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元AKB48前田亜美、“やり遂げる力”の源と支え「私は母子家庭で育ちました」

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元AKB48前田亜美、“やり遂げる力”の源と支え「私は母子家庭で育ちました」

●握手会の奇跡「ファン同士で結婚した人もいる」
「一人一人名前があるから、何となく『ファン』という一言で片付けたくはない」(『前田亜美1stフォトブック AMI』より)

今年25歳の節目を迎えた前田亜美は記念すべき初のフォトブックに、秘めてきた思いを赤裸々につづった。自身で選んだテーマは、「孤独」「悲しみ」「愛」「家族」「夢」という現在の前田亜美を形作る上でなくてはならないもの。「今が伝えるべき時」と判断し、心情を表す花々と共にそのメッセージを添えた。これまで自分を支えてくれた人々に向けて――。

時に奇跡と幸運をもたらしてくれる「ファン」は、今の前田にとってどのような存在なのか。AKB48卒業から4年、溢れ出る思いをインタビューで記録した。

○■握手会の心得は「覚えること」

――前田亜美さんといえば、明るさに加えて、勝負強いイメージがあります。

じゃんけん大会の常連でしたからね(笑)。
その後、じゃんけん自体はあまりする機会はないんですけど、「運は良いよね」とはよく言われます。もともとクジ運は悪いのに、そういう大事な時にめちゃめちゃ強運で。「これやりたいな」と思っていると、それが叶ったりとか。今回のフォトブックもファンの方から「出してほしい」と要望が前からあって、「25歳くらいかなぁ」と3年前くらいからぼんやりと思っていたら実現しました!

AKB48では写真集やフォトブックを出している子が多い中、私はメンバーと一緒に出すことはあっても、ソロでのそういう話には無縁で。握手会でも、楽しみにしてくださっている方がたくさんいて、アイドルにとってのソロ写真集は大きな意味を持つのかなと感じていました。でも、そう簡単に出せるものではないので、ファンの方には「いつか出せたらいいね」「もっといろいろな人に言ってよ~(笑)!」みたいに返してて。今回出すことができて、恩返しじゃないですけど、そうやって返答していたことがやっと報われたような気がします(笑)。

――ファンとの距離感が近いんですね!

そうですね。
いつも友達のような、家族のような会話です(笑)。握手会のスタンスは人それぞれで、私は友達みたいになってしまうことが多いんですよね。13歳からAKB48に入って、最初は何を話せばいいのかも分からないし、そもそも知らない人に何を言えばいいんだろうと(笑)。時間も数秒と限られているので、考えていたらあっという間に終わってしまう。

でも、そのわずか数秒でも地方から会いに来てくれたりするんですよね。そのことに気づいて、私もちゃんと考えなきゃと思うようになって。まずはファンの方を覚えることを心掛けて、こちらが覚えると相談事をしてくれる方もいて、時々私からも相談したりとか(笑)。友達みたいな関係性になっていって、そういう方々は卒業後も応援してくれています。
もちろん、「アイドルの亜美ちゃんが好き」という方もいますが、友達感覚でお話していた方は「卒業してもしなくても亜美ちゃんが好きだから応援する」という人も増えて。

――確かに、Twitter上でも皆さんの温かさが伝わりますよね。

オフ会も開かれていて、「前田亜美は、どうやったら売れるのか」みたいなことも真剣に話し合ってくれているみたいです(笑)。本当に優しい人が多くて、私が舞台に出演した時も数十人で来てくれて。打ち上げもしたそうですよ。

――楽しそう(笑)。同窓会も開かれそうな勢いですね。

そうですね(笑)。
私の握手会のレーンに並んでいた人同士で、結婚した人もいるんですよ。

――えー!?

