ものづくり業界を成長させる35万人が利用する3D CADソリューション - 機械設計者と部品サプライヤをつなぐCADENAS
個性ある企業が多いものづくり業界の中で一際、異彩を放つ企業がある。創業以来、ネットを介して機械設計者には3D CADデータを無償で提供し続け、部品サプライヤにはスポンサードされ続けている。それだけなら良くできたプラットフォームビジネスというだけだが、国内に競合らしき競合はなし。なぜ、そのような存在が成り立つのか。
機械設計者と部品サプライヤが出会う場所、「PARTcommunity」
サービスの名前は「PARTcommunity」。設計者のためのポータルサイト「WEB2CAD」内のコーナーとして展開されている。運営するのはドイツに本社があり、18年の歴史の中で、ものづくり企業と部品サプライヤ企業の橋渡しを行ってきたキャデナス・ウェブ・ツー・キャド株式会社(以下、CADENAS)だ。「PARTcommunity」のサービス内容を簡単に紹介すると、3D CADデータを通じて、機械設計者と部品サプライヤの「出会い」を創出する。
本サービスから機械設計者は3D CADデータを無償取得でき、部品サプライヤは部品の認知向上、販売を行える。
いわずもがなだが、自動車や飛行機、家電品、工業ロボットなど、さまざまな機械は多くの部品で構成されている。しかし、そのすべてがメーカーで新規に設計・作成されるわけではない。新規で設計を行った場合、その後の製造から品質のテストまでの工程で膨大な時間とコストが発生してしまうためだ。したがって効率化やコスト削減のため、モーターやスイッチなどを含め、既製品が流用されることが多い。
また、ものづくりの現場では3D CADの活用がスタンダードになってきている。導入部品の選定を行う際も3D CADデータが配布されている部品が優先的に採用されることも少なくない現状だ。かくして図面の作成に追われる機械設計者は、日々少しでも工数を減らすため、メーカー部品に関しては3D CADデータを探し求めることになる。
メーカーからすれば部品を使ってもらってナンボ、極力これに応じようとする。この両者の希望をかなえる場が、「PARTcommunity」というわけだ。
●35万人が利用し、月間ダウンロード数はなんと10万件以上
35万人が利用し、月間ダウンロード数はなんと10万件以上
2D CADの時代には、各設計者に各メーカーがそれぞれデータを送っていた。当時は、データのファイルフォーマットがほぼ統一されており、設計者がサイズ調節などを自分で行うことが可能であったため部品サプライヤ側が全データを用意する必要もなかったからだ。しかし、これが3次元になった途端、ハードルがあがった。機密性の高い3D CADデータをおいそれと提供することはできず、提供用に別に用意する必要が発生。さらには2Dのような統一ファイルフォーマットもなく、使用現場ごとに異なる状態。そして設計者によるサイズ変更も現実的ではなくなった。
かくしてオファーのたびに、気の遠くなるようなデータを用意する事態となり、このサービスが必要になった。
その有用性は、利用者数に現れており、現在35万人を超える利用者がおり、企業数では年間約2万社に利用されている。さらに毎月約4000人程度の新規登録で増え続け、3D CADデータの月間ダウンロード件数は半年で100万件を超える量まで伸びている。これは、ここ5年間でも6倍の伸びと言う。少なからず、日本の設計環境の3次元化への移行、スピードアップにも貢献しているといっていいだろう。
一方、現在、加盟している部品メーカーは70社を数え、それぞれが各ジャンルのトップ企業だ。メーカーはCADENASに対し、定額のサーバー使用料などの費用を支払っているが、その関係性は良好。普段は競合している部品メーカー同士も、ここでは仲良く並んでいる。
雑誌広告などでの引き合い獲得が難しくなっているなか、それと比較にならない件数の"ユーザー情報"(ダウンロードしたユーザーの個人情報)を取得できるのも、大きな魅力の一つだ。
なぜ国内独占が可能なのか
しかし、こういったメリットの大きい出会いを創出できるマッチングサービスでは、つぎつぎにプレイヤーが現れ、たちまちレッドオーシャンと化すのが世の習いだが、なぜ同様のサービスを行っている会社は国内にはなく、世界的にみてもあと1、2社類似サービスがある程度という状態なのか。時代に先行できていたという側面もあるが、実はデータをストックする技術にも秘密がある。
単に、億を超える一つひとつの3D CADデータをサーバーに上げている訳ではない。部品(型番)を選択するコンフィグレータと、選択したサイズやオプション構成・組合せに合わせて、その場で、3次元モデルを生成する『パラメトリック技術』という"プログラム"の様な仕組みがあり、必要に応じて3D CADデータを生成しているのだ。つまり、この仕組みにより、メーカー各社の膨大なファイルが、サービス上では使用者が必要なデータを生成できるプログラムに変わるわけだ。
またメーカー加盟時には、各社で登録したい製品データを用意する必要がある。しかし、他案件のために稼働している自社の設計部隊に協力をあおぐことは難しいケースが多い。
