ニチレイが30億円をかけて冷凍炒飯「本格炒め炒飯」をリニューアル - その意図とは
同社の商品の中でも“チキン”、“コロッケ”と並んで注力しているカテゴリーが“米飯”。その代表格である冷凍炒飯「本格炒め炒飯」シリーズがこの春、刷新された。同商品の特徴や新しくなったポイントを、商品の担当者で同社家庭用事業部マーケティングチーム・マネジャーの奥村剛飛氏に伺った。
○発売15年目にして"初"の大規模リニューアル
――今回、「本格炒め炒飯」をリニューアルした理由を教えて下さい
この商品は2001年に発売して以来、この春でちょうど15年目にあたりますが、この商品が売りだされた当時は業界的にはかなりセンセーショナルなことでした。というのも、その頃、冷凍米飯市場の炒飯と言えば、実際に炒めずに炒飯風の味付けをしただけの商品しかなかったんですね。それをこの商品で、実際に“炒める”といった工程を初めて組み込んだのです。
以来、お陰様で多くの方からご好評をいただきまして、15年間で累計40億食を販売しています。
一方、昨今の加工食品市場では、生麺のような食感を持つインスタントラーメンが登場するなど、より技術改良に注力していかなければならない時代がやってきました。そこで今回、弊社では30億円を投資して、工場に全く新しい製造ラインを導入しました。企画発案自体からだと約5年ほどかかっています。
――新しくなったポイントをお聞かせください
大きく分けて4つあります。まずは強い火力。プロの料理人の方が使う強い火力を採用しています。2つ目に高温の熱風を吹きつける弊社独自の特許製法で、お米の余分な水分を一気に飛ばし、中華料理屋で出ている炒飯のようなパラパラなご飯を再現しました。
さらに3つ目に味付けへのこだわりとして、自社の同じ工場で製造っている焼き豚の煮汁を調味料として使用しています。4つ目にラードと植物油にネギ・しょうが・にんにくを加えた“焦がしネギ油”を使用しています。
――パラパラとした炒飯を実現している“新・本格炒め製法”とは、具体的にはどのような技術なのでしょうか?
炒め工程を3段階に分けています。まずは一次炒めとしてご飯に卵をコーティングする工程。次に250度以上の高温熱風を吹きつけることにより、水分を飛ばします。そして最後が二次炒め。具材を加えて、強い撹拌により仕上げの炒めを行います。これらはプロの中華料理人が中華鍋を強い火力で煽りながら炒める炒飯づくりからヒントを得て、製造ラインで再現しています。
そのため、作る工程もプロの料理人とほぼ変わりません。
また、プロの料理人によると炒飯を炒めるには、具を入れる量やタイミングもとても重要で、特に量が多すぎるとパラパラになりません。それを工場で大量にできるというのはスゴイことと料理人も驚いていました。
――入っている具材自体には変化はないのでしょうか?
「本格炒め炒飯」は味と具材が異なる2種類があり、レギュラーの具材の種類は変わっていません。2014年春に発売した「本格炒め炒飯 塩」は、筍としいたけが加わり、具材が三目から五目に増えています。どちらも各具材一つひとつのグレードをアップしているのも特長です。例えばお米に関しては、北海道産一等米を100%使用するなど、当社の素材調達力をフルに活用しています。
――冷凍技術自体で変えたところはありますか?
冷凍技術自体に大きな変更はありません。
これまで同様、“バラ凍結”と呼ばれるご飯粒一つひとつをバラバラの状態で凍結する技術で冷凍しています。
○試作回数は100を超える
――商品のリニューアル後、消費者の方からの反応はいかがでしょうか?
実際に「変わったわね」という声が多く寄せられています。香りが変わったとか、雰囲気が変わったとか。実は今回、発売前に“CLT(会場調査)”という検証を4回実施しています。これは、調査対象者を会場に集めて、実際に商品を試してもらい、その場でアンケートやインタビューなどを行うモニター調査のようなものなのですが、4段階評価で「とてもおいしい」「おいしい」を選んだ人が、98.2%にも及びました。
味を変更すると既存の商品を買ってくださっているお客様から「前のほうがよかった」というお声をいただいてしまいますので、現行商品から4段階で味を変えてみた試作品を食べ比べて好評価をいただいたことで自信がつきました。過去からの試作の回数で言うと、100回は超えているのではと思います。
――新しくなった「本格炒め炒飯」を特に食べてほしいという人は?
メインユーザーである食べ盛りの中高生に食べていただきたいですね。
また、実は弊社の冷凍米飯のもう1つの主力商品である“本格焼おにぎり”もこの春リニューアルをしています。こちらは特にご年配の方から好評を得ていますので、醤油の香ばしさをさらに引き出し、ご飯をふっくらさせるなどの改良をほどこしています。
14年前の発売以来、大幅に刷新された「本格炒め炒飯」シリーズ。250℃以上の高温熱風を吹きつけて水分を飛ばすという技は、家庭用の調理器具ではなかなかできるものではない。そんなまさしく“プロの技”が生きた冷凍食品で、家庭で中華料理屋のような美味しい炒飯が電子レンジで調理するだけで手軽に味わえてしまう。食事の主食としてはもちろん、冷蔵庫にストックしておけば小腹が空いた時に食べたい量だけレンジでチンして食べられるのも冷凍炒飯の魅力。まだ試していない人は、従来の商品や他の冷凍炒飯との違いを、これを機に食べ比べてみてほしい。