そして、生まれた子の名前がアミちゃん(笑)。男性の方、女性の方、どちらも頻繁に来てくださっていて、一緒に並ぶ機会が重なって会話も増えていって。「あの人のこと気になるんだよね」みたいな感じで、両方からの恋愛相談を受けていたんですよ。私は、「そこは男から行くべきだよ!」と後押しして(笑)。交際がスタートして、ある日「ついに結婚しました」と報告を受けました。「もし、子どもが生まれたら名前もらってもいい? 私たちをつなげてくれたキューピットだから」と言われて、「うれしいし、もちろんいいよ!」と。たまたま女の子が生まれて、アミちゃんとつけたそうです。
今でも家族ぐるみで応援してくれています。

――人の人生にそれだけの影響を与えるお仕事なんですね。

そうなんですよ! 大丈夫なんでしょうか(笑)。13歳から芸能界に入って、それだけ人の人生にかかわっていることが分かって、もっとこれからも頑張らなきゃなと身にしみて感じました。

○■「孤独」「悲しみ」を告白した理由

――フォトブックには、ファンへのメッセージとして5つのテーマ「孤独」「悲しみ」「愛」「家族」「夢」が設けられています。前半はこれまで明かしてこなかった「陰」の部分、後半にかけて明るいイメージの「陽」へと移っていく内容でした。

25年間生きてきて、そうやってファンの人の前ではラフな感じで話していましたが、やっぱり「アイドルの前田亜美でいたい」という思いがあって。悲しませたりするようなことはできるだけ言いたくなくて、私の家族のこともきっと知りたくないのかなと。


「実は違うんだよな」と思うことも、「ファンの方がうれしいのであればいいや」ってごまかしていたわけではないんですけど、そうやって過ごしていた時期があって……。それが自分の中で嫌だなと思うこともあって、大人になるにつれて、ちゃんと伝えたいなと思うようになりました。ここまでついて来てくれたので、今回はみんなに伝える良い機会だと思って、私のプライベートや家族の話も含めてエッセイにしました。

人生の中で悲しいことがあっても、それを乗り越えて楽しいことに巡り会えているということが私の中では大きな意味を持っています。楽しいことの方が全然多いし、この仕事をしていて良かったと思う瞬間もたくさんある。そういうことも、この1冊に詰め込めたらいいなと思いました。

●AKB48時代は「周りの支えがないと成立しなかった」

――「孤独」や「悲しみ」はすぐに思い浮かんだテーマだったんですか?

喜怒哀楽がはっきりして、自分の中で解消することが多いタイプです。かかえこみすぎて一人で泣くこともあったし、人に相談することも苦手。
でも、助けてくれる人は自分の周りにたくさんいるということを25年間生きていて気づくことができました。それも含めてファンの方への相談じゃないですけど、最初にメッセージとして伝えたかったのが、「孤独」や「悲しみ」。ネガティブな部分を入れるか悩みましたが、そこも含めて人間味。アイドルをやっているといろいろな経験があるし、楽しいだけじゃない。そこを伝えるために「孤独」と「悲しみ」を最初に入れました。

悲しい時はとことん落ち込むタイプ。お風呂でもわんわん泣いたり! そうやって悲しんでる自分のことが笑えてきて、泣くとスッキリします。そうやって生きてきたことも、伝えられればいいなと思って。せっかちな性格なのですぐに切り替えたいんですけど、そうやって落ち込まないと楽しさにも気づけない。悲しいと感じたら泣こう、溜め込まないと心に決めて。卒業して一人になりましたけど、誰も助けてくれないわけではない。家族やファンもいて、相談すれば助けてくれる人もいる。だからこそ一人の時間も大事だと受け止めています。

――印象的だったのは「やり遂げる」という言葉。その「やり遂げる」原動力は何だったのでしょうか?