CADENASは、100名以上のデータ登録部隊を有しているため、有償とはいえ、これをフォローすることができるのも大きい。実際、大半の企業が登録時に、モデリングの請負を依頼してくるという。
●大手ものづくり企業ならではの課題を解決する「PARTsolutions」
大手ものづくり企業ならではの課題とは
そんなCADENASが、あらたに展開している「PARTsolutions」というサービスがある。これは大手ものづくり企業がかかえるある課題を解消するためのものだ。
まず大手ものづくり企業においては、設計者数が100名、1000名を超える場合も珍しくない。それだけ数多くの設計者が、勝手に好きな部品を見つけて来て設計させればとてつもない費用負担が発生するため、当然、PLMやPDMなどのシステムの導入をすることになるが、ここに様々な課題がある。
まず、設計者が見つけることができるのは、PDMシステム内に登録された部品だけ。つまり、市場に出回っているほぼ無限の部品がある中、検索できる部品は、その数百万分の一、数億分の一の部品しかない。
網羅性のないデータベースには意味はなく、この状態ではPDM自体が使用されず、設計者が外界の情報の海でこぎ出すことになる。そして、膨大な時間が消費された上、あるいは同等スペックの部品を既にほかの設計者が使っていたとしても、別の新規部品を選んでしまうかもしれない。
またPDMシステムなどのメインの役割は、所属する設計者が各自設計した設計データの管理になるが、その検索機能には、どうしても限界がある。検索時に使える検索機能は、Meta情報、つまりはテキスト検索だけ。品番や部品名称、設計者名など、各属性で検索しようとするが、これらで検索できるのは誰がどんな部品設計をしたかをおおよそ把握していなければ無理だ。隣の設計者が、または、別の部署の設計者がどの様な部品を設計しているかがわからないなか、本当に欲しい部品を見つけ出す事は不可能といっていい。さまざまな効果が期待できる「PARTsolutions」
これらのPDMシステムなどの問題を解決、補完するのが、網羅性をもつデータベースと独自の形状検索機能とを持つ「PARTsolutions」だ。データベースは、すでにJIS部品などの数多く完備しているし、専業部品メーカー各社の市販部品に関しては、「PARTcommunity」で配信されている整備された膨大なデータも完備されている。
これだけで3D CADデータを探す時間が大幅にカットできる。
検索においては、テキスト検索という単一の手法だけに頼るのではなく、"形"だけの情報から"過去に設計した似た形状の部品"を見つけ出すオリジナルの形状検索機能を有している。これにより、瞬時、または数秒で、膨大な数の過去図面の中から似た形のモデルを見つけ出す機能を実現しており、バージョンを追うごとに、そのアルゴリズムも改良されている。これが各自設計したデータを検索する際に威力を発揮する。
「PARTsolutions」は、PDMシステムなどの課題を補い、更にユーザーの社内システムと統合して使用することもできる。つまりは、既に採用実績のある部品なのか、そうではないのか、採用実績があるのであれば、その購入価格や社内在庫数はどうなのか、などを見える化できる。
そして効果は、多岐にわたる。設計自体の効率化ももちろん、管理部門のシステムの簡素化、購買システム、ERPシステムと「PARTsolutions」の連携により実現する手間の削減。部品点数の削減による無駄な新規部品増によるコストアップや、個別購買を削減することによる集中購買・開発購買の促進。さらには情報、データの正確性を格段にアップさせることによりテキスト検索だけでもその検索性を向上させる効果もある。
多品種少量生産、短期サイクルが要求される現在の環境下での市場ニーズ変化に素早く対応できないと"売れるべき製品"ボリュームが激減してしまう厳しい環境の中を勝ち抜くには、かなり有用なサービスではないだろうか。また、グローバル化の競争下で"調達可能な部品"を正確に知ることができるのも大きなメリットだ。実際、Industry4.0などをうたうドイツでは、部品管理やコストの最適化に注力するパーツマネージメントの意識が高くなっており、これらサービスの引き合いは強い状態だという。CADENASとしても、ビジネスとしての側面はもとより、より日本のものづくり業界の成長を早めていきたいと願い、このサービスの浸透に務めていくそうだ。
「PARTsolutions」をはじめとした同社の各種ソリューションに関しては、2015年6月24~26日に東京ビッグサイトで開催される「第26回 設計・製造ソリューション展(DMS)」
に出展される同社ブースにおいて展示される予定だ。CADデータの有効活用をしたいサプライヤや膨大な部品データの管理に関心をお持ちのものづくり企業の方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
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