シリーズ「オシアナス・クオリティ」 - ユーザーの期待に応えるアフターサービス
カシオウオッチのフラッグシップブランド、「OCEANUS」の高い品質と信頼性をめぐるシリーズ連載。最後にお届けするのは、購入後のユーザーサービスに関するレポート。プレミアムブランド専用の修理と、故障や不具合の発生を未然に防ぐための「あんしん点検パック」を提供する、カシオテクノ東日本リペアセンターにお邪魔した。
○プレミアムブランドに購入後の安心感を
カシオでは、OCEANUSをはじめ、G-SHOCKのMR-GやMT-G、PRO TREK(MANASLU)といった山形カシオの「PPL(Premium Production Line)」で生産されるプレミアムブランド専用の修理ラインを、一般モデルとは別に設定している。これに加えて、本連載の「高額製品ならではの品質保証」でもご紹介した通り、性能点検や消耗品の交換、外観の清浄などをフルセットで行うプレミアムブランド専用サービス「あんしん点検パック」を2014年4月からスタートさせた。その理由と経緯について、カシオ計算機 CS統轄部 国内企画室長 佐久間裕幸氏は次のように語る。
佐久間氏「時計に限らず、カシオ製品の修理はすべて、グループ会社のカシオテクノと協業で行っています。時計の『プレミアムブランド専用修理サービス』(高額時計専用修理)は、2007年4月からです。
2012年に山形のPPLが立ち上がったころから、PPLならではの製造品質の高さを伝えていこうという動きが出てきたのです。
これに伴って、購入後のサービスによる安心感もセットにしないとブランド戦略として完結しないのではないかとの意見が上がり、その結果、新しいアフターサービスの2本柱が命題として掲げられました。
ひとつは、『一般モデルとは差別化した高い信頼性を追求した専用修理ラインの構築』です。もうひとつは『より長く快適に使っていただくための故障予防的なドック・メンテナンス・サービス(後のあんしん点検パック)』です。もちろん、プレミアムブランド専用修理サービスも技術者を増やしたり、新しい機械を導入したりするなどして充実させていきました」
以後カシオでは、これら命題をカタチにしていくために、課題や進捗を報告する会議を行った。また、修理やサポートサービスを広く研究しつつ、カシオならではのサービスとは何かを、約1年半かけて追求していったという。●「プレミアムブランド専用修理」と「あんしん点検パック」の違い
○プレミアムブランド専用修理とあんしん点検パックの違い
プレミアムブランド専用修理サービスでは、ユーザーからの要望を受けた修理のほかにも、カシオ規定の動作点検や内部部品の点検・交換・外装の洗浄などを行っている。では、定期的なメンテナンスを主眼とするあんしん点検パックは、それらとどう異なるのだろうか。
実際の作業を担当する、カシオテクノ 東日本リペアセンター長 立川雅一氏にお話を伺った。
立川氏「まず、一般モデル修理とプレミアムブランド専用修理の違いから説明しましょう。時計修理のプロセスを大きく分けると、修理診断、修理、修理後検査という3つがあります。各プロセスの中で、より細分化された試験や作業が行われます。
例えば一般モデル修理では、修理前と修理後を問わず、通常であれば低温槽での低温検査や姿勢差テスターを使った常温検査は行いません。
しかし、プレミアムブランド専用修理では、内部修理はもちろん、電池交換でもこれらすべてを行います。したがって、プレミアムブランド専用修理では修理に2週間ほどのお時間をいただいております」
つまり、プレミアムブランド専用修理サービスでは、細部にわたって試験や点検を実施しているということだ。
これがあんしん点検パックになると、さらに試験や点検項目が増える。
もっとも、あんしん点検パックは、その名の通り点検(やケア)こそが主眼なのではあるが。
立川氏「機能部の確認では、6項目(プレミアムブランド専用修理)が9項目(あんしん点検パック)に、外装確認では2項目(プレミアムブランド専用修理)が7項目(あんしん点検パック)に増えます。
