中国では、近年、経済成長に伴なう所得の増加や、生活水準が向上し平均寿命が延びたことによる高齢化の進展、ライフスタイルの変化で糖尿病などの生活習慣病が増加したことなどにより、医療費が増加しており、ヘルスケア(医療)市場も急成長しています。
医療へのニーズが拡大する一方、中国では「看病難、看病貴」(医療機関にかかることが難しく、その費用も高い)といわれる社会問題が生じており、その対応として政府は、国民皆保険制度の実現を進めるとともに、医療機関の整備や高度化、民間・外国資本の医療への参入規制緩和などで、医療へのアクセスを改善する政策を打ち出しています。また、新たな産業育成の観点から、バイオ医薬品や中国医学(漢方薬)の育成・支援なども掲げています。特にバイオ産業は重点分野とされ、複数の国家バイオ産業基地が建設されているほか、3月に米製薬大手と中国のバイオ医薬品会社が提携するなど、取り組みが進んでいます。
一方、政府は増加する医療費を抑制するため、国家基本薬品制度を創設し、一般大衆に必要と判断した医薬品をリストアップして指導価格を示し、公開入札することで薬価の引き下げを図っています。そのため、一部の薬価が大幅に値下がりするなど、医薬品メーカーの価格競争は厳しくなっており、6,000以上あるとされる国内医薬品メーカーの競争力強化に向けた再編につながる可能性も指摘されており、今後の動向が注目されます。