留目新社長が経営戦略を説明、「スマートフォン参入元年」を宣言 - NECとレノボ、役員就任会見を開催
4月1日付けでレノボ アジアパシフィック地域担当プレジデントに就任するLenovo NEC Holdings社長兼レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ代表取締役社長のロードリック・ラピン氏と、2015年4月1日付けで、NECパーソナルコンピュータおよびレノボ・ジャパンの代表取締役社長に就任する留目真伸氏は、3月26日に会見を行い、今後の事業方針などについて説明した。
○2015年度にスマートフォン投入
会見のなかで、2015年度中にスマートフォンを国内市場向けに投入することを発表。「投入時期は今年度中盤から後半になる。当社のスマートフォン参入元年として、PC、タブレット、サーバーに加えて、スマートフォンを投入することで、トータルなコンピューティングデバイスベンダーになることができる。また、この領域においては、パートナーとのコラボレーションによって、日本のユーザーに最適なソリューションを提供していく。先頃開催されたモバイルワールドコングレスにおいても、ロッドが直接出向いて、現地でこのビジネスに向けた話し合いを行っている」(留目氏)とした。
また、ラピン氏は、「日本のスマートフォン市場は、ボリューム、利益率からも重要な市場である。そのなかで、我々はユニークなプレーヤーになれると考えている」と語った。
なお、参入方法や搭載OSなどについての詳細については、「改めて発表する機会を設けたい」と述べた。
さらに、NECパーソナルコンピュータ米沢事業場において、来年度下期から、x86サーバーの生産を開始することを明らかにした。今年2月からは、ThinkPadの米沢生産を開始しており、国内生産ならではの短納期や柔軟なカスタマイズ対応の強みを生かす考えだ。
ラピン氏は、「米沢という生産拠点は、王冠に輝く宝石のような拠点である。米沢生産に踏み切った理由は、CTOに対応し、これを5営業日で納品できる体制が整っていることに加え、アベノミクス効果により、円安が進展。国内生産が経済的なメリットがあることがあげられる。さらに、最新の生産能力を持つ、信頼性の高い拠点であることも理由のひとつである」と語った。
●新たな経営体制と今後の戦略
また、ラピン氏は、新たな経営体制について言及。
「私は7年前に日本にきたが、この間、大きな変革が行われた。コンシューマ事業を立ち上げ、NECパーソナルコンピュータとジョイントベンチャーを開始し、事業は10倍に拡大している。そして、これから、進化の新たなステージに入っていくことになる。外国人の社長から、日本人のトップへと交代する。新社長の留目には、個人的にも大きな信任をしている。実績も確かである。グローバル企業の経験もある」などとした。
「NECパーソナルコンピュータとのジョイントベンチャーは、当初の5年間という契約から、期限を設けない形に延長している。
NECブランドの製品については、縮小することは考えておらず、むしろ、さらに投資をしていく段階にある。LaVie Hybrid ZEROは、2015 International CESで24の賞を受賞した。日本のコンシューマ市場を最も良く知っているのはNECパーソナルコンピュータ。ユニークな技術や製品を、日本から世界に出していきたい」(ラピン氏)。
また、ラピン氏は、最新四半期である2014年度第3四半期(2014年10~12月)の業績についても説明。売上高は前年比31%増の140億9200万ドル、M&A関連費用を除く税引き前利益は前年比8%増の3億4800万ドルとなり、「日本およびアジアの成長性については明るい展望を持っている」としたほか、「PC事業の構成比は65%に留まり、モバイルが24%、エンタープライズが9%といったように、かつてない収益源の多角化が進んでいる。また、モトローラのスマートフォン事業、IBMのx86サーバー事業の買収などにより多様化しているものである」とした。だが、「PC市場は今後も成長を遂げていくと考えており、当社のサプライチェーンの強みや戦略を生かすことができる」とも述べた。
グローバルの新体制についても説明。Gianfrnco Lanci氏がCOOに就任し、製品および地域ごとの責任も担うこと、Gerry Smith氏がPCおよびエンタープライズを担当することを紹介。また、アジアパシフィック地域担当プレジデントに就任するラピン氏自身は、「グローバルに観点からも日本は重要な市場であると認識しており、東京にベースを置いて、アジア太平洋地域を担当していくことになる」とした。
