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大学デビューの落とし穴 (4) 5月:開けば海路の日和あり! 苦しいときの"自己開示"のススメ

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大学デビューの落とし穴 (4) 5月:開けば海路の日和あり! 苦しいときの"自己開示"のススメ
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大学1年生のみなさん! 「大学デビューのホントのところ」、知りたくないですか? 本連載は、かつて大学デビューに半分成功・半分失敗したトミヤマユキコ(ライター・大学講師)と清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)が、過去の失敗を踏まえ、時に己の黒歴史を披露しながら、辛く苦しい学生生活を送らないためのちょっとした知恵をお授けする。そんな連載です。
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○すべてが奇跡的に丁度いい季節、5月

キャンパスに爽やかな風が吹き込む5月。GW直後の気だるさも抜け、ようやく平常運行のリズムに慣れてきた頃ではないかと思います。

冬は寒さ、春は花粉、梅雨は湿気、夏は日差しと蚊、秋はもの悲しさと、この国は何かと屋外で楽しもうとする人を邪魔する要素に満ちていますが、5月はすべてが奇跡的に丁度いい季節。それだけに……大学になかなか馴染めず、孤独と不安の落とし穴にハマり込んでいる人には苦しい時期かもしれません。「大学1年の5月なんて青春の絶頂じゃないか! なのに、何で俺は毎日ブックオフに通ってるんだ!」と、私もこの季節を悶々と過ごしていた人間の一人です。

4月に欲張っていろんな授業を取ったものの、すでにサボり癖が始まっていた当時の私。
「次は出るから!」と心に言い訳をして授業をサボるものの、一回休むと次も行きづらくなる……というスパイラルにまんまと陥り、まさにトミヤマさんが言うところの「怠け癖」を完全に舐めきっておりました。

もうね、ちょっと遅刻しただけで、授業を休みたくなるんですよ。教室の前まで行くものの、ドアの小窓から中をのぞくと席がびっしり埋まってて。シーンとした中、ガラッとドアを開ければ全員がこっちを見るのではないか……。その気まずさに耐えつつ、俺はあの逆サイドの席までみんなの間をぬってたどり着かなきゃいけないの!? ……よし、休もう。

と、そういう小さなつまずきが、連鎖して連鎖していつの間にか取り戻せないくらいのビハインドになっていく……。怖いですね。恐ろしいですね。
外はこんなに天気がいいのに、俺は学費と青春をドブに捨てている! もうイヤだ!
○"美容師の卵"に心変わりした彼女

……すいません、当時のことを思い出していたら、若かりし頃の自分がよみがえってしまいました。そして2000年の5月20日(15年前の今日!)、そんな冴えない私をどん底に突き落とす事件が起こります。

1浪した私にとって、この日は20歳の誕生日。そんな記念すべき日に、つき合って2年の彼女から別れを告げられたのです。

ここは恋バナ連載じゃないので詳細は省きますが、「別に好きな人(美容師の卵!)ができたから、一緒に誕生日を祝うことはできない」というのが別れの理由でした。

ちょうどこの直前の3月まで、キムタクが美容師を演じたドラマ『ビューティフルライフ』(TBS)が大ヒットしており、世間には空前の美容師ブームが到来していました。時代の追い風を一身に受ける美容師の卵と、欲張って自滅して「大学マジでつまんねえわ」などと彼女に愚痴をこぼす私。……100対0のコールド負けです。


大学に溶け込めないし、授業はサボるし、友達はできないし、金はないし、背は低いし、服はダサいし、頭悪いし、字は汚いし、絵も描けないし、ギター弾けないし、家柄は普通だし、好きな音楽はミスチル、好きなサッカー選手は三浦知良、好きな食べ物は唐揚げとハンバーグ、概ね健康で、これといったトラウマもなし……。

失恋によって自尊心が崩壊し、平凡で何の特徴もない自分に深く絶望し、実家でふて寝ばかりしていました。

○大学生活を救った偶然の“自己開示”

しかし、意外なことに、この一件が私の大学生活を救うことになります。それまでイマイチ距離を詰められなかった語学のクラスメイトたちが、親身になって失恋話に耳を傾けてくれたのです。

私は中高6年間を男子校で過ごしたため、女子という存在にどこか恐怖心を抱いていました。なのに、こともあろうか大学で文学部のフランス語クラスに入ってしまい、そこは女子が8割という"女の園"。同じ班のよしみでお昼ご飯に混ぜてもらうものの、何をしゃべればいいのかわからない日々が続いていました。

そんな中、思わずこぼしてしまった失恋の愚痴。
すると……女子たちはキャッキャと盛り上がり始めました。「私もこないだ彼氏と別れたの」と痛みを共有してくれたり、「それは清田くんにも非があったかもね~」と冷静に経緯を分析してくれたり。しまいには「彼女の写真見たい~♡」なんてワイドショー的な関心も寄せてくれて……これを機に、みんなとの距離がグッと縮まったような気がします。トミヤマさんは「閉じるなキケン!」と言いましたが、これは居場所の問題だけでなく、心の問題にも通じることではないか。当時、私の中には「どうせ俺の失恋になんか誰も興味ないだろう」という気持ちもありました。しかし、失恋のつらさに耐えかね、つい愚痴をこぼしてしまった。それによって私は、意図せず"自己開示"をすることができたのだと思います。

プライドの高さと視野の狭さによって、自分自身を苦しめてしまう……。
それが「若さ」というものかもしれませんが、ダサくても、みっともなくても、つらいときは思い切ってつらいと言ってみる。そうすると、今まで見えなかった道がいきなり開けたりするものです。

心を開いたことでクラスメイトとの間に接点が生まれ、それが互いのことを知り合うきっかけになりました。新しい環境の友達というのは、つい気を遣ったり空気を読んだりして慎重に接しようとしてしまいがちですが、もしかしたら、思い切って自分からお腹を見せちゃうことが、仲良くなるための近道なのかもしれません。

私はその後、友達と恋バナをするのがライフワークとなり、今では恋バナを書いて生計を立てるという謎の人生を送っています。そう考えると、これは大学生活のみならず、私の人生を救う一件だったかもしれません。

「閉じるなキケン!」からの「開けば海路の日和あり」ということで、空がスコーンと抜けるこの5月、つらいときは誰かに思い切って心の内を話してみることをオススメします\(^o^)/

清田隆之/桃山商事
1980年、東京生まれ。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける"恋バナ収集ユニット"「桃山商事」代表。
男女のすれ違いを考えるPodcast番
組『二軍ラジオ』を更新中。雑誌『精神看護』やウェブメディア「日経ウーマンオンライン」「messy」などでコラムを連載。著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』
(原書房)がある。
Twitter @momoyama_radio

トミヤマユキコ
ライター・大学講師。「週刊朝日」「文學界」でブックレビュー、「ESSE」「タバブックス」でコミックレビューの連載を持つライター。早稲田大学などでサブカルチャー関連講義を担当する研究者としての顔も持っている。「パンケーキは肉だ」を合い言葉に、年間200食を食べ歩き『パンケーキ・ノート』(リトルモア)にまとめた。
Twitter @tomicatomica

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