MacとiPadの悦楽生活50 #EtsuMac50 - 17 MacBookのキーボードを試す
MacBookを試し初めて10日がたちました。軽くなった920gのMacBookは、どこまででも持ち運んで行けそうな、そんな気分になってしまいます。天候不順の4月の東京、ばっちりと防水が施されたサンフランシスコ製のバックパックには小さすぎるグレーの板は、しっかりと活躍してくれています。
この期間に書いている原稿のほぼすべてはMacBookの本体のキーボードを叩いています。パフォーマンスにも問題がなく、レインボーカーソルに見舞われることもありません。まあ、仕事柄、普段はそんなに負荷のかかる作業をしていないことも挙げられます。こうして原稿を書いている最中、パームレストやキーボードの指先から熱を感じることもありません。
あと、バッテリー残量89%で、残り時間11時間39分、っていうの、やめてもらえませんかね。
前回から何度も言っていますが、そんなに筆者のスタミナはありません。今回は、長時間仕事を続ける上で、目に並んで重要な要素である指先の話です。
お題
【MacBookのキーボードは打ちやすいのか?】
解決策
→コツはなでるように
●MacBookのキーボードは叩くな、なでろ
○新しいメカニズムとほとんどないタッチ
MacBookで賛否両論の新しいキーボード。薄型化を極めるため、しかし打ちやすさを作り出すため、新しいメカニズムを採用しているそうです。Appleによると、新しいキーボードの構造はバタフライ方式。これまでのシザー式に比べて揺らぎが少なく、薄い構造を実現できるとのこと。またキーのどこを押してもきちんと認識されることから、キートップの面積を大きくできるというメリットもあります。
キーの安定性について一番分かりやすいのはスペースキー。
これまでのキーを押さずに前後に揺すってみると意外と動くことに気づきます。まあ、今までやったことがなかったので知らなかったのですが。しかし新キーボードでは、この揺らぎがほとんどありません。ただ、このことはもう一つの特徴であるキーの浅さから来ているようにも思いますが、その話は後から、ということで。
キートップが大きくなることは、おそらく少しラフなポジショニングでのタイピングでも、きちんとズレずにタイピングできる、というメリットがあるかもしれません。もっとも、文章を書く仕事をしている身からすると、ミスタイプを減らすことは文章を気持ちよくキーボードから書いていく作業には不可欠なことだし、仕事の効率にも関わります。キートップがちょっと小さいからといってミスするようではダメなわけで、個人的には、キートップが大きくなることは、さほど使い勝手に左右しない、というところが本音です。
○叩くな、なでろ
これもいろいろな場所で指摘してきたことではありますが、キーボードのような接触時間の長い、やや複雑なインターフェイスはおそらく、慣れたモノが一番使いやすくなっていく、という性質があると思います。
現状、iMacなどに付属してくるAppleのキーボード、MacBook Air/MacBook Proに搭載されているキーボードは非常に近いタッチであることから、割と素直に移行することができるのではないか、と思います。
特に、MacBook Airを使っていて、性能面でステップアップしたい、とMacBook Proに移っても、剛性感やキーボード面の傾斜の違いはあれど、さほど大きな違和感を覚えないのではないか、と思います。ただ1点、その傾斜とエッジのせいで、MacBook Proを長時間使っていると、手首よりやや肘に近い部分にスジがついてしまうのですが。そういう「タッチの共通点」からすると、MacBookのキーボードはこれまでにないものでした。MacBook Airなどの既存のキーボードは、「薄いけれど打鍵感がある」というラインだったのですが、MacBookのキーボードは「打鍵感は指先の振動だけ」というと言いすぎでしょうか。そのため、今までみたいにキーを押し下げるつもりで指先に力を込めると、すぐに底打ちしてしまい、その力が必要以上のものだったことを伝えてくれます。
もっと柔らかに、もっと力を抜いて。今までのキーボードの感覚からすれば、「叩くな、なでろ」という意識で触れると、ちょうど良い力加減になってきます。
このコツをつかみ始めると、新しいキーボードへの慣れは加速度的に進んでいきます。慣れる時間は、さほどかからないのではないか、というのが現状の評価です。
●打鍵するときの音はより静かに
○触れるときの感触が楽しめるようになる
なでるように力を抜いて指を早く動かす。
そんな感覚でMacBookのキーボードに馴染んでいくと、なでているのに指先にフィードバックが打鍵感として返ってくるという勘所をつかむことができます。すると、もちろん指の移動距離も短くなりますが、それ以上に打鍵するときの音が静かになっていくことに気づかされます。
慣れないうちはつい力をかけ過ぎてしまい、ついつい「パチパチ」という音を鳴らせながらのタイピングになってしまいます。「キーを叩いている」という意識は存分に味わうことができますが、キーを押し下げても指して戻る力が強くないため、あまりテンポ良いタイピングができません。だんだん力を抜いていくと、そのパチパチ音が軽減されていき、前述の指先へのフィードバックに意識が向いていきます。
すると、そのフィードバックを得て次の打鍵に進んでいくようになり、スムーズさが増していくのです。
今までのタイピングがスタッカート(跳ねるように演奏)だとすれば、MacBookのキーボードはスラー(滑らかに)という感覚と言うべきでしょうか。
あれ、割ともう、このキーボードが大好きな自分がいることに気づかされます。滑らかに、優雅に。なかなか良いじゃないですか。今後、このキーボードが他のモデルにも波及するかもしれませんが、個人的には大歓迎です。
松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。
インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura