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1分でできる世界遺産小話 (32) 聖なるインドで弾丸世界遺産ツアー(中編)

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1分でできる世界遺産小話 (32) 聖なるインドで弾丸世界遺産ツアー(中編)
インド。そこそこ海外渡航歴がある筆者にとって、そこは未踏の地でした。ですが行ってきましたよ! 効率よく世界遺産を回るために、5日間のツアーを利用して。インドの文化遺産を大ざっぱに分けると、仏教がらみとそれ以外、ということになります。前回は「それ以外」にあたるデリーを含む3都市をめぐる「ゴールデン・トライアングル」を紹介しました。今回もその続きです。

○街全体がピンクに染まった「ピンク・シティ」

デリーの『レッド・フォート』から引きはがされるようにして、次に向かったのはジャイプールという都市です。デリーから車で6時間です。
午前中に世界遺産観光、昼にカレーを食べて午後は6時間移動というスケジュールは、3日間連続で続きました……。

ジャイプールは「ピンク・シティ」と呼ばれます。その名の通り、旧市街の建造物がピンク一色だからです。ピンクといってもショッキングピンクではなく、スモーキーな落ち着いたピンクです。そして、ジャイプールが面白いのは外観だけではありません。

イギリスがインドを植民地化した際にこの地は自治が保たれたこともあり、伝統工芸の技術が継承されました。特にブロックプリントと言われる版画のような工法で染められたテキスタイルが有名です。柄もとってもかわいいし、他にも宝石の集積地なのですてきなジュエリーショップがあったり、ラクダの革でつくったカラフルなサンダルが売られていたり、女子は目移りすること間違いなし!

○マハラジャのお城にクラクラする

「マハラジャ」という言葉はみなさん聞いたことがあると思います。
あ、ディスコじゃないですよ(古!)。"インドの王様"というイメージかと思いますが、皇帝のように全域を統率しているのではなく、各領土を支配している藩主を意味します。日本でいうところの戦国時代の大名のようなもの、といってもいいかもしれません。

ジャイプールで早朝から目指したのは、そのマハラジャの城だった「アンベール城」です。ラージプート族によって築かれたインド北西部に点在する城砦は『ラジャスタンの丘陵砦群』として世界遺産に登録されており、そのひとつがアンベール城となります。

ここの名物は「象タクシー」です。マハラジャも象に揺られたかどうかは分かりませんが、象に乗ってえっちらおっちらと麓から坂道を上がって丘陵上部にある城へと向かうのはテンションが上がります。標高があがるにつれ、周囲の山に築かれた城壁が目に入るのですが、『万里の長城』をほうふつとさせました。


そして城に到着するのですが、まあ装飾のすばらしいことといったら! ラージプート族はヒンドゥー教を信仰していたので、建築様式はヒンドゥー様式をベースとしつつ、イスラム様式も融合した感じです。美しい城から下界を見下ろすのもとっても爽快です。マハラジャ気分を味わいたい方、ジャイプールへゴー!!

○へんてこな公園……ではなく天文台が世界遺産に

次に向かったのはジャイプールの街の中心部にある「ジャンタル・マンタル」。呪文みたいでしょう? サンスクリット語で"魔法の仕掛け"という意味だそうです。ここは18世紀にジャイプールに遷都したマハラジャが築いた天文台です。当時国家の未来を占う上で占星術は欠かせないものであり、そこで天文台が必要とされたということなのです。

施設内はまるで児童が遊ぶ公園のような感じです。ジャングルジムや滑り台の代わりに様々な器具が置かれていると思ってください。
他の名だたる世界遺産と比べてしまうと小物感は否めませんが(そもそも世界遺産は、観光地であるかメジャーであるかということは全く問いません)、世界でも当時最先端の天文観測装置であり最もよい保存状態であることを思うと、じわじわとスゴさが伝わってくるかもしれません。

200年以上前に、マハラジャがこの地で太陽の位置を観測したり、様々な星の動きを観察して国の将来を思い描いていた、秘密基地のようなところだったのかもしれませんね。次なる地はアーグラ。なんといっても『タージ・マハル』です! その前にまた6時間移動しないと。トホホ……。

世界遺産データ: ラジャスタンの丘陵砦群(文化遺産)
インド。2013年登録。広大な砂漠地帯が広がるインド北西部に点在する、ラージプート族が築いた城塞のうち6カ所が登録されている。
アンベール城は16世紀に築かれ、ジャイプールに遷都するまで都として繁栄した。世界で最も美しいと門と言われるガネーシャ門や「鏡の間」の美しい装飾は特に有名。

世界遺産データ: ジャイプールのジャンタル・マンタル-マハラジャの天文台(文化遺産)
インド。2010年登録。18世紀初頭にこの地を治めていたマハラジャ、ジャイ・シン2世によって建造された、20以上の建造物からなる天体観測施設群。レンズを通してではなく裸眼で星の動きを観察することが目的であり、建築や部材においても当時の最新技術が導入された。

○筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)
「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。
全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

○世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて

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