賃上げ期待で注目が集まる「ベア」と「春闘」
○ベースアップ(ベア)
ベースアップとは、「ベア」とも呼ばれ、賃金の土台(ベース)となる部分、いわゆる基本給の水準を引き上げることです。
企業がベアを実施すると、基本的に全社員の賃金水準が底上げされることになります。例えば、以前の基本給からプラス3,000円のベア実施後は、単純計算で「3,000円×社員数」分、その企業が支払う賃金の総額が以前より増えることになります。
一般的な日本企業では、昇格に伴なう昇給のほか、年功序列と称されるように、年齢や勤続年数に応じて賃金を引き上げる「定期昇給」が行なわれています。例えば、年齢による定期昇給のみ行なわれる企業では、30歳の社員の月給に対して31歳はプラス2,000円などといったように、あらかじめ年齢に応じた賃金水準が決まっており、これに従って自動的に賃金が引き上げられます。こうした企業の場合、社員数と年齢構成が毎年変わらないと仮定すれば、企業が支払う賃金の総額は常に一定となります。
定期昇給に対し、ベアは企業にとって固定費の増加となるものの、個人所得を持続的に底上げするため、ボーナスの増額などよりも経済効果が大きいとされており、中長期的な消費拡大や景気回復につながることが期待できます。
ベアが取り入れられたのは高度経済成長期の日本で、定期昇給だけでは賃金の伸びが物価上昇に追いつかず、実質的な賃金低下となってしまうことを避けるという目的がありました。
1990年代以降、日本経済が低迷しデフレに転じると、ベアによる賃金の引き上げ率は低下傾向となり、2000年代以降は実施しない企業が多くなりました。しかし、2014年は物価の上昇や企業業績の改善などを背景に、大企業を中心にベアを実施する動きが拡がり、賃金上昇率が比較的高い水準となりました。
市場では、今年もこうした動きが拡がることで、日本の景気回復に寄与することが期待されています。
ステップアップ
企業ごとに決められている基本的な賃金体系は、一般に「賃金表」と呼ばれ、この表に従って定期昇給が行なわれます。一方で、ベースアップは賃金表自体の見直しと言えます。
○春闘
春闘(春季生活闘争)とは、労働組合が賃上げや労働環境の改善などを企業側と交渉する「労使交渉」です。
日本企業では給料の改定などが行なわれる新年度のはじまり、すなわち春に向けて労使交渉が進められることが多いことから、春闘と呼ばれます。
春闘では、まず労働者側を代表する連合(日本労働組合総連合会)と、経営者側を代表する経団連(日本経済団体連合会)が、今年の労使交渉に対する姿勢や方針をそれぞれ示します。
それらに基づき、景気の良い産業や、賃上げが見込まれる大企業の労働組合を中心に、要求書を提出し、3月中旬に経営者側の集中回答が行なわれます。具体的には、要求されたベアを全面的に受け入れる満額回答や、一部引き上げなどが決定されます。中小企業の労使交渉は、大手企業の結果を踏まえて進められることが多く、3月よりも遅い時期に賃金改定が決まる傾向があります。
政府は、企業収益を家計にも回し、新たな消費を生み出す「経済の好循環」のためには、賃上げが重要と考えており、法人税率を引き下げた分を賃上げに回すように促しています。こうしたなか、今年の春闘では、連合が強気の要求姿勢を示しており、経団連もベアを含めた賃上げを前向きに検討するように各企業に求めています。こうした後押しを受け、市場では昨年を上回る賃上げが期待されており、今年の春闘の行方に注目が集まっています。
ステップアップ
厚生労働省の発表によると、2014年の春闘では民間主要企業のベアと定期昇給を合わせた賃上げ率は平均2.19%程度と、15年ぶりの高水準となりました。個人消費の拡大には、こうした動きが中小企業などに拡がっていくことが重要と考えられます。
(2015年3月4日 日興アセットマネジメント作成)
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