総選挙を前に揺らぐトルコ・リラ~景気は底打ちから改善へ~
トルコ・リラは、エルドアン大統領が利下げ要求を控えたことや米早期利上げ観測の後退などを背景に3月にやや持ち直したものの、4月に入って再び売られ、足元では対米ドルで史上最安値を更新しました。これは、6月7日のトルコの総選挙が近づき、政策面での先行き不透明感への懸念が強まっているためと考えられます。
世論調査での高支持率などから、与党・公正発展党(AKP)は総選挙後も単独政権を維持する見通しです。ただし、これまで経済政策を仕切ってきただけでなく、中央銀行の独立性を支持するなど、市場で信認の厚いババジャン副首相が4選を禁じる同党の内規に従って出馬せず、退任する可能性があります。また、同氏が退任すれば、中央銀行のバシュチュ総裁が2016年の任期満了を待たずに辞任するのではないかとの見方もあることなどから、市場では経済・金融政策面での先行きが懸念されている模様です。
エルドアン大統領は、大統領職の権限強化に向けて憲法改正を目指しています。今回の総選挙で、AKPの議席数(現在313)が330(定数の5分の3)以上に増えれば、憲法改正の是非を問う国民投票の実施が可能となります。一方、330を下回れば、国民投票の実施には他党の協力が不可欠となり、大統領の目標実現の可能性は著しく低下します。