絵師が考えた理想のお絵かき環境を爆速プロトタイピング! - デジタルな"モノゴトづくり"の最先端が集結した「TMCNetworking Night」
Tokyo MotionControl Network(TMCN)主催のイベント「TMCNetworking Night Vol.1 with THE TERMINAL」が3月9日、東京都・神宮前の施設「THE TERMINAL」にて行われた。TMCNは、安価に入手できるセンサーとデバイスに関心のあるエンジニアが中心のコミュニティ。「デジタルなものづくり・ことづくり」に関心のある開発者やデザイナーたちのネットワークとなっている。
今回開催されたイベントは、テクノロジー体験型のパーティーイベントだ。センサーとデバイスに関するプレゼンテーション(Lightning Talk)を中心に行われ、会場に訪れた人は発表者との会話を楽しんでいた。その中で発表されたものをいくつか紹介したい。
○「ペンタVR」を使って高原で作業をしている気分に
フォージビジョン株式会社のわっふるめーかー氏が発表した「ペンタVR」。ヘッドマウントディスプレイ「Oculus Rift」とペンタブレットを使って、仮想空間での作画を実現するというものだ。
このペンタVRは、Twitter上での「よー清水」氏による提案がきっかけで実現した。よー清水氏は、「VRエンジニアの皆様にはぜひこういう、仮想空間で快適な創作環境を作ってくれるシステムを実現して欲しいです」という言葉とイメージ画像を1月15日にツイート。SNS上での発案が、わずか2カ月足らずで実演可能な状況になったのだ。
その快適な創作環境とは、本当は汚い部屋で絵を描いているのだが、ヴァーチャル・リアリティの空間の中では、高原の空気を吸って鳥の声を聞きながら絵を描いているというもの。これを実現しようという動きがTwitter上で生じ、実装を試す人が出てきた。
今回わっふるめーかー氏がデモンストレーションを行ったものを実際に体験してみたところ、キャンバスの周りには青空が広がり、長時間作業をしていると自分が別の場所にいるかのような感覚を得られそうだった。発案者のよー清水氏も体験したという。
今後は、家には置けないサイズのキャンバスでのお絵かきや、VR空間での複数人でのお絵かき、有名な絵描きさんが描いている様子を隣で見られるコンテンツの制作などが期待できる。
また、リコーの全天球カメラ「THETA」やウェアラブルカメラの「GoPro」などとつなぐことで、全天球の絵をVR空間内で描くことも可能になるかもしれないという。
一方で、課題も山積みだ。現在わっふるめーかー氏はワコムの「Intuos3」を使っているが、液晶タブレットやAndroid、Windowsのタブレット端末対応、Mac対応もしていく必要があると語っていた。
●VRで没入する格闘ゲームや小さな二足歩行ロボットが登場
○デジタルインクジェットプリンターでものづくり
Happy Printersの杉原彩子氏は、2013年6月にオープンした原宿の印刷工場「Happy Printers」の近況を紹介したl。Happy Printersは、「デジタルインクジェットプリンターを使ってものづくりを楽しくすること」を目的にしたショップだ。
実際に印刷されたものとしては、ノートパソコン、バンドマンのスティック、スケートボードなどがある。原宿という土地柄もあってか、ネイルシールやアクセサリーに使う鳥の羽にも印刷することがあるそうだ。また、テレビ番組で紹介された影響で利用者の年齢層が広がり、扇子や帯への印刷を相談する高齢者もいるとのこと。
「他では相談できないこと」を相談されるケースも多いということだった。
○小さな二足歩行ロボット「PLEN」を実演
PLEN Projectの富田敦彦氏は、小さな二足歩行ロボット「PLEN」を紹介。PLENが会場でゴールキックを披露すると、来場者からは歓声があがった。
開発当初、世界一小さい二足歩行ロボットだった「PLEN」は身長23cm/重量700gで、スマートフォンから操作できる。動作は人間工学的で、スムーズでナチュラルな人間味のあるものとなっている。組み立てキットにより誰でも組み立てられ、それによってロボットの構造を学ぶことができるのも特徴だ。
ユーザーが開発して機能を充実させていくロボットとして、PLEN Projectは次世代型の「PLEN2」を開発中。富田氏は「科学技術を身近なものにしてほしい。
Let’s humanize technology!」と締めくくった。
○自分の動きでバトルができる「HADO」
meleapの福田浩士氏は、ウェアラブルデバイスとARを用いたテクノスポーツ「HADO」を紹介。展示を実際に見ながら解説をしてもらった。
HADOでは、スマートフォンを固定したヘッドマウントディスプレイとスマートウォッチを身につけて、動きながらバーチャルキャラクターとバトルをする。ヘッドマウントディスプレイにはAR技術を用いた映像が映り、スマートウォッチはユーザーの動きを認識。手元のスマートウォッチがユーザーの動きを認識し、技を繰り出すことができるという仕組みだ。
まずは、スマートウォッチで技のコマンドを入力。実際の技を繰り出して、動きを覚えさせるのだ。
そして、ヘッドマウントディスプレイを装着してバトル開始。敵と自分の目の前の空間に敵が現れ、自分の動きに反応する。
実際に試してみると、まさに臨場感あふれるバトル体験ができた。自分の一挙手一投足で画面上の敵が攻撃を受けると、通常のゲームで敵を攻撃しているときとは一味違う体感的な爽快さが感じられる。また、遠くの画面を見つめるのではなく、ヘッドマウントディスプレイで顔の周りが覆われているため、臨場感もひとしおだ。
会場では数多くの登壇者によるさまざまな発表が行われ、驚きの声と歓声が絶えることはなかった。展示スペースでは発表物を体験する人もおり、イベントは盛況を見せていた。