○新社長は留目氏、IT利活用を推進
一方、留目新社長は、「国内トップシェアのPCメーカーの社長に就任し、気が引き締まる思いである」と切り出し、「日本とグローバルの融合による『和魂洋才』を大切にし、これからも磨いていきたい。私自身、モノづくりを大事にしている会社を経験し、日本のモノづくりの手法を、世界で輝かせてきたという実績もある。レノボ全体のなかでもこれを生かしたい。こうした取り組みにより、企業を成長させ、日本経済にも貢献したい」などと述べた。
今年度は、2社合計の量販店シェアが39%に達するなど、年間を通じても過去最高のシェアを獲得する見通しであることも明らかにした。
また、留目氏は、自らの目標について、「2020年までにコンシューマ、法人のどちらにおいても、日本のIT活用力を世界最高レベルに引き上げる」と宣言。「これがトップシェアベンダーの役割である」と述べた。
NEC レノボジャパングループの現状認識として、「コンシューマ市場においては、PCやスマホは普及しているが、デジタル化すべきアナログ資産はそのまま。デバイスの用途は限定的であり、連携していない。この活用の部分を、トップシェアベンダーとして真剣に取り組んでいきたい。一方、法人市場においては、ICT導入は続けているが働き方は変わっておらず、生産性は低いまま。社内外のコラボレーションが不足しており、イノベーションが起こりづらい、グローバル化やM&Aにフレキシブルに対応できないという状況が生まれている。国際競争力がついてこないという課題があり、NECパーソナルコンピュータの知見を生かして、本当に必要のあるITシステムを提供していきたい」と語った。
ライフスタイル改革では「Digital Dramatic Days」、ワークスタイル改革では「Work Style Innovation」を掲げた。「ライススタイルにおいては、デジタルでもっとワクワクする日常を実現し、ワークスタイルにおいては、本当に意味のあるICTで日本のの各法人にもっと生産性、競争力を提供したい」(留目氏)。
また、NECパーソナルコンピュータが、日本の市場を理解し、日本人としてのモチベーションの持ち方を知り、日本でのモノづくりを行う企業であること、また、レノボ・ジャパンは、グローバルの多品種開発、展開のほか、ソフトウェアとICTツールを提供する企業であることを示しながら、「これは、私のバッググランドにも合致するものである。日本ローカルの特性を持ち、グローバルスケールによる経営や提案を進める」と述べた。
●留目氏「日本人社長としてより身近な存在に」
留目氏は会見で、社長就任の要請を受けたのが、正式発表となった3月2日の1週間前であったとコメント。
「ロッドから、社長をやってもらう、と直接言われ、その場で即答した。レノボには人材開発プランなどがあり、そのなかで様々な要望を出し、米国勤務もその中で実現した。いつかは日本でオペレーションをやりたいと考えており、ロッドにもその意向を伝えていた」と、自ら、将来の目標に社長への就任を掲げていたことも明かした。
さらに、「日本人社長として、日本の顧客のより身近な存在になれると考えている。写真を撮影しても、アナログのアルバムにしまい切ったままという、日本のデジタルライフスタイルの現状と課題については私の方が理解している。部品やツールを提供するだけでは使われない。もっと用途を提案していく必要がある。また、法人市場においても、なぜ、日本の企業において、生産性が低いのかといったことも、日本人の私の方が理解しているはずだ。日本人であるからこそ、日本の市場環境に適した提案ができると考えている」と述べた。
留目新社長は、1994年に早稲田大学政治経済学部卒後、トーメン、モニターグループ、デル、ファーストリテイリングを経て、2006年にレノボ・ジャパンに入社。2007年には執行役員に就任し、翌年には法人向け市場を担当。2009年には執行役員常務に就任し、戦略、オペレーション、製品事業、営業部門などを統括。2011年からはNECパーソナルコンピュータの取締役を兼任。2012年6月からは、Lenovo Group米国本社戦略担当部門に赴任し、全世界の事業統合を担当。2013年1月にはレノボ・ジャパンの執行役員専務に就任し、2013年4月からはレノボ、NEC両ブランドのコンシューマ事業を統括してきた。1971年生まれ、43歳。