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菅田将暉、ストイックな役作りの本音「褒められることが壁になった」「ネットのダメ出しも大事」

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菅田将暉、ストイックな役作りの本音「褒められることが壁になった」「ネットのダメ出しも大事」
●事前準備ができない作品の恐怖
能年玲奈が主演を務めた『海月姫』では女装男子役のために筋肉を落として骨盤矯正を行ったり、『暗殺教室』では赤羽業の赤髪を再現するために何度も美容院に通ったり。出演するごとにストイックな役作りが話題になる俳優・菅田将暉だが、容姿や肉体的な変化は「自分を安心させるため」と捉え、「いくらでもやれます」とあっさりと答える。

そんな菅田が「最も憧れて恐れていた」という作品に挑んだ。数々のコメディを手がけてきた鬼才・福田雄一が監督と脚本を務めた映画『明鳥』(5月16日公開)。菅田は1,000万円の借金の返済期限が迫ったホスト・ナオキを演じ、彼の周りではムロツヨシや佐藤二朗といった福田組常連の俳優たちがアドリブ混じりに怪演を繰り広げる。

大阪出身でお笑い好き。参加を熱望していた福田組の中で主演を任せられた菅田は、監督の指示通り「幹」となり、事前準備が不可能な「受け」の演技で古典落語をベースにした物語を輝かせていく。しかし、なぜそこまで恐れていたのか? 高校時代とのギャップ、そこから進化した俯瞰主義とエゴサーチ……答えを探る中で、いくつかのヒントと共に俳優としての魅力が見えてきた。


――ブログにも「素晴らしい特等席でムロツヨシさん、佐藤二朗さんら福田組の怪物方に毎日ただただ爆笑したいという夢が叶いました」と書かれていた念願の作品。「特等席」からの眺めはいかがでしたか?

すごかったです。よく形容される言葉で申し訳ないんですけど、まさに「福田組の風神雷神」。少しでも絡んでいるシーンがあると、僕にとっては子どもの頃に仮面ライダーやウルトラマンを見ていた時のような高揚感がありました。芝居上では「無視」がいいんでしょうけど、急に「客」にさせられてしまいます。あれは悔しいと同時に、先輩のお芝居を潰してしまって役者として申し訳ないという反省もあります。この映画をいちばん楽しんで観ているのはたぶん僕なのかもしれません。何回か吹いてNGになったこともありましたし。
本当にすごい……これを思い出にあと5、6年は生きていけそうです(笑)。

――周囲ではアドリブが繰り広げられる一方、菅田さんは主演という立場上、「幹」となることが求められていたと聞きました。福田監督からは「あまり遊べないかも」と。僕にとっては「遊ぶ」なんてもってのほか。福田組で遊べるような人間じゃないです。だから、監督がおっしゃっていた「幹だから遊べない」というのはすごく共感できます。主演が「幹」にならないと周りが面白くない。だからこそ、主演は不安になるんだと思います。
でも、役割をもらえた感じがして、僕としてはありがたかったですね。あの(アフロの)ヅラをかぶってスーツを着て、ただただ「どうやってお金を返そうか」と考えている。そして、常に周囲に不信感があって。ハラハラしましたか? それは言われていちばんうれしい言葉です。

――今後、福田組の脇役で起用されたら?

LINEで福田さんとそんなやりとりをしたんですけど、どうでしょうね……。正直、この作品も怖かったので、「できる」「できない」ではなく、「やるしかない」と。一番怖かったのは、「自分が面白いと感じてもらえるかどうか」「いただいた本の面白さを僕が超えられるか」でした。福田さんの作品は大好きなので、自分の中でのハードルがだいぶ高かったと思うんです。
それでも完成した作品を観た時は「やっぱり面白いなぁ」と。

本よりも面白くすることが僕の使命。6日間という短期間で撮ったので、より役者の力量が試される状況でした。そしてナオキは周囲が仕掛けてくるものに対して、素直に反応していく役。事前に準備できることが何もないのでそこも怖かったですね。

――ほかの作品でも同様のプレッシャーはあるんですか?

