MacとiPadの悦楽生活50 #EtsuMac50 - 21 iPadを再起動する(前編)
4月からゴールデンウィークにかけて、本連載でも個人的にも、真剣にMacBookシリーズについて真剣に考えた1カ月強でした。今もなお、2015年中の本気のリプレイスを検討し、ノートパソコンの新しい基本形となるであろうMacBookと、成熟と新しさを兼ね備えたMacBook Pro 13インチ。どちらも魅力的な選択肢で、買い換えても損はしないと思います。
その一方で、頭の片隅にありつつ、長らく話題に触れなくなってしまったiPad。いや、使っていないわけではないんですよ。むしろ毎日リビングルームで活躍しているほど。ただ、使い方があまりに変わらぬ日常過ぎて、特筆すべきことがなくなってしまっていたんですよね。これは良いことでもあり、悪いことでもあります。
Appleの2015年第2四半期決算でも、iPadは前年同期もアナリストの予測も下回る1,262万台の出荷に留まり、縮小のトレンドが続いています。ただ、自分のiPadとの接し方を考えてみて、少し納得できる部分もあります。
お題
【iPadを再起動しよう】
解決策
→iPadという存在について考えてみる
●iPadの存在意義を洗いなおす
○iPadシリーズも成熟し、すでに十分魅力的、ゆえに
基本的に本連載は、筆者の非常に個人的な意見、感想ばかりなので、あえて断るまでもありませんが、殊、現在使っているiPad mini Retinaディスプレイモデル改めiPad mini 2については、「非常に」をつけるほどに満足しています。
いや、まさか同じものが、名前のアップグレードを受けるとは思っていなかったのですが。
iPad mini 3やiPad Air 2が登場し、特に後者は薄さとディスプレイのキレイさに感動しましたが、じゃあiPad mini 2を買い換えるほどか、といわれると必要性を発見しにくかったというのが本音です。もちろん、Retina化される以前のiPad 2や、Retina化されても分厚く持ち歩きに不向きだった第三世代iPadを持っている人には魅力的と言えるかもしれません。ただ、後述の筆者の使い方だと、買い換えなくても問題ない、という評価もできるでしょう。
第三世代iPad、つまり2012年に発売されたモデルを持っている人は、既にRetina化が済んでいることから、ゲームや何らかのコンテンツ編集を行わない人、つまりビデオ視聴が中心のユーザーにとっては、既に充分な性能を備えている1枚、と言えるわけです。
形も既にシンプルで、最新モデルでは薄さも極まっており、早い段階から成熟していたiPad。このあたりが、iPadが伸び悩んでいる理由の1つと言えるのではないか、と思いました。
○コンテンツを見る道具として最高
さて、筆者のiPad mini 2(と呼んで良いですよね、買ったときと名前は違いますが……)。コンパクトで軽く、Retinaディスプレイの高精細なディスプレイとステレオスピーカーは、「コンテンツを見る道具」として十分な性能を発揮してくれます。筆者は米国・バークレーの自宅で、iPad mini 2を毎日使っています。主に、ビデオの視聴が中心です。だったら、より画面サイズが大きなiPad Airシリーズの方が良いんじゃないか、と思われるかもしれませんが、そうでもないのです。
使い方としては、Amazon Instant Videoや、NetflixもしくはHulu(見たいドラマごとに契約を変えてる)、CrunchyRollなどのアプリで見たい番組を選んで、Apple TV(1世代古い、720p対応モデル)がつながったテレビに映像を飛ばして楽しんでいます。
つまりiPad本体のディスプレイを使わずビデオを楽しむ時間が多いため、たまに外に持ち出すときにはより小さな方が良い、という考え方です。基本的にiPadのスマートカバーを閉めた状態で視聴するので、電池も心なしか長持ちします。ディスプレイ使いませんからね。
それならiPhoneからApple TVに映像を飛ばせば良いじゃないか、と思われるかもしれませんが、それではダメなのです。電話がかかってきたり、メールが届いて返信しようとしたり、映像を見ながら辞書やWikipediaを調べたくなったとき、間違って映像が止まってしまったら困るじゃないですか。
○iPhone 6 Plusにお株を奪われた部分も
iPad mini 2は、ビデオに限らず、割とコンテンツを楽しむ使い方が中心でした。あるいはBluetoothのコンパクトなキーボードを使って、ときおりで先でiPad miniを使って取材メモを取ったり、アイディアを考えたりすることもありました。ここで、iPadが伸び悩むもう一つの理由として考えられる実体験を見つけています。
それはiPhone 6 Plusの存在です。
iPhone 6 Plusは5.5インチRetinaディスプレイを搭載しています。数字の上では大したことないですが、7.9インチのiPad mini 2の方がやはり大きく、また4:3の縦横比も「画面が広い」印象を創り出しています。とはいえ、外付けキーボードを使ったちょっとしたメモ書きなら、iPhone 6 Plusでも充分な広さを確保できるようになってしまいました。特に、横長に構えると、メールやEvernoteなどのアプリでは、左にメニュー、右に内容や編集画面、という2画面構成も利用でき、非常に実用的です。この画面構成も、iPadのお株を奪うもの、という感じがします。
また、メディア消費についても、特にKindleなどの電子書籍は、iPad mini 2ではなくiPhone 6 Plusで読むようになってしまいました。上手く文字サイズを調整すると、ちょうど文庫本の1ページの紙幅のような感覚になり、軽い端末も相まって、疲れ知らずで読書が捗るのです。
これも、主にiPad mini 2の「読書端末」という用途を、iPhoneが奪っていった格好です。
●iPadを再起動させるためのAppleの施策に注目
筆者は、iPadがある生活が日常になってしまったという感想を持っていました。とはいえ意外と愛情深く使っていたんだな、という気づきもあります。それ故に、iPadの再起動のストーリーは1回では完結しませんでした。
ということで、次回もiPadを再起動する話の後編、ということにしたいと思います。売上低迷の続くiPad、Appleも、おそらく分かっていたこととはいえ、何らかの打開策を見出す必要があると感じているようで、米国のウェブサイトで始まった特設サイトなどに触れつつ、話を進めていきましょう。
松村太郎(まつむらたろう)ジャーナリスト・著者。米国カリフォルニア州バークレー在住。
インターネット、雑誌等でモバイルを中心に、テクノロジーとワーク・ライフスタイルの関係性を執筆している。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、ビジネス・ブレークスルー大学講師、コードアカデミー高等学校スーパーバイザー・副校長。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura