【LiveWorx 2015】「飛行機の搭乗券が使えたところで何なんだ」 - 米Apple共同創業者のスティーブ・ウォズニアックが語るApple Watch
PTC傘下のIoTプラットフォームベンダーである米ThingWorxのIoTカンファレンス「LiveWorx 2015」が5月5日(現地時間)にスタートした。LiveWorxの来場者数は、2014年の350名から7倍弱となる2300名を記録している。
カンファレンスに先駆けて、ボストン大学のEngineering Product Innovation CenterでIoTハッカソンを2日、3日に開催。アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック氏がプレゼンターとして参加しており、参加者はThingWorxのIoTプラットフォームを活用して、社会の課題解決に繋がるアプリケーションの開発を行った。
5日には、ウォズニアック氏がIoTハッカソンの最終結果を発表。参加者は、スマート農業とスマートシティ、アクセシビリティ(障害者などが支障なくサービスを利用できるようにする取り組み)の3つのテーマを選んで挑戦し、今回のハッカソンでは障害者でも問題なく利用できるスマートなストリート標識が最優秀賞に選ばれた。このチームには1万ドルが贈られる。
○プラットフォーム開発の重要性とは
ハッカソンの結果発表の前に行われたトークセッションでは、共に米Appleを創ったスティーブ・ジョブス氏などとの思い出話を語った。
ウォズニアック氏は、HPで計算機の設計を行っており、「何か自分独自で新しいものを作れないか」という思いでパーソナルなコンピューターの制作に取り掛かったのだという。それが、後のApple IIやMac、iPod、iPhoneへと続くAppleの源流になるのだが、これはひとえに「プラットフォームという考え方」が功を奏したとウォズニアック氏は話す。
これは、IoTプラットフォームベンダーの米ThingWorxへのはなむけの言葉でもあるのだが、「当時はタイプライターなど様々な機械があったが、スマートテクノロジーというものを目指して、ハードウェアやセンサー、データ分析、プログラム開発、表計算など、コンピューターで様々な機能が利用できるようになった。表計算ソフトが出てきた時は、メインフレームよりも価値があるとようやく認めてもらえた」と、自身の苦労話を交えて、その理念の重要性を強調する。「プラットフォームを開発することがキーになる。最初は趣味で始めた開発だったから、破壊的なイノベーションは起きなかった。破壊的なイノベーションというものは、最初はなかなか理解されない。それは、何十年も普及に時間がかかった映画や新聞などを見てもわかるだろう」(ウォズニアック氏)
○Apple Watchのメリットは?
最近のITのトピック、とりわけ古巣のAppleでは、発売されたばかりのApple Watchが今一番ホットといってもいい。
これについて尋ねられたウォズニアック氏は「最近は色んなアプリを試してくれと言われたり、Apple製品もよく試すよ」と語りつつ、「Apple Payや飛行機の搭乗券がWatchで使えたところでどうなんだと思った」と発売前に抱いた正直な感想を口にする。
理由としては、いわゆる時計型のウェアラブルデバイスをいくつも保有しており、それと機能的に大差ないApple Watchでは何も変わらないのではという思いを抱いたようだ。
ただ、「音楽にも言えることだけど、実際に曲を自分で聞いてみないと、その曲がいいかどうかは判断を下せない。実際にApple Watchを使ってどう思うかが重要だ」とも話す。具体的な明言は避けたものの、人それぞれが自分でApple Watchに触れることで、製品の本質に何を求めるかを(直感で)感じてほしいというメッセージを送ったようだ。
●次世代のエンジニアに伝えたいこと
ハッカソンで審査員を務めたウォズニアック氏はエンジニアへ、どのように仕事に取り組むべきかを、自身の経験を交えて話す。
「自分たちの世代では、子供時代に学校でコンピューターなど学ぶ環境がなかった。まだまだアナログの時代で、無線もろくに普及していなかった。
そんな中で、0と1を組み合わせるデジタルの"ロジックゲーム"に夢中になった。高度な数学じゃなくて、この単純なゲームが面白いと思ったんだ。
ハードウェアやソフトウェア、どちらも論理的な考え方が好きだった。私の父はロッキード・マーティンで働いていたが、ロケットを飛ばす宇宙用の半導体は非常に高価なものだった。こうした環境の中で、コンピューターのアーキテクチャの魅力に気づいた。
自分が見たものを実際に何か有益なことに使えないかと思って、コンピューターのパーツを試行錯誤して設計した。どんどんパーツを変えていったんだよ! 本当に好きで仕方なかったんだ。
当時は、コンピューターのエンジニアという道があるなんて思っていなかったけど、大学院でコンピューターの講義を取ろうと思ったんだ。
ただ、大学院ですら初歩的な文字を打ち込むようなクラスしか存在しなかった。もちろん成績はAだったよ(笑)。
のちにApple IIを作った時も、色んな人に、設計や回路図からソフトウェアの魅力を全て自分たちの手で作れるという魅力をまとめて伝えたかった思いがあるんだ。今は色んな物にトライできる環境が揃っている。自分自身の興味を発見することが重要だよ。
私はエンジニアとして今でも仕事をしている夢を毎日20時間も見ている(笑)。目が覚めたら設計して、発明にいそしんでいる。ものを作ることが本当に好きなんだ」(ウォズニアック氏)