上白石萌音「何事にも恐れずに挑戦するきっかけになれば」 - 『舞妓はレディ』、Blu-ray/DVDが3月18日リリース
日本の刑事裁判をリアルに描いた映画『それでもボクはやってない』(2007)、終末医療の現場で起こる生死を巡る問題の数々に切り込んだ『終の信託』(2012)など、近年、社会派のイメージを強めていた周防正行監督が、『Shall we ダンス?』(1996)以来、18年ぶりに挑んだ本格エンタテインメント大作『舞妓はレディ』がBlu-ray/DVDとなって2015年3月18日にリリースされる。
800人のオーディションの中から勝ち上がった上白石萌音を中心に、長谷川博己、富司純子、田畑智子、髙嶋政宏、濱田岳、岸部一徳、妻夫木聡、松井珠理奈(SKE48)、大原櫻子ら、周防作品初参加というフレッシュな面々、そして草刈民代、渡辺えり、竹中直人、小日向文世、中村久美といった周防作品おなじみのキャストも勢ぞろい。華やかな花街を舞台に、独特な京都のお茶屋世界に飛び込んだ少女・春子が舞妓を目指して成長していく姿を、ミュージカルシーンを織り交ぜながら描き出していく。
そこで今回は、Blu-ray/DVDの発売を前に、作品の魅力や注目ポイントについて、現在17歳のフレッシュな魅力あふれる主演・上白石萌音が語ったメッセージを紹介しよう。
○上白石萌音が語る『舞妓はレディ』
――映画の公開当初はまだ混乱しているようなことをおっしゃっていましたが、落ち着きましたか?
上白石萌音「公開されてからは、あまり考えないようにしていたので、あまり状況処理みたいなものは成長していなくて……。まだ何か不思議な気持ちがしています」
――舞台挨拶などで実際にお客さんの反応をみて、どのように感じましたか?
上白石「直接の反応を体感したり、いろいろな意見をいただいたりしていくうちに、撮影中はあまり意識していなかったんですけど、一生懸命に作ったものが届くというのはすごく素敵なことなんだなって思いました」
――実際にステージで歌ったり踊ったりもしましたが
上白石「すごく緊張しました(笑)。カメラの前と同じくらい、もしかしたらそれ以上に緊張したかもしれません。でも一緒になってノッてくださったり、手拍子してくださったりしたので、すごく楽しかったです。
皆さんと一体化できたような感じがしました」
――もっと歌ってみたかったですか?
上白石「もっと上手になってから、頑張りたいです(笑)」
――最初に『舞妓はレディ』のオーディションの話を聞いたときはいかがでしたか?
上白石「事務所の方に、『書類が受かったから行っておいで』って言われたんですけど、周防(正行)監督のオーディションという話だけで、他のことは何も聞いていない状態でした(笑)」
――オーディションはどんな感じでしたか?
上白石「最初は自己PRとか、台本を見ながらお芝居をしたりしたんですけど、最終審査は、2週間、ダンスと歌のレッスンを受けて、それを発表するというものでした。オーディション用でしたが、実際にプロの方からレッスンを受けられたので、すごく幸せでした」
――役得ですね
上白石「そうですね(笑)。オーディションだけでもいろいろなことを学ぶことができたと思います」
――ダンスと歌については以前から経験があったのですか?
上白石「小さいころから歌が大好きで、音楽が流れたら踊りだすような子どもでした。それを見て、母がミュージカルの教室にいれてくれたので、そこでずっと歌ったり踊ったりしていました。あと、バレエも習っていました」
●鹿児島弁、津軽弁、京都弁
――それならオーディションもけっこう余裕があったのでは?
上白石「そんなことは全然なくて、すごく大変でした。今までは、自分が楽しければそれでいい、みたいな歌や踊りだったんですけど、オーディションですから、ちゃんと人に見せるものにしないといけない。でも、実際にオーディションが始まると、すごく楽しんで歌ったり、踊ったりすることができました。それは、監督が温かく見守ってくださっていたからじゃないかと思います。
なので、あまり手応えというものはなかったのですが、悔いもなかったです」
――合格の話を聞いたときはいかがでしたか?
