッツバール」
正確に再現するのが写真の正義、という潮流が昨今あるようにオレは思う。そんな流れに押されてか、一時期は消えていた「ペッツバール」というレンズをロモグラフィー社が現代に復活させたのが、「LOMOGRAPHY PETZVAL LENS」だ。
最近は「美しいボケ味」を重視する人が多いが、このペッツバールレンズでは背景がぐるぐると渦を巻くようにボケる。独特な味を持っているのだ。
再現性が低いせいか、しばらくは歴史の表舞台から消え去っていたのだが、その特性を楽しみたいということで、ロモグラフィーがペッツバールを現代によみがえらせたらしい。実際に渦巻きボケの写真を見ると、これが実に美しい。ちなみにレンズの焦点距離は85mmでポートレート向けだ。
ペッツバールのアイデンティティはその渦巻きボケの写真だけに限らない。レンズの鏡筒はレトロな真鍮製で、時代を感じさせてくれる。"持つ喜び"もたまらないだろう。
ちなみに、マウントはキヤノンのEFマウント用とニコンのFマウント用を用意する。アナログでもデジタルでもOKなので、幅広いユーザーが楽しめる。
●まだまだ行くぜ! CP+でオレを待ち受けていたおもしろアイテム
○カシオブースにて発見! セルフィーで使いやすそうな「EX-ZR1600」
多くのカメラがレンズだの画質だの連写速度だの、と撮影性能をアピールするなか、「セルフィー撮影で使いやすい」というわかりやすいアピールで、オレが気に入ったのがカシオのコンデジ「EX-ZR1600」だ。
背面モニターが180度チルトするカメラも最近多くなった。ただし、これは単に"チルトできる"というだけだ。EX-ZR1600では背面モニターが"シャキッ"と"パキッ"と気持ちよくセルフィーポジションにチルトする。
さらにカメラ前面にシャッターボタンを持ち、セルフィー撮影時にも押しやすい。Bluetooth Low Energyで常時スマートフォンと接続し、シャッターを切ると撮影画像をWi-Fiで自動転送するのだ。
これは最近のセルフィー流行に乗ったすばらしい仕組みといえる。画像処理エンジン「EXILIMエンジンHS Ver.3」搭載で、動作レスポンスが極めて快適なのもいい。
○CDの音を美しく再生するウッドコーンマジック - ビクター
カメラ・写真のイベントなのに、なぜかCDコンポも展示されていた。それがビクターのウッドコーンスピーカー搭載コンポ「EX-B1」だ。このモデルは市販されておらず、イベントごとに台数限定で販売されているという特殊なものだ。今回は15台限定で販売するということだった。ウッドコーンスピーカー搭載機のなかでも、極めてハイレベルな機器だ
そもそも、ウッドコーンスピーカーって何? という話になるが、これは"ウッド"と名前にある通り、木製の振動板をつかったスピーカーだ。振動板を木にすることで、より自然な音を再現する、とされる。
ビクターは音楽CDなどを作成する録音スタジオ(ちなみに本社の裏にある)を持っている。そこの録音エンジニアたちは、最終的な音の仕上がりをチェックするために、コンシューマー機器としてウッドコーンスピーカーを使っている。
ブースでは音楽CDを再生していたが、こんな小さなスピーカーで、しかもCDを再生しているとはとても思えない音を出していた。このハイレゾオーディオ全盛の時代にも、「いいと思える音」を感じさせてくれるのは素晴らしい。何か、目の前で楽器が演奏されているかのように音の響きを感じてしまうのだが、これはPCM音源というよりもDSD音源のフィーリングだ。これがウッドコーンマジックだろうか。
○写真はどこに行くのか?
さて、「写真はどこに行くのか?」ということをしみじみと考えさせてくれたのが今回のCP+だ。かつて、絵画が写真の登場によって、その記録的な意味やバリューを失ったように、記録的な意味での写真も、もはや1つの到達点に達した気がする。ペッツバールのような、"写実"的ではなく"アート"的なレンズが復活したというのも、それが何かしらのターニングポイントを過ぎたことを感じさせてくれる。
現在、一般的な静止画よりも多くの情報を記録するLYTRO ILLUMは、静止画から一歩進んで「空間を記録する」と称する。今回は取り上げていないが、パナソニックは4K動画から静止画を切り出す「4Kフォト」を大きく打ち出している。そんな流れのなかで、これから静止画を記録するためのカメラはどうなっていくのだろうか?
この先、過去を振り返ることがあった時に、「そういえば、あの頃が1つのターニングポイントだったな」と思うような時代がまさしく"現在"なのではないか? とオレは考えている。