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大学デビューの落とし穴 (3) 5月:閉じるなキケン! 自分の居場所を複数化しよう

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大学デビューの落とし穴 (3) 5月:閉じるなキケン! 自分の居場所を複数化しよう
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大学1年生のみなさん! 「大学デビューのホントのところ」、知りたくないですか? 本連載は、かつて大学デビューに半分成功・半分失敗したトミヤマユキコ(ライター・大学講師)と清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)が、過去の失敗を踏まえ、時に己の黒歴史を披露しながら、辛く苦しい学生生活を送らないためのちょっとした知恵をお授けする。そんな連載です。
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○いつのまにか退学への道を……

5月と言えばゴールデンウィーク。サークルのイベントや合宿に参加したり、クラスの友だちと出かけたりと、新しい人間関係を構築するために遊びまくった人も多いのでは。

そして5月と言えば五月病。新生活に浮き足立つ1年生のテンションについてゆけず、相変わらず高校時代の仲間とつるんだり、慣れない東京に疲れてひとり暮らしのアパートに引きこもっていた人もいそうですね。緊張の糸が切れて体調を崩す人が多いのもこの頃。みんな気をつけて!

どんなGWを過ごした人にも平等にやってくるのがいわゆる"中だるみ"。
「なんか、授業出たくないなー」というやつです。明らかにつまらない授業だから切るとか、思っていた授業内容じゃないから切るのは、仕方がないというか、同情の余地がありますが、キケンなのは、特にこれといった理由もないのに授業をサボるパターン。

いいですか! 自分の怠け癖を舐めてはいけませんよ! いつの間にか出席しない授業がどんどん増え、ヘタすると進級できなくなる危険性があります。放っておくと重篤化する病気みたいなものです。

勉強ができないわけでもないのに留年する人、そのまま失速して退学まで行っちゃう人、先生は何人も見ています! 彼らは死にたいくらい大学生活が辛かったんじゃないんです。気づいたら引き返せないぐらい授業に出なくなっていただけなんです。

○気づいた時には浦島太郎に

実はわたしも結構あぶなかったんですよね。1年生の5月は、法学部の授業よりサークルが楽しくて部室に入り浸っていました。
バンドサークルだったのですが、半分プロみたいな活動をしている人もいて、なんだか都会的でオシャレだった。下北沢に憧れるサブカル女だったこともあり(詳しくは連載第1回をご参照ください)、サークルの人たちと一緒にいると、なんだか芸能人と知り合いになったみたいな高揚感がありました。部室=魔窟。わたしには、竜宮城から帰ってきてものすごいおじいさんになっちゃった浦島太郎の気持ちがよく分かる。もう日常やだ。ずっと非日常でいい。

それでもどうにか学生の本分を忘れずにいられたのは、その魔窟に同じ学部、同じ授業を履修する友だちがいたからです。「さすがに今日の授業は出とくか……」「そうだね……」と言い合える人がいた。
「ずっと部室にいたい!」と叫びながら、ゾンビみたいに這って授業に出ていました。

○高確率で別れる"閉じたカップル"

わたしはサークルにハマってしまったタイプですが、上京組のカップルもかなり危うい。はじめての都会、はじめてのひとり暮らし、はじめての恋人……楽しいことが多すぎる。恋人のアパートに入り浸り、授業に出て来ない人が最もヤバいのですが、授業に出てきても「ふたりの世界」って感じで、周りが見えていないのもヤバいです。

1年生ならではの不安や孤独を恋愛で埋めようとするカップルは、その後、高確率で別れます……。いまラブラブの人、ホントのこと言ってごめんね……。でも、大学とは素敵な恋人がいる人よりもいろんな友だちがいる人の方が眩しく見える場所なので「うわー! 1年から恋愛なんてしてる場合じゃなかったー! どうせするなら2年からで良かったー!」みたいな気持ちになるのは避けられない。

なんにせよ、自分にとっての心地よさを追求するあまり「閉じた環境」にばかりいると、その後の学生生活がちょっとずつ不自由になっていきます。
そしていったん閉じた環境を再び開かせるのは、しんどい。

○自分の居場所を複数化する

だとすればやることはひとつ。最初から自分の居場所を複数化しておくと良いのです。ちょいちょい顔を出せるサークル、目が合えば挨拶をする人がいる教室、グループワークや発表があり人と関わらざるを得ない授業……そういう場所の中に「居ても辛くないな」と思える場所があったら、ぜひ大事にしてください。同時に、図書館や学食など、ひとりで過ごすことが楽しい場所の開拓もしてください。孤独を飼い慣らす技術も身につけておいて損はない。

とにかく、大学空間内にお気に入りの場所を複数作っておくことが肝要です。それさえやっておけば、とりあえず大学に来る習慣ができ、大学に来ることができれば、どうにか退学は避けられます。


自分の居場所の複数化に関しては、もうひとつオススメがあります。それは、おもしろい授業を教えて貰うこと。

わたしはサークルの部室に入り浸りながらも、その情報収集だけは何故かしていたんですね。そして、実際に聴講に行ったりしました(本来出るべき授業をサボって聴講していたので別に偉くはない)。

他学部の授業、全然知らない学問領域の授業でも気にせず聴講しに行きました。大人数講義はそーっと潜っていましたが、少人数のゼミなどでは先生に許可も取らなきゃいけないし、みんなの前で自己紹介もしないといけない。面倒臭いのですが「他学部から見学者がやってきたぞ」というので、全く新しい人間関係が生まれたりもする。

そんなことをやっているうちに、この世で一番おもしろいのはサークルの部室だと思っていた自分の視野狭窄が少しずつ改善されていきました。
部室もいいけど授業もね。法学もいいけど文学もね。そんな気持ちになってきたんですね。まあ、そんな気持ちになりすぎて、法学部から文学部の大学院に進んじゃったんですけど。

5月の中だるみを利用していろんな授業を聴講したことで、大学空間に身を置くことの面白さを学べたのかなと、今はそう思っています。5月の中だるみにお悩みのみなさん、勉強が好きじゃなくても、コミュ障でも、デートやバイトといった学外活動が死ぬほど楽しくても、出来る範囲でやるのです。「閉じるなキケン!」の精神で、居場所の複数化に取り組みましょう。

トミヤマユキコ
ライター・大学講師。
「週刊朝日」「文學界」でブックレビュー、「ESSE」「タバブックス」でコミックレビューの連載を持つライター。早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持っている。「パンケーキは肉だ」を合い言葉に、年間200食を食べ歩き『パンケーキ・ノート』(リトルモア)にまとめた。
Twitter @tomicatomica

清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける"恋バナ収集ユニット"「桃山商事」代表。男女のすれ違いを考えるPodcast番組『二軍ラジオ』を更新中。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」「messy」などでコラムを連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』
(原書房)がある。
Twitter @momoyama_radio

(イラスト:谷口菜津子)

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