上白石「もうビックリですよ。本当に手応えというものがなかったので、まさか自分に決まるとは思ってもいませんでした。だからマネージャーさんから話を聞いたときは、本当に驚いちゃって……こんなにビックリしたのは久しぶりだと思うくらいビックリしました」
――オーディションに合格してから撮影までの期間は?
上白石「撮影が始まるまで半年くらいあったのですが、合格してからすぐに日舞や三味線を始めて、しばらくしてからダンスレッスンやボイストレーニングが入ってきました。それと同時に、京都に行って、実際にお茶屋さんで話を聞いたり、舞妓さんの一日の生活を見せていただいたりして勉強しました。ただ、あまり知りすぎると、初めて出会った驚きや感動みたいなものが薄れてしまうので、日記のように最初の印象や驚きをノートに書き記して、いつでも思い出せるようにしていました」
――やはり驚くことは多かったですか?
上白石「本当に大変だと思うことばかりで、もう驚きの連続でした。例えば舞妓さんは、髪の毛を毎日結うわけにはいかないので、一週間くらいお風呂で髪を洗えないんですよ。あと、着物があんなに重いとは思わなかったし、帯を締めるとまともにご飯が食べられなくなっちゃう(笑)。本当に毎日驚くことばかりで、すごく楽しかったです」
――『舞妓はレディ』で一番のポイントになるのは"方言"だと思うのですが、方言もその期間に練習したのですか?
上白石「方言は台本をいただいてからですね。
台本と一緒に、方言指導の先生が吹き込んでくれたCDをいただいて、それを繰り返し何度も聴いて勉強しました。でも、やはり一人で勉強するのは怖いですね。間違えて覚えたら大変だし、実際、現場に行くと全然違うこともあったので、その都度修正しながら撮影していった感じです。私は鹿児島出身で、普段から方言を喋っていたんですけど、方言というものはこんなに難しかったんだ、奥が深いなってあらためて感じました」
――作中でも鹿児島弁を話すシーンがありますが、普段はあんな話し方はしないですよね?
上白石「全然違います。鹿児島でももっと別の地方だとわからないのですが、少なくとも私は、ああいった話し方はしていないです。聞くとある程度は分かるんですけど、まったく初めての言葉もあって、うれしかったり、ちょっと切なかったり……」
――切ないというと?
上白石「こうやって段々と言葉がなくなっていくんだと思うと……。自分の地方のことなのに何にも知らないんだって思うと切なくなっちゃいます。だから、大事にしていかないといけないなってすごく思いました」
――地元の言葉でさえ難しいとなると、ほかの言葉はもっと大変ですよね
上白石「大変だったのは津軽弁。
セリフは一番少ないんですけどね(笑)。台本にはひらがなで書かれているんですけど、それだけ読んでもまったく意味が分からなくて……。説明の括弧書きを読んで、やっと理解できるという感じでした。方言指導の人が話す津軽弁と、それを真似する私の言葉がまったく違うというのは、自分でもわかるんですけど、どうすれば近づくのかがまったくわからなくて、ただただ真似を繰り返していました。本当に難しかったです」
――京都弁はいかがでしたか?
上白石「案外覚えやすかったです。やはり関西弁は、普段テレビで聞いたりするので、馴染みがあったからかもしれません。ふんわりした雰囲気や相手を気遣う優しい言葉、そして話している自分までもが温かくなれるような言葉だったので、京都弁いいな、ずっと喋りたいなって思いました」
――そのほか撮影中に大変だったのはどんなことですか?
上白石「一番慣れなかったのは正座です。これまであまり正座をする機会がなかったので、すぐに痺れちゃうんですよ。
でも、着物で一番楽な姿勢は正座なので、地味に厳しかったです(笑)。ただ、撮影が終わる頃には、けっこう長い時間座れるようになっていました」
――着物もこれまであまり着たことはないですよね?
