キヤノン「EOS Kiss X8i」実写レビュー - 快適になったライブビューと精細化した画質を味わう
キヤノンの「EOS Kiss X8i」は、一眼レフカメラのエントリー機として人気の「EOS Kiss」シリーズの最新モデルだ。曲面を多用したボディデザインを従来製品から継承しつつ、2,420万画素センサーを新搭載。AFやファインダー、画像処理エンジンを改良するなど大幅な進化を遂げている。今回は、新しくなったライブビューやAFの使用感を実写を交えながらレポートしよう。
EOS Kiss X8iを試用してまず気に入ったのは、ライブビュー撮影時の操作感が向上したこと。はっきりと体感できるほどライブビューAFがスピードアップしたことに好印象を受けた。
これまでのEOS KissシリーズのライブビューAFを振り返ると、2012年発売の「EOS Kiss X6i」や2013年発売の「EOS Kiss X7i」では「ハイブリッドCMOS AF」を、同じく2013年発売の「EOS Kiss X7」では「ハイブリッドCMOS AF II」を搭載。AFシステムのバージョンアップのたびに高速化していたことは確かだが、人物など動いている被写体を撮るには非力であり、軽快とはいえなかった。
だが、今回のEOS Kiss X8iが新搭載した「ハイブリッドCMOS AF III」では、人物くらいの動きであればストレスなく合焦する。ライブビュー時のサーボ連写に非対応という点で、同時発売の上位モデル「EOS 8000D」とは少し差があるが、それでも既存モデルに比べるとライブビューAFは格段に快適になったことを実感できる。
下の写真は、バリアングル液晶を生かしてカメラを高い位置に構え、ライブビューで撮影したもの。歩行者がバランスよく密集した瞬間を捉え、凝縮感のある画面構成を狙った。
次も同じくライブビューで撮影したもの。水槽の外から撮っているためシャープ感はやや不足気味だが、薄暗いシーンでの動体撮影という厳しい条件ながら、狙いどおりのピントで撮影できた。
撮影直後の液晶表示レスポンスが改善されたことにも注目だ。既存モデルではレリーズ直後に液晶モニターが一瞬暗転してからアフタービューが表示されるが、EOS Kiss X8iは撮影直後の液晶ブラックアウトが非常に短い。
そのため、単写でも連写でも、テンポよくライブビュー撮影が行える。
この撮影後の液晶表示レスポンスという点では、上位モデル「EOS 70D」さえも上回っている。また同じAFシステムを採用したミラーレスカメラ「EOS M3」に比べてもライブビューの快適さは勝る。
下の写真は、外部ストロボ光を横から当てることで、陰影のある立体的な描写を狙ったもの。ライブビュー時のスピーディなAFは、こうしてストロボを使って植物などを接写する際にも重宝する。右手だけでカメラを支えながらAFで素早くピントを合わせられるので、左手に外部ストロボを持って光を当てる、といった動作を手持ちでスムーズに行える。
同じくハイアングルからライブビュー撮影したもの。上からストロボ光を当てることで、素材の質感を際立たせた。
ローアングル&ローポジションで撮影。上位モデル「EOS 8000D」とは異なり水準器機能を搭載していない点は少々残念だ。ライブビュー上のグリッド表示は可能なので、それを目安に水平をチェックするといいだろう。
●動きの瞬間が撮れるオールクロス19点位相差センサー
一眼レフカメラの本領であるファインダー撮影での操作感もよくなった。EOS Kiss X8iは、EOS Kissシリーズでは初めて「インテリジェントビューファインダー」を採用。ファインダー内に組み込まれた透過型液晶によってAFフレームやグリッド、アスペクト比などの情報を、必要に応じて表示または非表示に設定できる。
ファインダー撮影時のAFには、オールクロス19点の位相差AFセンサーを搭載。多少薄暗いシーンや動きのある被写体に対しても、ストレスなくてきぱきとピントが合う。
下の写真は、測距エリア選択モードを「ゾーンAF」に、AFモードを連続的にピントが合う「AIサーボAF」にセットして撮影したもの。走り回る馬の姿を狙いどおりのタイミングとフレーミングで捉えることができた。
次は、通過する航空機を望遠ズームレンズでスナップしたもの。AFモードは「ワンショットAF」を、測距エリア選択モードは「任意選択」を使用。任意選択でAF測距点を切り替える際は、いったん専用ボタンを押して設定画面を呼び出し、十字キーまたはダイヤル操作で選ぶ、という手順になる。この点はこれまでのEOS Kissシリーズと同じだ。個人的には、ダイレクトに選択できないのが少々もどかしく感じる。
同じくダブルズームキットに付属する望遠ズームレンズで撮影。
キットレンズは2本ともSTM(ステッピングモーター+リードスクリュー)タイプであり、AF駆動音はほぼ無音に近い。
逆光ながら意図した部分に素早くピントを合わせることができた。ホワイトバランスは日陰にセットしたうえで、さらにホワイトバランス補正機能を使って赤みを強調している。
●シリーズ最多画素数となる2,420万画素センサーを搭載
撮像素子にはAPS-Cサイズ相当の有効2,420万画素CMOSセンサーを、画像処理エンジンには「DIGIC 6」をそれぞれ搭載する。感度はISO100~12800を1EVステップで選択でき、拡張設定としてISO25600が用意されている。
実写では、遠景の細部までをシャープに描く解像感の高さと、彩度とコントラストをバランスよく高めた見栄え重視の発色を確認できた。ノイズを目立たないよう低減した高感度の性能も良好だ。画質面での満足感は高い。
○まとめ
今回の試用では、いっそう実用的になったライブビューと、高速化したAF、さらに精細化した描写性能を十分に味わうことができた。
細かい部分では、個人的な不満はいくつかある。例えば、ISO感度の選択が1EV刻みであることや、カスタム機能の乏しさなどだ。もちろん、そもそもエントリー向けの製品なので、あまりマニアックな要望をするのは筋違いだろう。ただ、本機のライブビュー性能と描写性能は中級者以上にとっても満足できる内容であるだけに、細部の操作面にもさらなる練りこみを求めたくなる。
EOS Kiss X8iは、オールクロス19点AFや2,420万画素センサー、インテリジェントファインダーなど数年前なら中級機と呼べるくらいの高スペックを小型ボディに凝縮したカメラだ。動きのあるシーンを快適かつ精細に撮影したいエントリーユーザーにおすすめできる。