私は母子家庭で育ちました。三姉妹の真ん中なんですけど、姉は小さい頃から身体が弱かったので、「私がお父さんにならなきゃ!」みたいな思いが小さい頃からあって。それも勝手に思っていただけで別に嫌なわけではななくて、「ママの助けになりたい」「褒められたい」と。どうやったら周りに認めてもらえるのかを考えながら生きてきたので、そういう我慢強さとかはアイドルの世界でも生かされたのかなとも思います。

あとは小さいことを気にしなくなりました。「寂しい思いをしてきたよね」とか「つらい経験だよね」みたいにそういう経験をしたことがない人から気を使われることもあるんですが、私の中では母子家庭は全然悪いことではないし、むしろ家族があってありがたい。経験できてよかったと前向きに捉えています。

楽しいことの方が、逆に多かった。母子家庭で三姉妹なので、当たり前なんですが家に女しかいないんですよ(笑)。いろんな話をするし、本当に自由。そして家族の絆がとにかく強いです。

――家族への感謝の思いも、しっかりと伝わる文面でした。

母は仕事をしながら私たちを育ててくれました。口癖は、「自分で何でもできるようになりなさい」。ご飯も作れるようになって、妹の面倒を見たり、姉の手助けをしたり。それが自然と身についていたので良かったのかなと思います。

○■多忙なAKB48時代の記憶

――AKB48で多忙な時期は、どのような生活だったんですか?

中学2年から3年にかけてが一番忙しくて、学校行事もなかなか出ることができませんでした。早退して仕事に行って、帰って来たらまた朝から学校に行って……みたいな生活。次の日まで覚えなければいけない振り付けDVDをもらって、学校行って早退して、本番やって、レッスン、撮影……そんな毎日です。

母も仕事をしていたので、今思うと私を支えるのも本当に大変だっただろうなと思います。それでも、「やりたい」と言ったことを応援して、励ましてくれました。当時は余裕がなくて、「私だってがんばってるのに。自分で稼いでなんとかしようとしてるのに」みたいに不満を抱いてしまうこともありましたが、今思うと、送り迎えだったり、周りの支えがないと成立しなかった。でも、その時は全然気づけなかったんですよね。

落ち着いてから感じるようになったし、当時から言われてはいたんですけど、反抗期もあって聞き入れられなくて(笑)。せっかくお母さんがご飯作ってくれているのに、それを食べずに寝てしまったり。そういうのって、お母さんも精神的につらかったと思うし、私もいっぱいいっぱいだった。そういうことを大人になってから気づくことができました。

――「一刻も早くお金を稼いで楽させてあげたかった」とも書いてありましたが、そこもモチベーションだったんですか?

そうですね。でも、例えば授業料や車の免許とかも、自分の人生だから自分で払って当たり前だと思っていました。母も私のためにいろいろやってくれていたんですけど、自分でやらなきゃいけないなと。そういうことも含めて、早めに仕事をして自立したかったんです。高校生だったらアルバイトできますが、私はできなかったので、小さい頃から仕事をして積み重ねていけばなんとかなるかなと思っていました。でも、甘くない世界です。安定もしないので、母からは細かい節約術も教わっていました(笑)。

お母さんのこと大好きで、本当は甘えたいのに甘える時間もなくて。AKB48に入る前から、お姉ちゃんにつきっきりだったり、お母さんは末っ子の妹を見てて、「私って放置されてるな」みたいに勝手に思って。それが高校生ぐらいで一番出てしまって、でもお母さんからしてみれば、「その歳で何言ってるの」みたいな(笑)。反抗したと思ったら甘えるし、お母さんもすごく振り回されたんじゃないかなと思います(笑)。

――ステージ上での笑顔の裏には、そんなドラマがあったんですね。アイドル時代に、つらいと感じることは他にありましたか?

「つらい」というほどではないんですけど、普通の生活ができなかったことですかね。青春がないというか、中学校も運動会に1度も出られなかったので。学校に行くと、みんな運動会の練習してたりするんですよ。でも、私は何の種目をするのかも分からないまま見学をして、迷惑をかけることばかりで。そういう意味でつらいというか、普通の生活ができませんでしたね。でも、友達がノートを全部とってくれていたりとか、周りの支えもたくさん感じられたのかなと思います。授業参観では知らない人が見に来たりするんですよ。「あの子、AKBだよ」とか聞こえてきて、学校以外でもどんなところに行っても、まわりからはAKBや推しメンの話題。どこで誰が見ているか分からない状態で生きていたので、ずっと緊張状態でした。それはそれでつらいなと思うこともあったんですけど、母からは「自分で選んだ道でしょ!」と言われて(笑)。あとは、妹も「あの子、AKBの前田亜美の妹だよ」とかいつも言われていたみたいなので、家族に迷惑をかけて申し訳ないという思いもありました。