普段は「やってやろう!」「尖ってやる!」「何かを残してやる!」という気持ちもあるんですが、今回の作品に関してはまずそれをまず捨てようと思いました。自分の欲を一切出したらダメだと。

●「何もしていないのに"トロフィー"」がコンプレックス

――最近は『海月姫』の女装男子役で役作りが話題になりましたが、事前に準備ができるというのはそういうことですね。


あれは肉体的な条件ですからね。いくらでもやれます。

――役者としてストイックに役作りできる方が安心な面もありますか。

そうですね。なんでやるかというと、自分を安心させるためですから。自己満足です(笑)。これだけやれば、現場に素直に立てるだろうという「自分」を手に入れるため。だから、今回の作品の方が役者としてはより自分が出ますから難しいんです。


『海月姫』の時は体重50キロぐらい。誰が見ても分かるぐらい痩せたんです。その肉体にきれいにメイクをしてもらった姿を見せれば、どんな芝居をしようとも褒めてもらえることが壁にはなりました。でも、男性が女性並みに細くなったら、誰だって評価すると思います。ただ、そこからが僕としてはスタートなんです。

――ネットでも話題になっていましたよ。

あれでヤフーのトップに載った時は、「日本は大丈夫なのか」と心配になりました(笑)。自分のそんなことに興味を持ってもらえてうれしかったです。
世の中にニュースとして受け止めていただいてありがたかったです。

――ネットニュースをご覧になっているんですね。

自分の記事も見ます(笑)。検索することももちろんあります。良いことだけでなく、悪いことも書かれているからイラッとしてしまうこともある。でも、それが面白いんですよね。劇場に行って、全員のお客さんの反応を聞くことはできないので、あれは良い手段だと思います。

作品が世の中に出たら自分の仕事は「終わり」としたい気持ちもありますが、そうもいきません。ブログにコメントをくださるファンの方々の声ももちろん糧にはなりますが、ダメ出しをしてくださる方の意見も僕にとっては大事なんです。

――「自分がどう思われているのか」や「ファンの存在を意識」などは、いつごろから考えるようになったのでしょうか。

ずっと、気にしてきました。もともと、そういうことが気になってしまう人間なんです。「いかに周りと調和をとるか」を気にしていたタイプだったので。

――デビュー前の高校時代、注目されることをあまり快く思わなかったと聞きました。今の職業とかなりギャップがあるエピソードですよね。

自分でも本当にそう思います(笑)。何もしていないのに”トロフィー”はもらいたくなかったんです。自分がちゃんと好きなことを作って、見せられればそれでいい。でも、本当は自分のアイデンティティは人にアピールしていきたいもので、評価してもらえたり作品として残していきたいものだったりするんですけど、それとは違う視点で注目されるのは嫌だったんです。そこはコンプレックスでしたね。

でも、当時とくらべて今は卑屈じゃないので(笑)。もっと寛大な気持ちになっていて、笑顔でこっちを向いてくれる人には笑顔でいこうと思えるようになって。自分でも大人になったと思います。――ブログを拝見したところ、かつて福田監督の舞台をご覧になったことが書かれていて、そこには「ごっつええ感じ見て以来の衝撃」「人を笑わせるってすげーわ」と。お笑いに対する熱い気持ちがあふれている文章だと感じました。

いいこと書いてますね(笑)。お笑い大好きなんです。小さい頃から好きでしたけど、特に思いが強くなったのは大阪から上京して一人暮らしをはじめてからですね。休みの日は、家でずっと動画サイトを観ています。

面白い人は本当に尊敬します。芸人さんのすごいところは、演技をやりとおすことは役者と一緒なんですが、常に観客の反応を意識しないといけない。それが役者との大きな違いだと思います。これは僕の個人的な思いですけど、役者はどう見られていようが関係なく物語の役を演じればいい。それを監督がどう撮っていくかが大事だと考えています。

でも、芸人さんはシチュエーションや本、服から照明に至るまで。マジックのようなもので、お客さんは知らず知らずのうちに、芸人さん側に寄らされていると思うんです。あれはすごいです。そういう精密に作られているお笑いも好きだし、無計画も好き。ダウンタウンさんがすごいのは、あの方々は本番中に笑うところ。自分が耐え切れなくなるくらい面白いってすごいですよね。

――芸人さんと一緒にコントをやってみたいとは?

やってみたいですけどね……真面目にやるしかないです(笑)。僕は面白いことはできませんからね。

■プロフィール
菅田将暉
1993年2月21日生まれ。大阪府出身。2009年、テレビ朝日系『仮面ライダーW』でデビュー。2013年の主演作『共喰い』で日本アカデミー賞新人賞を受賞。14年の連続テレビ小説『ごちそうさん』で多くの人に知られる存在となり、近年では『そこのみにて光輝く』(14年)、『海月姫』(14年)、『暗殺教室』(15年)などの話題作に次々と出演。現在、『ピース オブ ケイク』(15年9月6日)、『ピンクとグレー』(16年)、『二重生活』(16年)などの公開を控えている。

(C)2015「明烏」製作委員会

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