NTTぷらら、「ひかりTV」で4K攻勢を加速 - 4K見逃し放送や4K-IP放送を国内で初めて開始
NTTぷららは3月9日、2015年度上期の事業説明会を開催し、国内初の4Kによる地上波テレビ番組の見逃し放送や先行配信を開始するとともに、4KのIP放送を12月に開始することを発表した。同社の板東浩二社長は、2016年3月末までに現在300万の会員数を315万まで拡大する目標を掲げ、それに向けて各種施策を打ち出していく意向を示した。
NTTぷららが運営する映像サービスの「ひかりTV」は、08年のサービス開始以来、順調に会員数を拡大。開始から7年で300万会員を突破し、「大きなマーケットを開拓して成果を残せたのではないか」と板東社長は語る。ただ、100万会員から200万会員に増加したときは2年で達成したのに対し、200万から300万会員に達するまで3年かかって伸びが鈍化していることから、今後どこまで会員数を伸ばせるかが課題としている。
4月からは提供している全98チャンネルのHD化が完了。ユーザーメリットに加えて、SDのプラットフォームを破棄できるため「効率が上がった」という。NTT東西が提供する「光コラボレーション」を活用し、光回線とISP料金(5,700円)にひかりTVを契約すると毎月8,200円(一例)かかっていたところ、光コラボレーションでぷらら光とのセットプランを提供することで同じサービスが5,700円に収まるようになり、「料金的には(他社サービスに対して)競争力がある」と板東社長。
14年10月には日本初の4K映像のビデオ・オン・デマンド(VOD)を提供開始。開始時124本だった4Kコンテンツは、3月末までに276本へと拡大。シャープや東芝、ソニー、パナソニック、LGといったテレビメーカーが順次この4K-VODに対応しつつあり、視聴環境も拡大してきている。
こうして「サービスでやれることは全部やってきた」という板東社長だが、会員数の拡大は鈍化しており、そもそも「マーケットも拡大しているわけではない」という状況。光コラボレーションによる効果も未知数で、当面は状況を見極めつつ、「最低でも315万会員」という年度末の目標を設定した。会員数拡大のために「販売チャネルの拡大」を重視する板東社長は、NTTドコモのショップでひかりTVを紹介するなどの施策も展開しているが、「相当知恵を出さないと、これ以上はなかなか会員数は増えない」という見通しを示す。●4Kで拡大を見込む、3つの施策
こうした中、今年度は4K-IP放送の開始、4K-VODの提供作品拡大、4K映像制作の新たな仕組み作りという3つの施策を実施する。4K-IP放送はフレッツ光ネクスト回線を使ってマルチキャストで4K映像を配信するサービスで、従来の4K-VODに対していわばテレビ放送という位置づけ。
現在は一部量販店の店頭などで試験放送をしているが、12月から本放送を開始する。利用には対応テレビが必要で、すでにシャープと東芝は開発を予定しており、パナソニックは対応を検討中。他のメーカーとも交渉を行っているという。また、同社の4K対応外付けチューナー(ST-4100)もファームウェアアップデートで対応する。ただし、現時点では提供チャンネル数や編成などは公表されず、後日明らかにされる。
4K-VODでは、さらに配信作品を拡大。2016年3月末には700本まで拡大する予定で、テレビ東京のドラマ「不便な便利屋」をテレビ放送直後から、4Kで見逃し配信する。また「E-girlsをまじめに考える会議」では、テレビでの放送前に4K-VODとして先行配信を行う。
いずれも日本初だという。
NHKが7月から放映予定の「シャーロック ホームズ 4Kスピンオフ(仮)」でも、放送後の見逃し配信を実施。撮影はすべて4Kで行われ、テレビではフルHD放送だが、ひかりTVでは4Kで配信する。
ほかにも、ぷららTVとしては初めてナショナル ジオグラフィック チャンネルと共同でドキュメンタリー番組を4Kで制作。高輝度青色LEDの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏の密着ドキュメントを4K-VODで配信する。ハリウッド映画の『ANNIE』、ライブショーの「ウルトラマンヒーローズ THE LIVE アクロバトルクロニクル 4K」なども用意。幅広いコンテンツで利用者拡大を図る。
4Kコンテンツ拡大に向け、新たな仕掛けも行う。
これまで、映像制作はプロフェッショナルが集団で行うものだったが、YouTubeのように個人が撮影したものでも「結構いいものがある」(板東社長)。これに近い仕組みを作ろうというのが新たな取り組みだ。
メーカーから4Kカメラや編集機材を借り、これを映像制作の専門学校生に提供して4Kコンテンツを制作してもらう。この映像をぷららや映像の専門家が評価して優秀作を集めたコンテストを実施。特に優れたクリエーターには「ひかりTVドリーム」と呼ばれるクラウドファンディングで映像制作の支援を行って、最終的にはひかりTVでの配信も行う。すでにHAL大阪・名古屋・東京と提携が決まっており、機材の調達を進めているところだという。
同時に、映像の新技術「HDR」や音の新技術「MPEG-4 ALS」の導入も検討する。明部と暗部をより忠実に再現できるHDRでは、今後対応テレビとコンテンツの動向を見据えながら検討。
MPEG-4 ALSは、これまで圧縮で捨てられていた高音域が再現できるようになり、よりリアルで臨場感のあるサウンドを提供できる。
今年は、米映像配信大手Netflixが参入する予定で、板東社長は「脅威であることはまちがいない」と危機感を見せつつ、「映像だけで勝負するつもりはない」として、音楽や電子書籍の配信、ショッピングなどの総合サービスで対抗していく。また、米国のやり方が日本でも通じるかどうか、といった面もあり、動向を見守っていく。Netflixの参入で市場が活性化することも期待する。
NTTぷららは、会社設立から今年で20年という節目の年にあたる。板東社長は「新たな形でいろんなものをリスタートしたい」と意欲を語り、さまざまな施策を打ち出して会員拡大を図っていきたい考えだ。