プレミアムブランド専用修理では汚れている場合のみ洗浄するケースや裏ぶたも、あんしん点検パックではすべて洗浄。ケースにはムーブメントが入っているので、超音波洗浄機が使えません。すべて手で洗います。
ボタンもすべて洗浄します。プレミアムブランド専用修理では劣化時のみ交換となるピンやバネ棒、Oリングも、あんしん点検パックではすべて交換します。アナログブロック(駆動部分)においては、歯車の動作正常性を波形にして検査する動作波形検査も行います。
これはプレミアムブランド専用修理では行っていません」
バンド洗浄においては、プレミアムブランド専用修理では超音波洗浄機でバンド全体を洗浄する。対してあんしん点検パックでは、バンドピンを抜いてコマをバラバラにし、分解洗浄。時間と手間をかけて、細部まで洗浄しているのだ。
これらの工程は、すべて工程管理票で管理される。点検と作業の結果や気付いた点は作業報告書に記入されるので、どの技術者が作業しても作業項目やチェックポイントが抜け落ちることもない。
●時計の修理は「負の経験」、それを「正の経験」へと変えるために
○お客様にとっての「負の経験」を、「正の経験」に変える
立川氏「プレミアムブランド専用修理サービスとあんしん点検パックの作業に当たる技術者は、山形のPPLと同じくPLATINUM(プラチナ)、GOLD(ゴールド)、SILVER(シルバー)、BRONZE(ブロンズ)と、ランク分けされています。
ランクの内容は、製造と修理という作業の違いから、山形のPPLとも若干異なっています。現在(編注:取材時)は、プラチナが1名、ゴールドが3名、ブロンズが1名という技術者が業務に従事しています」
舶来の高級機械時計のそれをも連想させる、サービス内容と取り組み姿勢。
修理に関しては、程度を検証した上で見積もりという形になるが、あんしん点検パックは25,000円(税別)と、他社の同種サービスより5千円から1万円ほど安く設定されている。外装交換が必要な場合のみ、(お客様のご希望を確認の上で)追加の部品代が請求されるが、内部修理での交換パーツは料金内に込みというから驚きだ。
サービス内容と低価格を両立できたのは、カシオがあんしん点検パックを、「あくまでお客様に製品を安心して使ってもらうためのサービスであり、これでビジネスをしようとは思っていない」からだと佐久間氏は語る。
佐久間氏「本来、修理やメンテナンスは時計に必要なもの、といえばそうかもしれません。でも、お客様にとって、それはどちらかといえば『負の経験』です。これを、点検に出して良かった、OCEANUSは修理も安心だな、という『正の経験』に変えることが私たちのミッションなんです。
お客様の方々に、また次もカシオ製品を買おうと思っていただき、OCEANUSファンの拡大につなげることが第一ですから」
プレミアムブランド専用修理サービスは、1年間の再修理保証期間が付いている。つまり、修理した部分と同箇所、同障害が再発した場合、初回修理時から1年間は無償で再修理を行ってくれるのだ。
OCEANUSの購入時3年保証と同様、ユーザーにとっては非常に心強いだろう。
そんなカシオのアフターサービスは、各販売店のほか、全国8拠点のカシオサービスステーション(北海道、仙台、秋葉原、横浜、名古屋、大阪、広島、福岡)で申し込むことができる。さらに、Webページ(http://www.e-casio.co.jp/techno/shop/pages/premium-watch.aspx)から引き取り&配達サービスの利用も可能だ。
製品ごとの修理箇所の分布など、アフターサービスを通じて得られたデータは開発の現場にもフィードバックされ、新製品の性能、使いやすさ、耐久性向上に反映されているという。そして、それが新たなユーザーベネフィットを創出するのだ。OCEANUSの品質保証、製造、そして修理と点検。それらすべてがカシオウオッチのフラッグシップ「オシアナス・クオリティ」なのである。