LG、有機ELテレビ「LG OLED TV」発表会 - 4K対応の55型曲面パネルを採用
LGエレクトロニクス・ジャパンは3月25日、4Kテレビの新製品「55EG9600」を発表した。日本市場で初めて発売される有機EL(OLED)テレビであり、視聴時の没入感を高める曲面パネルを採用している。本稿では同日開催された発表会の様子をレポートする。
○OLEDがテレビの新しい時代を作っていく
製品のお披露目(アンベール)に先立って、LGエレクトロニクスの李仁奎(イ・インギュ)専務は有機ELテレビを「夢の技術が実現した」と紹介。消費者の目の肥えた日本市場に初めて55型の有機ELテレビを投入できたことは、LGにとって大きな意味があると語った。
続いて登壇した同社の慶甲秀(キョン・ガプス)社長は、「今日は歴史的な発表会だ」と切り出し、ブラウン管が液晶になり、フルHDから4Kになって「その次の時代に求められるテレビこそ有機ELテレビだと確信する」と胸を張る。また、新製品の画質性能に触れ、「有機ELでしか見られない映像が楽しめる時代がやってきた」と訴えた。
有機ELでは画面を構成するピクセルの一つひとつが自発光して光量を最適化する。
そのため、引き締まった「完全な黒」を再現できる。一方、従来の液晶テレビは画面をエリアに分けてバックライトで部分調光する仕組みのため、光を完全に遮断できず、黒の再現が難しかった。こうしたわかりやすい差別化ポイントを前面に出して訴求し、日本市場でのシェア拡大を図ると言う。
LGエレクトロニクス・ジャパンの首藤部長は、有機ELテレビだけでなく、4K IPSパネル採用のラインアップも6シリーズ14モデル投入し、日本市場における同社の存在感を高めていくと表明した。
●有機EL曲面型テレビ、LGだけの4つの特徴
55EG9600は、本年1月に米・ラスベガスで開催された家電製品展示会「2015 International CES」で同社が参考展示していたものと同じ製品だ。発表会ではその特徴を大きく4つに分け、わかりやすく説明していた。その4つとは、「Perfect Black」「Perfect Color」「Perfect Curve」「Art Style Design」だ。
Perfect Blackは、前述の通り有機ELの特徴を活かしてくっきりとした深い黒が表現できること。
Perfect Colorは色再現性の高さを指す。従来の有機ELのRGBの画素に加えて、白(W)のサブピクセルを追加した同社独自のWRGB方式を採用しており、繊細で鮮やかな色表現を実現している。
Perfect Curveは、カーブしたディスプレイ面による没入感の高さ。画面が大型化すると画面中央と周辺部に視野角差が生じてしまう。これを映画館の大型スクリーンのように画面を湾曲させることで、視野角差を軽減するわけだ。
Art Style Designは、パネル最薄部で0.6cmというスリムなデザインのこと。有機ELテレビにはバックライトが存在しないため、その分だけ薄型化と軽量化が図れる。同社ではリビング等に設置したとき、まるで浮いているように見える存在感だとアピールしている。
この4つ以外で目についた特徴としては、有機ELだからこそ実現できた0.0001ミリ秒以下という反応速度の高さ(液晶の1,000倍以上であるという)や、オーディオ機器メーカーのHarman/Kardonと提携して開発したサウンドシステム、操作性を向上したテレビ用OS「webOS 2.0」の採用などが挙げられる。
国内テレビ市場は、地デジ完全移行や消費税増税前の駆け込みで活況だった時期に比べると、かなり盛り上がりに欠ける状況だが、LGが今を選んで虎の子の有機ELテレビを国内市場に投入する理由は何だろうか。
LGエレクトロニクスの李専務は、大型テレビの買い替えタイミングが近づいていることや、東京オリンピックに向けた盛り上がりへの期待感はもちろんだが、パネルの歩留まりが向上し、安定供給のめどが立ったことが大きいと言う。「ずっと日本市場に展開したかったが、やっと自信を持ってお届けできる製品が作れた」と李専務。
日本市場は消費者の目が肥えており、海外メーカーの参入は難しいとよく言われるが、品質に厳しい日本市場だからこそ、他社にない有機ELテレビに魅力を感じてもらえるという読みのようだ。
○ぱっと見ただけでわかる黒の表現力
発表会場の製品展示コーナーでは、55V型の55EG9600のほか、65V型の65EG9600や、液晶テレビのEC9310シリーズなども展示していた。
有機ELテレビの55EG9600を従来の液晶テレビと並べて比較展示したコーナーでは、55EG9600の黒の深みの違いがぱっと見ただけですぐにわかった。また、サンプル映像は動きの速い映像が多く用意され、応答速度の性能もアピールしていた。
実際に曲面パネルを見てみると、思ったほど違和感は覚えない。斜めから見るとカーブが目立つが、正面から見ているとだんだん歪みが気にならなくなり、むしろ画面の中心が見やすくなって目の負担が減っているように感じた。
同社によれば、まずは都市部の大型量販店から実機を展示していくという。有機ELと曲面ディスプレイが気になる人は店頭で実際に視聴してみるとよいだろう。