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美人でもハンサムでもない「普通の人」を撮る写真家・Joan Canto氏「一番売れている写真を撮ろうとする人は成功しない」

マイナビニュース
美人でもハンサムでもない「普通の人」を撮る写真家・Joan Canto氏「一番売れている写真を撮ろうとする人は成功しない」
●「普通の人」を撮るフォトプロジェクト
ストックフォトに取り組む写真家たちのためのイベント「iStockalypse(アイストッカリプス)」が5月15日からの3日間、東京で開催された。

iStockalypseとは、ゲッティ イメージズ傘下のブランドであるiStockが開催するフォトグラファー向け実践型集中プログラムで、これまでにロサンゼルス・コペンハーゲン・イスタンブール・ベルリンなど、世界各地で開催されている。ゲッティ イメージズのエキスパート陣が、最先端のビジュアルトレンドを読み解くセミナーから、屋外でのロケ撮影会、ポートフォリオ・レビューなどを行う充実した内容で、参加者は、フォトグラファーとして世界に通用するスキルを掘り下げていく。

これに関連し、iStockへの写真提供と世界各地の広告写真撮影で生計を立てているJoan Canto氏が来日した。今回は、ゼネラルモータースや国連、赤十字などをはじめとした30社以上の広告キャンペーンで使用されるJoan氏の写真について、そして自身のプロジェクトであり「リアル」な人々の顔を収集する「the Real People Project」についてお話を伺った。

○写真を撮り始めたきっかけは

まずは、Joan氏が写真を撮り始めたそのきっかけについて伺った。

Joan氏:

フォトグラファーになる前は文学と言語の勉強をしていて、カタルーニャの新聞社でエディターをやっていました。だけど仕事は夜遅いし、僕にとって全く刺激的ではなかった(笑)そのうちに、フォトジャーナリストと仲良くなることがあって、現場に同行したりいろんな話を聞いたりしているうちに、こっちの方がずっと楽しいと思うようになってね。
エディターを続けるのは時間の無駄だ!と思って辞めちゃったんです。

その後、まずは写真の学校に通いました。iStockを始めたのは、授業でとった写真をアップしたらどうか、と先生から勧められたからです。講義では「こういう写真が売れる、こういう写真のニーズが高い」なんてことも習ったんだけど、自分にとってはそんなものは関係なかった(笑)判断基準が「撮っていて楽しいかどうか」だったんだ。逆の発想でね。撮りたいものを撮ってそれが売れたらいいなってそう思っていたんだよ
○「the Real People Project」に関して

Joan氏が2008年から取り組んでいるフォトプロジェクト「the Real People Project」は、世界中の"リアル"な人々の顔を撮影するというもの。彼のプロジェクトでは美醜や表情を問わず、非常に多様な人種、性別、表情の人々の写真を見ることができる。このプロジェクトを、なぜ彼は始めようと思ったのか。


Joan氏:

このプロジェクトを始めた当時、iStockでも「顔」といえば「綺麗な人、かっこいい人の写真」がトレンドだった。でも、僕はそれではつまらないと思ったんだ。

僕は、自身のプロジェクトの被写体を、あえて「ugly people(醜い人々)」と呼んでいるんだけど(笑)。それは、綺麗なモデルではなく「一般の人」という意味。最初は自分の家族や友人、知り合いの顔を撮っていたんだけど、撮り続けているうちに、その"普通の感じ"がいつのまにか、写真として必要とされるようになったんだ。計画的にそうしたというわけじゃなく、偶然そうなったんだよ。

確かに、彼のiStockページを見ると「美人」「ハンサム」とは言い難い、ごく普通の人の笑顔が多くを占める。top10のうちの5人くらいが彼の住む町の住人だというが、そこに違和感はなく、むしろ親近感が湧いてくるから不思議だ。


Joan氏はかれこれ7年間一般の人を撮り続けているが、そうして感じているのはやはり、「今はもう亡くなった人がいるということ」だと、少ししんみりとして語った。彼は単純に人を撮っているのではなく、その人の人生そのものを撮っているのだ。

●これからストックフォトに挑む人には「"撮りたいもの"を撮ってほしい」
○どのくらいの時間を写真に費やしているか、休日の息抜きなどは?

「(写真撮影の)息抜きは?」と聞くと、大きく眉毛をあげて、ジェスチャーとともに「Nothing」と一言。Joan氏は、「始まりと終わりがないからよく分からないな。いつもずっと写真を撮っているよ。これは仕事でもあるけど、趣味でもあるんだ。あと、息子ができてからは、さらにシャッターを切る機会が増えたね」とほほえみながら答えてくれた。

写真をたしなむ者であれば、プロの使っている機材は気になるもの。
Joan氏が主に使用しているカメラはキヤノン EOS-1Ds Mark III/5D Mark IIIだという。東京での「theReal People Project」の撮影は、PENTAX 645Zで実施したそうだ。

○まずは自分が「撮りたいもの」を

日本での本格展開を迎えたストックフォト「iStock」。一般ユーザーが写真を投稿できるのが大きな特徴だが、最後に、これから写真を登録しようとしている人たちへアドバイスしたいこと、を聞いてみた。

Joan氏:

一番売れている写真を調べて、「それを撮ろう」と取り組む人は成功しないと思う。写真は自分なりの方法で撮って、自分でその価値を高めていくものだから。

僕に関して言えばポートレートだったけれど、花を撮るのが好きだったり、ファッションだったりランドスケープだったり、まずは「売れるもの」ではく、自分が「撮りたいもの」を撮ってほしい。それが自分の個性につながっていくし、そういったスタイルを作り出すことが、フォトグラファーとして大切だと思う。


需要と供給にはバランスがあるけれど、供給があってはじめてそこに需要が生まれる。
そんな「逆転の発想」も悪くないんじゃないかな。

Joan氏が好きで撮り始めた一般の人のポートレート写真は、今や国際的企業やビックブランドで使われるようになっている。そしてそこから自然とステップアップし、今ではフォトグラファーとしてオファーが来るようになったとJoan氏は語る。

「最近ではプロフェッショナルのモデルを使って『素人っぽい表情で撮影して』ってオファーがくるんだよ(笑)まさに「逆転の発想」だね! 実際、素人を撮影するより、プロの方が本当はずっと楽なのさ。でもそれが僕のスタイルだから」とJoan氏はまた舌を出した。

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