ロケットから脱出せよ! - 「ドラゴンV2」宇宙船のちょっと変わった初飛行 (1) 宇宙飛行士の命を救う「打ち上げ中断システム」
しかし、打ち上げ直後の固体ロケット・ブースターが燃焼している段階では脱出する手段は一切なかった。1986年のスペース・シャトル「チャレンジャー」の事故は、まさにこの固体ロケット・ブースターが燃焼している段階で起きている。
帰還時には、機体側面のハッチから外に飛び出してパラシュートで降りる(つまり機体を放棄する)という脱出方法は用意されていたが、これは大気圏を再突入後に水平飛行をしている段階という、ごく限られた条件下でしか使えない方法だった。ちなみに、この脱出方法は、クリント・イーストウッドさんが監督・主演を務めた映画『スペース・カウボーイ』で描かれており、見たことのある人も多いかもしれない。
これまでの有人宇宙開発は、こうしたあまり安全ではない宇宙船と、宇宙飛行士の勇気と覚悟、そして犠牲によって創られてきた。もちろん、絶対に安全な宇宙船を造ることは不可能ではあるが、しかし今後も有人宇宙開発を継続し、いつかは他の惑星の探査や移住にまで挑もうとするのなら、少なくともこれまでより格段に安全な宇宙船は必要不可欠となる。今回初飛行したドラゴンV2が装備する脱出システムは、これまでどんな宇宙船にも採用されたことのないもので、史上最も先進的で、そしておそらく最も安全なものである。
(次回は5月20日に掲載予定です)