愛あるセレクトをしたいママのみかた

ゼンショー、第三者委員会の報告書公表 - 「深夜のワンオペ解消は評価」

マイナビニュース
ゼンショー、第三者委員会の報告書公表 - 「深夜のワンオペ解消は評価」
●「月の時間外労働100時間以上」は0名に
ゼンショーホールディングスは8日、牛丼チェーン「すき家」の職場環境改善に関する会見を行った。

○委員会による報告を元に、業務改善対策を実施

「すき家」は2014年2月から4月にかけ、新メニュー導入と人手不足による従業員の負担増が深刻化。123店舗で一時休業や時間帯休業の措置を取らざるを得なくなった。同社はこうした事態を重く受け止め、4月28日付で労働環境改善のための第三者委員会「職場環境改善促進委員会」を設置。委員会による報告を元に、業務改善に取り組んできた。

労働環境改善に当たって、第三者委員会が提言した施策は以下の5つ。

1.労働環境を改善するための施策
2.経営幹部の意識を改革するための施策
3.コーポレートガバナンスを改革するための施策
4.担当者の権限と責任の明確化のための施策
5.リスク情報の伝達経路を明確にするための施策

今回の会見では、上記事項の中でも喫緊の課題であった「1.労働環境を改善するための施策」を中心に報告が行われた。このレポートでは、すき家の取り組みとそれに対する第三者委員会の評価を紹介する。


○「月の時間外労働100時間以上」231名から0名に

ゼンショーホールディングス傘下のすき家本部におけるこれまでの長時間労働の把握は、月間で、かつ前月に対してのものであった。さらに、当該月の長時間労働者に対しても、後追いで注意喚起をする程度であったため、月の平均残業時間が100時間を超えるなど、長時間労働の実態を把握できていないことが問題視されていた。

指摘を受け、同社は2014年10月より、社員・パート・アルバイトの労働時間管理が日々行えるような仕組みを整備した。また、分社化により立ち上げられた地域すき家においては、労使が構成する「時間管理委員会」を設置。同委員会が中心となり、前月長時間労働を行った従業員の上司に当たるマネジャーを召集し、原因の究明と再発防止のためのヒアリングを実施した。

施策の結果、調査報告書で指摘された「月間で時間外労働100時間以上」の従業員は減少。2014年3月には非管理職社員418名のうち55.3%に当たる231名だったが、10月には0名になった。以降、2015年1月の2名を除き、直近の2月まで0名が続いている。
○平均残業時間も法定基準内に

2014年3月時点の「社員の平均残業時間」は、「平均109時間」と健康が脅かされるレベルであった。「社員の残業時間の内訳」も、2014年3月の段階では、非管理職社員418名の内、4人に1人に当たる105名が「月160時間以上」の残業をしていた。

しかしながら、対策の施行後、残業時間は減少傾向にある。10月以降は法定基準である「45時間」を下回る水準まで低下した。2015年2月度の社員残業時間をみると、非管理職社員854名の内、全体の91%に当たる780名は「0時間以上60時間未満」、9%に当たる74名は「60時間以上100時間未満」という結果になった。

○良くなってはいるが、環境改善は不十分

第三者委員会は長時間労働問題に対する同社の取り組みを以下のように評価した。

「長時間労働が発生しないように、従来はできていなかった事前の牽制ができるようになったことは評価できる。また、地域すき家において担当を明確にし、網の目を細かくして日々の労務管理を行う体制に改めた点や、労使双方がメンバーとなった時間管理委員会において、直接の上司に対して教育の機会を設けている点も、今後の再発防止に一役買うものと理解できる。
クルーの応募状況については、特に景気が回復し、人手不足感が高まっている中、前年を上回る応募があり、基調としてはクルーの稼働人数も増加傾向にあるということは評価すべきである」

一方、問題点として、「統計資料の数値の信頼性について、内部相談制度を充実させ、現場の従業員が情報を上げやすくし、更にその内容の事実確認をするなど、実態をより正確に掌握する仕組みが必要である」と指摘。さらに、「社員やクルーの長時間労働の実態が改善してきたとはいえ、改善の取り組みに時間を要している上、残業が60時間以上の従業員が相当数継続して存在していることも、労働環境が十分改善しているとは言い難い。クルーの作業負担軽減も踏まえ、長時間労働を発生させないよう、引き続き対応の努力をすべきである」としている。

●問題となった深夜の一人勤務体制も解消
○深夜のワンオペ解消へ

前回の記者会見で指摘された深夜の1人勤務体制(ワンオペ)については、2014年10月に、深夜時間を複数勤務体制にすることで労働環境を大幅に改善。複数勤務体制が確立できなかった1,254店舗(全店舗の約6割/当時)は深夜営業を休止した。なお、2015年3月時点では、人材が確保できた638店舗(2014年10月の深夜時間帯営業休止1,254店舗の50.9%)が深夜営業を再開している。

深夜ワンオペの対応について、委員会は、「一時的にせよ企業利益を損ねることがわかっていながら、従業員がそろわない店舗に関して深夜時間帯の営業を停止した判断は評価することができる」とコメント。ただし、「深夜営業を再開する際、これまでと同様に1人勤務体制に戻る恐れがないかについては、例えば内部相談制度の活用などで、継続的なチェックの仕組みが必要となる」と警鐘を鳴らした。


○「学生クルーを支援する取り組みを」

早稲田大学学事顧問で委員会委員長の白井克彦氏は、「労務環境については、一定程度の改善が示された。しかしながら、そのデータの信頼性をチェックする仕組みが必要であるし、残業時間の改善も、十分であるとは言い難い」とコメント。さらに、同社で働く学生クルーについて、次のように述べた。

「近年、親が負担する学生の学費や生活費は減少が著しく、学生のアルバイト収入は極めて重要なものとなっている。学生がすき家のクルーの6割程度を占めることを考えると、学生クルーを単純に安価な労働力の提供者としてだけ見るのではなく、学生のより有益な学習を支援する補助的な取り組みや、様々な立場にある主婦のそれぞれにターゲットを絞った、より柔軟な働き方を提案し、日本における業界のリーディングカンパニーとして、他の企業をリードするようなワーキングモデルの確立をしていくことが、日本代表として世界に提案をするためには不可欠である」(白井氏)

○興津社長「信頼回復に向け全力」

同委員会からの報告書を受け、すき家本部 代表取締役社長 興津龍太郎氏は「委員会からの評価、提言を真剣に受けとめ、今後、重要な経営課題としてグループ職場環境改善改革推進室とも連携し、再発防止と信頼回復に向けて全力を傾けてまいります」と決意を述べた。

また、ゼンショーホールディングス 代表取締役会長兼社長兼 CEO 小川賢太郎氏は厳しい意見も多く、大きな勉強となったと振り返った。その上で、「経営には終わりがない。従業員と社会に支持される会社を目指し、昨日よりも今日、今日よりも明日と良い組織にしようと改善に取り組んできた。
これを契機に従業員とともにより良い会社づくりを目指し、『世界から飢餓と貧困を撲滅する』という経営理念の実現を図っていきたい」と語り、会見を締めくくった。

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード