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大阪市とKDDIを繋いだ"ハブ"と"スタートアップ"

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大阪市とKDDIを繋いだ"ハブ"と"スタートアップ"
●地方の活性化はスタートアップから?
安倍晋三首相による経済政策「アベノミクス」だが、その重要課題の1つに「地方創世」がある。東京一極集中、三大都市圏に物や人が集中して地方の疲弊が叫ばれるなかで、地方を再び活性化させ、日本経済の起爆剤としていこうという試みだ。

もちろん、「言うは易し行うは難し」で、一朝一夕で物事が進むわけではない。だからこそ、地道な取り組みこそが地方活性化の最短ルートとも言えるはずだ。こうした政府の動きに呼応して、地方自治体や民間企業の動きも活性化しつつある。今回、そうした活動の1つである「Osaka Innovation Hub(OIH)」の取り組みについて、取材する機会を得た。

○OIHとは?

OIHは、大阪市が2013年4月に設立した「世界につながる、イノベーション・エコシステムのハブ」。大阪市経済戦略局で理事を務める吉川 正晃氏は、このプラットフォームを「リアルに取引する場所」と表現する。
市場や飛行場が"ハブ"、つまり結節点となって、モノの仲介地点として機能しているが、ネット全盛の世の中であっても「目と目を合わせて取引することが重要」(吉川氏)だとして、イノベーションの結節点になるべく、立ち上げられたわけだ。

「アメリカでは大企業とベンチャーの交流が盛んだ。日本でも同様に交流できる場を持ちたいと思い、私たちの運営方針を理解している人たちに使っていただいている。

私が好きな言葉に『Give first』という言葉がある。最初に、相手にGive(あげる)することが重要で、何事においてもTake(得る)する前に何かをしてあげる気持ちが重要だ。

この考え方に確信を持ったのは、Teckstarのドン・バートン氏というコロラド州でベンチャー支援コミュニティのマネージャーが持ち続けている哲学を聞いた時。彼の哲学は『Give before you get』で、手に入れる前にGiveしなければならないというものだった。

ここから、『Give and Give』という考えも持ったし、その精神に満ちあふれた場所にしたいとOIHの立ち上げの時に考えた。
行政は主役ではなく、つまり、我々はあくまで黒子。登壇するこれからのスタートアップが主役であるという思想を持っている」(吉川氏)
●KDDI∞Laboで地方を盛り上げる理由
今回OIHで行われたピッチイベントは、KDDI∞Laboとのコラボレーションで行われたもの。KDDIは、インキュベーションプログラムが8期を迎えているが、地方のスタートアップ支援団体との連携を発表しており、今回の取り組みがその第1弾だ。このピッチイベントで優秀賞に選ばれたチームは、∞ラボの8期デモデイに登壇する権利を得られ、KDDIと共にスタートアップの支援を行うパートナー連合プログラム参加企業とのビジネスマッチングも受けられる。

ラボ長を務める江幡氏は、今回の地方連携について「地方のスタートアップをサポートできるように、もっと表舞台に出てこられる場を、地方連携を通して作っていきたい」とその目標を語る。

足かけ4年近くインキュベーションプログラムを続けている江幡氏らだが、これまでの経験から地方に眠る才能との交流をもっと進めていきたいという思いがあったのだという。実際に動き出したのは今年の頭からだが、夏のデモデイに向けて今回のピッチイベント実現にこぎつけた。

「熱い想いを持つOIHの人と一緒にやることで、何か新しいことをしたいと考えた」(江幡氏)

江幡氏がたびたび強調した点は「大阪を地方とは思っていない」ということ。
この後、優秀賞を獲得したチームを紹介するが、いずれも明確な理念と目標、どのようにスケールしていくかという起業家らしいマインドセットを持ちあわせており、東京で行われている各種ベンチャー向けイベントの登壇者に引けをとらない雰囲気を持っていた。大阪一、日本一を目指すだけでなく、世界を土壌とする戦いを見据えている彼らは、地方の課題解決ではなく、都市圏の生活者が「世の中を変えたい」と思い抱いている点で、地方とは異なっているというわけだ。

このように書くと地方軽視にも見えるかもしれないが、地方連携には多様な目的が含まれている。先にも江幡氏のコメントで触れた「地方のスタートアップを表舞台に」という点でもわかるように、地方から世界を目指せるマンパワーが潜んでいると思うからこそ、地方連携という取り組みを行っている。その上で、江幡氏は「地場の課題、ちょっとした課題に焦点を合わせたアイデアが地方にはまだまだあると思う」と話している。つまり、少子高齢化や都市圏への人口集中から"疲弊している"とされる地方の再興につながるような"ちょっとしたアイデア"を掘り起こすことで、その地域だけでなく、日本国中の地方の活性化につなげたい。そんな意図が江幡氏のコメントから読み取れる。

「例えば地方では福岡県などがスタートアップで湧いていますが、ほかにも地方で努力している場所は多数存在する。
でも、地方だけでは支援者の数が圧倒的に足りない。その一方で、東京には支援者がいるけど、東京では思い浮かばないようなアイデアが地方にはある。

いくつかこの地方連携を進めていこうという話になっている。ラボでも8期で養蜂へのIoT導入を行うチームが広島から飛び出しているし、地元で話題になっていると聞く。こうした金銭と人員サポートを東京から行い、地方の地場にいい形で還元したいんです」(江幡氏)

○さくらインターネットの田中氏が起業家に送る言葉とは?

ピッチイベントには大阪市に本社を置く、さくらインターネットの代表取締役社長 田中 邦裕氏らが審査員として参加。田中氏は1996年に学生起業で同社を設立したことで有名だが、今回のピッチイベントでも自分の後輩となる企業を目指す強者達を前に先輩から熱いアドバイスを送った。

「ビジネスプランを美しく語るのではなく、熱量を見せてほしい。情報は地方でも手に入れると言われているが、こうしたイベントで得られるものは"熱量"だ。
大阪でこうしたイベントが行われることで、全体の"熱量"が高まればいいと思うし、ほかの地方でも同じような場がどんどんできるようにするのが私の仕事だと思っている。

大事なことは、『熱量を与えられるように頑張る』ということ。だらっと競争していてはダメだ。熱量を与えて、さらに多くの熱量をもらって帰れるようにしてほしい」(田中氏)

●優秀チームは?
全13チームが参加したピッチイベント。優秀チームに選ばれたのは以下の4チームだった。

なお、聴講者が"良いスピーチ"に贈るオーディエンス賞には、「ベルシオン風車を活用し、無料Wi-Fiの電源基地局を設置します」というコンセプトを発表したGold Green Japan 代表取締役の佐々 寿一氏とCofameの野口氏が選ばれた。

○非侵襲指先毛細血管観察による健康指標「VITAL BAROMETER」

指先の毛細血管の状態を把握することで、健康状態を把握しようというもの。現在は専用の機器が必要だが、ビジネスマッチングや資金調達などで臨床試験、技術開発を進め、スマートフォンなどにアタッチメントを取り付けるだけで毛細血管を撮影できるようにしたいと武野氏は意気込んでいた。
○パーソナル香り空間を制御するWearable Aroma Shooter

情報通信研究機構(NICT)の研究員でもあった金氏は、在籍中から微細な香り成分を噴霧できる機器「Micro Aroma Shooter」を開発。現在、特定企業とともに、同デバイスをさらに進化させるための研究開発を行っているという。"パーソナル香り空間を制御"という言葉どおり、香り成分を一定空間に留めることで、香りのHMDのような、限定された空間での香りの再現を狙う。これにより、視覚や聴覚に続くさまざまな環境の香りを再現し、さらなる没入感を目指すのだという。

○デーティングアプリであるTinderライクの物々交換アプリ「Bater」

Baterは、説明にもあるとおり、デーティングアプリ「Tinder」から着想を得て開発したもの。Tinderは、好みの外見の異性を「好き」「嫌い」で左右にフリックすることで、相手も自分と同様に「好き」を選んだ場合にマッチングしてくれるというもの。これと同様に、自分がいいと思ったモノと、他人が自分のモノに「いい」と評価してもらった場合に、物々交換をするという仕組みだ。

○ベルシオン風車を活用し、無料Wi-Fiの電源基地局を設置

オーディエンス賞に選ばれた佐々 寿一氏の発表。
風があまり吹いていない状況でも回る回転効率、発電効率の良いベルシオン風車を利用し、無料Wi-Fiを提供するというもの。電気料金などを気にする必要がないため、Wi-Fiスポットを提供しつつ、広告などに活用できるとしていた。

○ハイクオリティなコンタクトデータであなたのビジネスを補強するアプリ Cofame

唯一、優秀賞とオーディエンス賞の両賞を獲得したCofameの野口氏。実際に、プレゼンの運びが優秀なだけでなく、米国進出準備も始めているなど、すでに大阪という枠を超えて世界を見据えていた。内容としては、さまざまなWebサービスのアカウント情報を集約し、コンタクト情報の共有がしやすくなるコンセプトで、CRMやMA、データ市場など、多彩なソリューション連携を検討している。

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