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ライゾマティクス・齋藤氏が語る、次に"来る"テクノロジーと"温度のある"メディアアート-六本木アートナイト2015

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ライゾマティクス・齋藤氏が語る、次に"来る"テクノロジーと"温度のある"メディアアート-六本木アートナイト2015
●六本木アートナイト2015は2020に向けての「練習」
本日4月25日から26日にかけて、東京都・六本木エリアにて夜通しで"一夜限りのアートの祭典"「六本木アートナイト2015」が開催される。2009年から開催され、春の大規模イベントとしての認知度も高まってきているが、今年度は新設された「メディアアートディレクター」にライゾマティクス・齋藤精一氏が就任したことが大きなトピックとして挙げられる。

アーティスト側から見たイベントのディレクションということであれば、2013年から「アーティスティックディレクター」を日比野克彦氏が務めており、今年も齋藤氏とのタッグでこの催しを作り上げてきたという。ゲストアーティストとして招聘するのではなく、なぜ今、新たな役職を作るなどして「メディアアート」にこれだけ注力したのだろうか。

今回は、「メディアアートディレクター」に就き、メインプログラムの制作など「六本木アートナイト1回目」の準備を体験したライゾマティクス・齋藤精一氏に、「六本木アートナイト」参加によって見えてきたことや、テクノロジーを用いたアートへの取り組みについて、お話を伺った。

――今回の六本木アートナイトでは、例年と異なり「メディアアート」がフィーチャーされ、「メディアアートディレクター」という役職も新設されました。今回、この役職をお引き受けになった理由を教えていただけないでしょうか?

まず、六本木アートナイトでは、これまでもメディアアートの出展はありましたが、どちらかというとパフォーミングアーツなどを含めた現代美術的な手法が多かったと思います。そして、「メディアアート」というのは、アートと人、人と人、あるいは街と人をつなげたりするのが得意な表現というか「手法」です。
2020年(東京オリンピック・パラリンピック)が決まった後の「六本木アートナイト」の開催とあって、そうした作用のために積極的にテクノロジーアート=メディアアートを入れていこうということで新設されたと思っています。

参加に際して、2020年、あるいはその先に向けて、どのようなアートを介した街の作り方や表現の仕方ができるのか、というところを考えています。今回の「六本木アートナイト2015」はいわば「練習」の第1回だと思っているので。僕が(メディアアートディレクターとして)入ったことで、実証実験みたいなことをしていきたいというのが、「メディアアートディレクター」新設の狙いだと感じています。

――今年度に限らず、もっと長い目でアートと街、そして人を見すえていらっしゃるのですね。続いて、今回手がけられたメイン作品の「アートトラック」についてお聞かせください。2台ともインタラクティブな仕掛けが盛り込まれていますが、なぜトラックという形を取ったのでしょうか?

六本木アートナイトは、六本木ヒルズ、東京ミッドタウン、国立新美術館という3拠点の美術館を、明け方まで開けてみようという試みで発足したものなので、まず3拠点を結ぶことを考え、そのためにはモビリティというか、移動できるものが必要だと思い、トラックを選びました。

また、今回の開催テーマ(ハルはアケボノ ひかル つながル さんかすル)を決定するにあたり、「ひかル・つながル・さんかすル」という3つのワードがまず最初に出ていました。
我々ライゾマティクスの作品は暗いところで見せる物が多いので、夜間に展開する光る参加型作品であれば大得意だと思ったのがひとつあります。

それから、街の中に何があったら面白いかな、と考えました。今回は、難しい文脈を踏まえたアートを作るというよりは、とっつきやすくて楽しく、知らないうちにお祭りのように参加したくなるようなことができないかなと思ったんです。誰が見ても「今日は何か変わったことをやっている」、「面白い」という感情を持ってもらえるような作品を目指して、今回は枕草子から名前をとった「ハル号」、「アケボノ号」といったふたつのトラックを作りました。

「アケボノ号」は3拠点を移動し、「ハル号」は東京ミッドタウンに常駐します。ハル号では事前に集めたデータの表示のほか、当日のリアルタイムの変化、たとえば「六本木の色は今何色だろう」というところも知ることができます。

――「アートトラック」について、事前に六本木の「人格」を形成するデータ収集を特設サイトで行うなど、ライゾマティクスらしい手法も見られましたが、実際に拝見すると、少しアナログ感を残したたたずまいだと感じました。あえてこのようなデザインにした理由は?

昔から弊社ではテクノロジーを用いたさまざまな表現を行っていますが、「温度のあるテクノロジー」というような使い方が好きなんですね。
テクノロジーを使った表現に温かさや人格があるというか。

今回も、裏ではデータ収集や同期、データマイニングをして、サーバの構築など難しいことをたくさん行っているのですが、表現については今回できるだけ敷居を下げて、どなたが見ても「あ!ミラーボール!」と言ってもらえるような見栄えにした、という感じです。

――インターフェースは優しいですが、仕掛けはいつもどおりのライゾマティクス、というところでしょうか。

はい、そんなところです。

●「次に来る」テクノロジーとアートナイトの夜明けの先
――これまで、さまざまな作品でドローンやプロジェクションマッピングなどの先端技術をこれまで用いてこられましたが、齋藤さんが「次に来る」とお感じになっているものはなにかありますか?

そうですね、プロジェクションマッピングひとつ取っても、僕たちがきゃりーぱみゅぱみゅの演出(KDDI)を行った時期とは、かなり見られ方が変わってきていますね。IoT(Internet of Things/さまざまなモノをインターネットによって接続することによって生まれたシステム)といったキーワードをはじめ、さまざまな側面が語られていますが、単にアナログなモノをデジタルにするだけで、かなり面白くなると思っています。最近弊社が手がけた例としては、NIKEと行った全面LEDのバスケットコートがあります。今までメディアではなかったところにあえてメディアを埋め込むことで、教育的な視点やエンターテインメント的な視点など、多様な見方による面白さが出てきます。


ドローンのような新しいテクノロジーをどんどん進化させるというよりは、既存のテクノロジーをどのように組み合わせると新しいモノができるか、というのが僕の中では今すごく興味のあるところですね。これまでそれが無かったところに、LEDや映像を仕込んでみるなど、ですね。

今回、六本木アートナイトには老若男女いろんな方がに参加されると思います。だからこそ面白いと感じていて、あまりテクノロジーを全面に押し出したエッジの立ったものではなくて、先ほど申し上げたように誰が見ても楽しめるエンターテインメントよりのメディアアートコンテンツを作った、というような感じですね。

――最後にひとつお伺いします。今回の六本木アートナイト2015への取り組みによって、2020年(東京オリンピック・パラリンピック)を視野に入れ、アートを介して人々とアートを交わらせ、参加する行為を促していくという意気込みを感じました。「六本木アートナイト2015」の「夜明け」の向こうに、どのような視野を持っていらっしゃるか、お教えください。

アートでまちづくりをしていこうと思うと、出てくる課題がたくさんあると思うんです。
例えば、道交法が現行のままでは難しい表現や、景観条例的にも厳しいものだとか、区ではいいけれど、都ではダメと言われてしまうことだとか。そういうところを「六本木アートナイト」や、あるいは都市規模のプロジェクトで浮き彫りにできればいいなと思っています。

そして、僕にとっての六本木アートナイト"1回目"を経験して、いろいろと課題が見えてきました。(今見えている以外の課題も)まだまだたくさんあると思います。それを糧に、2020年までに法律などをできるだけ改善して、表現しやすい都市作りを行っていければと思っています。

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