上白石「七五三のときくらいですね。着物の着方や、名称とかが全然分からなくて……しかも舞妓さんの着物は特殊じゃないですか。かんざしとかも、毎月種類が変わったりする。でも、おしゃれで、綺麗なので、撮影を通して着物がすごく好きになりました」
●Blu-ray/DVDの観どころ
――ラスト、着物を着て踊り回るシーンはいかがでしたか?
上白石「すごく楽しかったです! 実際に踊るまでは大変だろうと思っていたんですけど、帯や袖が広がる感じとか、ちょっとクセになっちゃうような楽しさがありました。監督に『疲れた?』って聞かれたんですけど、『まだ何回でも行けます!』って(笑)。本当にずっと踊っていたいと思いました」
――舞妓さんの姿だと足元も大変ですね
上白石「これも慣れるまでは大変でした。前が斜めになっているので、なかなか真っ直ぐに立てず、最初はすごく怖かったです。
でも、私は身長が低いので、おこぼを履くと世界が変わってうれしかったです(笑)」
――実際に着物を着て、おしろいを塗った自分を見たときの感想は?
上白石「自分であって、自分でない。何かお面をつけているような感じがして、一番最初に見たときは『白っ!』て思いました(笑)。間近で舞妓さんを見たことはなかったし、もちろん自分がなったこともなかったので、あんなに時間がかかるとは思わなかったです。ひとつひとつが丁寧で、細かくて、それぞれが交わっている。そうやって舞妓さんが出来上がるんだって思うと、変身の時間がすごく楽しかったです」
――撮影中の周防監督はいかがでしたか?
上白石「すごく優しかったです。一回も、声を荒げたり、怒ったりしている姿を見たことがなく、いつもニコニコしていらっしゃって、みんなが何でも言いやすい雰囲気を作ってくださっていました。だから現場全体もほんわかした、はんなりした温かい雰囲気で、毎日が楽しくて仕方ないという感じで、すごく居心地が良かったです」
――Blu-ray/DVDに特典として収録されている「はんなり京都旅」はどういった映像でしょうか?
上白石「撮影でお世話になった舞妓さんを訪ねるといった映像なんですけど、かんざし職人さんが実際に作っているところをみたり、京都の街をいろいろと案内してもらったりしながら、舞妓さんの素顔に迫る、みたいな内容です」
――本編ではカットされたミュージカルシーンも収録されていますね
上白石「ラップをやっているんですけど、脱力系ダンスみたいな感じですごく楽しかったです。あと、渡辺えりさんのシーンは大好きだったので、カットされたって聞いたときはすごく哀しかったのですが、今回のBlu-ray/DVD収録されているのでとてもうれしいです」
――あらためてBlu-ray/DVDを観てもらうときに、注目してほしいポイントはありますか?
上白石「細かいところまで監督がこだわり抜いていらっしゃる作品で、例えばオープンセットにもいろいろな仕掛けが施されたりしています。
あと、気づかないところにすごい方が出ていたりするので、映画館で観たときには気づかなかった新しい発見があると思います。2回、3回と繰り返して観ていただくと、そのたびに違った見方ができると思いますので、ぜひ細かいところまで見逃さないで観てほしいです」
――それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします
上白石「映画館で観てくださった方も、初めてBlu-ray/DVDで観てくださる方も、それぞれいろいろな楽しみ方のできる作品だと思います。観る方によって、感じ方や感情移入する対象が違ったりすると思いますので、家族やお友達と集まって、ワイワイと楽しみながら観ていただきたいですね。あと、この作品を観て、日本のことや京都のことを知り、いろいろな文化を大事にしようと思ったり、何事にも恐れずに挑戦していったるするきっかけになったらうれしいです。皆様にとって、大切な一本になるといいなって思っています。よろしくお願いします」
――ありがとうございました
ヘアメイク:スズキミナコ/スタイリスト:兼子潤子
ワンピース(Sally Scott/ニューヨーカー)/45,000円(税別)