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4Kテレビとガラホの意外な関係 - 西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」

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4Kテレビとガラホの意外な関係 - 西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」
●期せずして同じ日に……
直近のニュース記事をピックアップして、「家電的な意味で」もうちょい深掘りしながら楽しい情報や役に立つ情報を付け加えていこう……という趣向で進めている当連載。今回の題材は以下の2つのニュースだ。

ソニー、Android TV搭載「4Kブラビア」ハイエンド - 55Vで42万円前後から(5月13日掲載)
ドコモ、通話機能にこだわったAndroid搭載「ARROWS ケータイ」6月中旬発売(5月13日掲載)

前者は4Kテレビ、後者は二つ折りケータイだが、共通項が一つある。OSがどちらもAndroidである、ということだ。テレビも二つ折りのフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)も、ちょっと前まで、日本のデジタル家電の象徴のような存在だった。OSも、それぞれが独自のものを採用していた。しかし今回、期せずして同じ日にAndroidをOSに採用した製品が登場した。家電のOSとして、Androidがすっかり主流になった証でもある。
テレビは「Android TV」になり、二つ折りケータイはガラケーから「ガラホ」になった。

○「アプリ対応」だけが目的じゃない?!

Androidになることで、どちらの製品もUIや使い勝手が若干変化する。設定画面はAndroidでおなじみのものになり、Android用アプリも動くようになる。ブラビアではAndroid用のゲームが動くし、ARROWS ケータイではLINEがよりスムーズに使えるようになる。

そうしたことから「アプリを使うためにOSを変える」と思われそうだ。

実際、そうした側面はある。フィーチャーフォンではスマホほど自由にLINEが使えないことが難点となっていたし、過去のデジタルテレビでは、新しい映像配信サービスに対応するのが面倒だった。そこでAndroid用アプリが流用できるようになれば、今日的なサービスを組み込むことがより容易になる。


例えば、Android TVでは、いままでの「テレビ放送」や「録画機能」「番組表」はアプリとして搭載される。従来、テレビの上にそれらの機能がくっついていた構造であったものが、Androidタブレットにテレビチューナーがのっかているような構造に近くなるわけだ。だから、動画配信サービスを使う場合にも、「動画配信用アプリに切り換える」感じに近い。ネット上で生まれるサービスに柔軟に対応するには、スマホやタブレットに近いOS構造であるほうがいいし、使い勝手も上がる。

とはいうものの、ブラビアにしろARROWS ケータイにしろ、メインの機能である「テレビ」や「電話とメール」を使っている限りは、過去の製品との差はかなり小さいものに感じられる。特にブラビアの場合、高画質化機能などは過去のテレビより進化しており、「Android TVだから劣化した、という部分はない」とソニー関係者も話している。リモコンで電源を入れれば、通常はまず、いままで通り「テレビ画面」が表示される。Androidのホーム画面に移動しないと、Androidで動いていると強く意識することはないだろう。
実際のところ、そういう風に作っているからだ。

多くの人にとって、テレビはテレビであって「タブレットっぽいもの」を使いたいわけではない。今の時期にフィーチャーフォンを選ぶ人も、スマホっぽい操作体系を求めているわけではない。だから、基本的な使い方をする場合には操作方法にあまり変化を加えず、「アプリを使う」という新しい世界に行く時に「Androidらしさが出る」ようになっている、と考えていい。

すなわちどちらの製品も、Androidを使うことが目的なのではなく、あくまで「Androidで従来型の家電を進化させた」という建て付けになっている。

●なぜ、今Androidなのか?
○従来型ではコストが合わない、スマホ基盤で作り直しが必須に

では、なぜ今Androidなのか? 答えは両者とも同じ。「コスト」だ。

家電はそれぞれ、専用のSoC(System on Chip)を使って開発される。
いままでは、フィーチャーフォンではフィーチャーフォン向けの、テレビではテレビ向けのSoCが使われていた。機能アップはそれぞれで行うのが当然でもあった。フィーチャーフォンやテレビに大きなニーズがあり、それらが独自の価値をもっていた時代は、それでも良かったし、うまくいっていたともいえる。

だが、いまや時代は変わった。

スマートフォンは年間に最低でも数億台生産される。半導体の技術開発も、それに付随するソフトウエア開発も、すべてスマートフォンを基準に進む。他の家電向けは圧倒的に不利な状況だ。

しかも、以前と異なり、「純粋な電話に近い機器」であってもSNSやリアルタイムメッセージングの機能は必要だし、「テレビという放送を受信する機器」においても、表示する映像はインターネット経由でやってくるものが増えた。
とすると、そうした新しい環境に対応できるOSを準備する必要があるが、こちらも、もはや独自に開発を続けていくのが難しくなる。

世の中には、スマホ向けに作られたモダンなOSがきちんとある。AndroidやFirefox OSなどがそれだ。そうしたものは、スマホ向けのSoCを使って効率的に動作する。ならば、製品そのものも「求められる姿や使い勝手を実現したまま」スマホの技術をベースに作るほうが有利、という結論に至る。スマホの技術が未熟な頃は、そこから「スマホとは操作性が異なる機器」を作るのが大変だったが、今はそれも可能だ。とくにGoogleは、Android 5.0以降、スマホ・タブレット以外へのAndroid応用を進めており、Android TVはその成果である。

ARROWS ケータイの中身はスマホそのもので、形が二つ折りでUIがちょっと違うだけだ。
新ブラビアは、スマホ・タブレット用SoCメーカーであるMediaTekと協業で作った「メインSoC」と、4Kの高画質化・高解像度化を担当するソニーオリジナルのLSIである「X1」を組み合わせて使っている。高画質化はX1が担当するので「ソニーのテレビ」としての独自性を保ち、Androidとしてのアプリの動作や開発の容易さはMediaTekと協業で作った「スマホライクなSoC」でカバーする構造になっている。

スマホアーキテクチャによる二つ折りケータイ(ガラホ)はKDDIからも登場しているし、今後、日本で一定の数量を占める存在になるのはまちがいない。またテレビについては、今年登場する4K製品は大半が、2K製品でも低価格モデルをのぞけば多くがスマホ由来のモダンOSになっていく。日本メーカーとして、新しい器にいままでの良さ「だけ」をどう盛りつけられるかが、商品作りのキーになってきそうだ。

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