くらし情報『このコマに描かれているのは昭和19年4月17日 -『この世界の片隅に』片渕須直監督と原作者・こうの史代の真剣勝負』

このコマに描かれているのは昭和19年4月17日 -『この世界の片隅に』片渕須直監督と原作者・こうの史代の真剣勝負

膨大な資料をグーグルアースと照らしあわせて角度まで検証するような、地道な作業と検証を、片渕監督はほぼ全てのコマに対して行っているのだ。漫画のコマに描きこまれたわずかな情報を元に、原爆により失われた風景を再現していく過程はまさに執念。こうした作業を、片渕監督は原作者・こうの氏と対面する前にほとんど済ませていたというから驚きだ。

しかし、話題に原作者・こうの氏が登場することで、聞いている側に別の疑問が浮かぶ。戦前戦中を実体験したわけではないこうの氏が作画した漫画と、歴史資料を照らしあわせて再現するという行為が何故成立するのか。それは、原作者のこうの氏もまた、圧倒的な量と調査と研究に基づいた作画を行っているのだ。

劇中で、主人公・すずが、ヨーヨーで遊んでいる子供を横目で見る(だけの)コマがある。片渕監督が調べると、すずのこども時代・昭和8年~9年には空前のヨーヨーブームが起こっていたことがわかる。
当時の写真や映画の映像からヨーヨーブームの過熱がわかると、そんな憧れのヨーヨーで遊んでいる子供とすずの生活環境の違いや、すずの内心に想いを巡らせる余地が出てくる。だが、漫画ではそんな言葉はもちろん、それらしき表現は一切出てこない! 一事が万事この調子で、すずが「20銭で何を買えるか」

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