米Microsoftが「Cortana」をAndroidとiOSに提供を計画、その狙いとは
米Microsoftは、同社がWindows Phone 8.1以降ならびに、今年後半での提供が見込まれるWindows 10で採用したパーソナルアシスタント機能「Cortana」について、AndroidとiOSの両プラットフォームにも技術を提供していく計画だという。スマートデバイス市場では出遅れが目立つMicrosoftだが、プラットフォーム中立による拡大政策はどこまで功を奏すのだろうか。
同件はReutersが3月13日(米国時間)に報じている。Microsoft ResearchのAI (人工知能)研究プロジェクトである「Einstein Project」の一環として誕生した「Cortana」だが、その本質は単なる音声認識による応答だけではなく、ユーザー個々人の属性や嗜好に応じてその時その時で最適なアドバイスや情報提供を行う、"パーソナライズ"されたアシスタント機能にある。
その名前が人気ゲーム「Halo」の人工知能アシスタントから取られていることからもわかるように、個々人に最適なアシスタントを目指している。それゆえ、利用開始にあたってはある程度のカスタマイズが必要で、さらにより正確な検索結果を導くにあたってユーザー行動記録による情報蓄積が重要になる。
同様のサービスに「Google Now」があるが、これもGmailやGoogle Calendar、検索履歴、スマートフォンでの日々の行動情報収集を繰り返すごとに、これからの行き先や行動に必要な情報がカード形式で整理されて一覧表示され、さらにGoogle Mapsでは関連店舗や行き先がハイライト表示されるなど、より賢くなっていく。Cortanaは、その初見のデモストレーションやイメージからAppleの「Siri」を彷彿とさせるが、実際の中身はどちらかといえばGoogle Nowを目指している。
●Microsoftは何を狙うのか
近年のMicrosoftはOfficeアプリをAndroidやiOSといったWindows以外のプラットフォームにも積極展開しており、むしろアプリケーションやサービスに関してはプラットフォーム中立の性格が強くなっている。これは特にコンシューマ市場における利益の源泉がOSのライセンス収入よりも、むしろアプリケーション提供やサービス提供による収入モデルへと移行しつつあることを反映したものだ。Cortana、つまり(検索技術のベースになっている) Bingの利用機会を少しでも増やすことがMicrosoftの長期的な戦略成功へとつながる。
一方でGoogle Nowで実現されているようなカスタマイズに必要な情報収集がCortanaで行われているとはいえず、これは今後Windows 10への同機能の標準搭載が行われてもそれほど変わらないだろう。Cortanaの利用機会を増やすことは、こうした変化しつつあるMicrosoftの収益モデルを後押しする効果があると考えられる。
対抗となるGoogle側では、こうしたMicrosoftの動きを歓迎しているようだ。Marketing Land主催のDanny Sullivan氏が現在米テキサス州オースチンで開催されているSXSWの自身がモデレータを務めるセッションにおいて、Google Now製品担当ディレクターのAparna Chennapragada氏に尋ねたところ、「月並みな言葉だが非常に素晴らしいことで、これから登場する技術の礎となる」とReutersの報道を受けての感想をコメントしている。
GoogleとしてはMicrosoftの方向性は歓迎しているが、Google NowそのものはWindows Phoneに対して提供する計画はないとも説明しており、現状で世界シェアの3%に満たないといわれるWindows Phoneの立場の難しさも同時に示唆している。