●“ファン”にも一人ひとり名前と個性がある

――そういったことを乗り越えたからこそ、応援し続けてくれる温かいファンにも巡り会えた。「一人一人名前があるから、何となく『ファン』という一言で片付けたくはない」と書いたのは、そういう思いだったんですね。

私は「ファンの人」と書いているんですけど、「ファンの人」と書いた時に今まで出会った人のことが一人ひとり思い浮かぶんです。できれば、一人ひとりを書いてあげたいけど、それはなかなか難しい。でも、みんなそれぞれに個性はある。そもそも、私自身が「AKB48」というグループでひとくくりにされることが多かったので、「私は一人の女性としての前田亜美だよ」と見てほしかった。この思いが、文章を通して伝わればいいんですけど……。

――必ず届くと思いますよ。芸能界入りした時と今では、「ファン」という言葉の意味が変化したんですね。

重みが全然違います。芸能界に入りたての頃は出会う機会が少ないですし、人数も少ないので、顔が思い浮かぶというよりは、「応援してくれる人」みたいなざっくりしたイメージでした。今、「ファンの人」と聞くと一人ひとりの顔が思い浮かぶし、私の知らないところで自分のことを応援してくれるって、生きていてなかなかないことですよね。

○■「ヒマワリ」に込めた思い

――今回のフォトブックは「花」もテーマになっています。最後にヒマワリを選んだのは、どういう思いだったんですか?

ヒマワリは、見ているだけで明るくなりますよね。私が人生において心掛けているのが、「常に笑顔でいよう」。悲しい時は泣けばよくて、それでも笑ったら結構楽しくなったりして、忘れちゃうんですよ。笑顔でいると、楽しいことが舞い込んで来る。

AKBにいる時から、それは実践していて。悲しいことばかりを考えていたら良いことは起きないし、マイナス思考になるし、これはダメだと思って、「無理やりでも明るく生きよう」と思って気をつけていたら、前向きになれたので「これか!」と(笑)。

ヒマワリは太陽に向かって育って、見るだけで元気をもらえて、すごく大きくて明るいお花。ファンの人からも「ヒマワリみたいだね」と言われることや、生誕祭でファンの方が用意してくれるお花もヒマワリが多くて。それだけイメージが強いのかなと思ったので、最後のカットはヒマワリ一択でした。

――それでは最後に家族、そしてファンに向けてのメッセージをお願いします。

今までいろんなことがありました。私、本当に迷惑ばっかり掛けていたんですよ。知らないことが多すぎて、いっぱいいっぱいになって、自分の中で勝手に解決していたんですけど、「みんなで解決しないといけないこと」もあって。これからも相談事とか報告とか、ファンの方々や家族としていきたいです。

今まで乗り越えてきたことを生かしていきたいので、これからはもっと私の方から頼ろうかなと。人に頼ることが苦手だったので、頼っていきたいし、みんなから頼られる女性にもなりたい。そこはみんなで一緒にがんばっていきたいと思っているので、これからも引き続き応援してくれたらうれしいです。この本に込めましたが、きっと伝えられない部分もあると思うので、そこは面と向かって、直接お話をしたりしながら伝えていきたい。自分のため、大切な人たちのために、その初心は忘れたくないです。

■プロフィール
前田亜美
1995年6月1日生まれ。東京都出身。2008年12月、AKB48の第4回研究生オーディションに合格して芸能界入り。7期生としてチームAメンバーに昇格した後、2010年の「AKB48 19thシングル選抜じゃんけん大会」では5位になり、自身初のメディア選抜入りを果たした。その後も2011年、2012年のじゃんけん大会でも勝ち上がり、3年連続で選抜入りした。2016年8月にグループを卒業し、現在は女優として活動している。

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