東日本大震災から4年、オフィスの地震対策に効果的な方法とは
東日本大震災から4年。未曽有の大災害は私たちに大きな衝撃を与えたが、その記憶は薄まってはいないだろうか。東京工芸大学が2014年11月に実施した調査によると、50.4%が「近年、自身や家族の防災意識が薄れてきていると感じる」と回答している(東京工芸大学「災害情報の活用に関する調査」)。このレポートでは、大京グループが東京消防庁と共同で実施した防災訓練を元に、「オフィスの防災」についてのチェックポイントを紹介する。
○オフィスは避難しやすい環境か
オフィスで大地震にあった場合、最も注意すべきはオフィス家具の転倒だ。東京消防庁防災部 震災対策課震災対策係長 佐々木愛郎さんによると、ビルの高層階、特に6階以上のフロアはゆっくりと大きく揺れる「長周期地震動」の影響を受けやすく、家具転倒の危険性が高い。高層ビルに入居している企業では、転倒防止策がきちんとできているかどうかが社員の生存率を上げる鍵となる。東京消防庁の「家具転倒防止対策チェック・レクチャー」から、具体的に注意すべきポイントをいくつか紹介しよう。
1.フロア
全体を見渡せるか、視界を遮るような大きな家具がフロアの中心に置かれていないかが重要。また、個々のデスクを整理しておくこと、通路に物を置かないことも、避難をスムーズに行う上でのポイント。
2.キャビネット
背が低ければ、倒れても避難経路を完全に塞ぐということはない。通路沿いに置くことは推奨できないが、置かざるをえない場合は固定しておく必要がある。
3.オープンラック
上下を固定した上で、軽いものは上、重いものは下に収納する。また、側面と側面をつなぐようにベルトをつけると、落下防止効果が期待できる。
4.コピー機
コピー機は重心が高く重量があるため、実は揺れに対して弱い。さらに、キャスターのついているものでは、ロックが掛かっていても大きな揺れでロックが外れて移動、あるいは転倒するという可能性もある。
対策としては、キャスターをロックした上で、固定のための下皿を敷き、ワイヤーなどで壁に固定する。
5.電子レンジ
弁当のあたため用に設置している職場も多い電子レンジ。棚においてある場合は、耐震用粘着マットなどで固定する必要がある。ただし、棚自体が固定されていないと電子レンジの重みで重心が高くなるので、大きく揺れた際非常に倒れやすくなる。棚自体の固定も忘れずに。
6.冷蔵庫
コピー機と同様かなりの重量があるため、地震の揺れで人にぶつかると、大けがにつながる。転倒防止には、上部をネジなどで固定、または背面についている運搬用の取っ手にワイヤーやベルト式器具を付けて、壁と連結するとよい。
以上が家具転倒防止対策チェックで紹介された対策方法だ。
ポイントは、家具をきちんと壁に固定するということ。前述のとおり、高層階では揺れの幅がおおきくなるため、思いもよらないところで被害が発生しうる。事前に対策をしておくことも、社員の命を守る上では非常に重要となる。
●防災グッズを用意するポイントは「衣食住」
○オフィスに必要な防災グッズは?
次にオフィスに用意しておきたい防災グッズを紹介する。大京グループでは、社員それぞれに防災キットとヘルメットを配布している。内容品は以下のとおり。
・ビスケット6食分
・LEDライトと単4電池
・保存用飲料水1本
・マスク1枚
・アルミ製防寒ブランケット1枚
・軍手1組
・非常用トイレ1組
「防災時の備えを考える上でのポイントは、『衣・食・住』。どのようなものが必要になるかは、人によって大きく異なります。
帰宅困難で2~3日間を会社で過ごすことを想定して、自分には何がいるかを考えましょう」(佐々木さん)
女性であればパンプスの代わりとなる歩きやすい靴、化粧落としや生理用品、コンタクトを使用している人は眼鏡や洗浄液、持病がある人は常備薬なども必要となるだろう。「もし自分が会社で震災にあったら何が欲しいか」を考えることがポイントだ。
さらに、佐々木さんによると、会社として備えているものも併せて考えると良いという。
大京グループ 穴吹コミュニティでは、社として飲料水、ラーメン、米、缶詰、毛布、寝袋、ランタン、鍋、コンロ、簡易トイレなどを用意している。これらの品は、自宅と職場が遠く、帰宅が困難な社員(社員の3分の1程度を想定)が2~3日を会社で過ごせる分を基準に備蓄されている。自社が震災に対してどのような備えをしているのか把握しておくことで、本当に自分が必要としているものを効率良く選択することができる。
○定期的な訓練も重要
震災を想定した避難訓練も、定期的に実施したい対策の一つ。穴吹コミュニティおよび大京アステージでは、「DROP!(まず低く)」「COVER!(頭を守る)」「HOLD ON!(動かない)」の3ステップ、所要時間1-2分でできる防災訓練「シェイクアウト訓練」を実施。
社員それぞれが震災時どう対応すべきかを再確認している。
訓練では座るだけで直下型や海洋型地震の揺れを実感できる「地震ザブトン」の体験会も。社員は震度7を記録した「兵庫県南部地震」や今後起こると言われている「想定南海地震(南海トラフ地震)」のシミュレーションで、揺れの強さや危険性を体験できる。
「天災は忘れた頃にやってくる」ということわざのように、どれだけ甚大な被害を受けても、人の記憶は薄れるもの。突然発生した被害を最小限に食い止めるためには、過去の教訓を元に対策を十分に練っておくことが不可欠だ。「大丈夫だろう」「何とかなるだろう」と楽観視するのではなく、3月11日をきっかけとして、防災について考えなおしてほしい。