『トゥモローランド』が描く未来都市は"キャラクター"「生き物と同じ」- ブラッド・バード監督語る
ウォルト・ディズニーが遺した最大のプロジェクトといわれる、すべてが可能になる理想の世界"トゥモローランド"が、ウォルトの死から約50年の時を経て、ついに形となった。ウォルト・ディズニー社の保管庫に眠っていた数々の資料をもとに、フィルムメーカーたちがウォルトの夢を引き継ぎ、ディズニー映画『トゥモローランド』(公開中)の中で描き出したのだ。
このミステリー・アドベンチャーに挑戦したのは、『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』で2度のアカデミーション長編アニメーション賞に輝き、トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』でも成功を収めたブラッド・バード。彼が監督・製作・脚本を務め、テレビシリーズ『LOST』のクリエイターとして脚光を浴びたデイモン・リンデロフを共同脚本家に迎えた最強コンビで、壮大なプロジェクトに挑んだ。
ブラッド・バードとデイモン・リンデロフの2人だからこそ生まれたと言える、ディズニー映画であり、ミステリー・アドベンチャー大作。彼らはウォルトが夢見た未来都市"トゥモローランド"をどのように描いたのか、また、主演のジョージ・クルーニーにまつわるエピソードなど、ブラッド・バード監督に製作秘話を聞いた。
――ディズニー作品らしいメッセージが根底にあり、アクションやミステリーなど、さまざまな要素の詰まった映画でした。製作において、"ディズニー映画"であるということをどれくらい意識していたのでしょうか。
もちろんとても意識していましたし、それに関して興奮を抑えることはできませんでした。なぜなら、ディズニーは私が子供のころに多大な影響を受けた人物でしたから。特に、私自身が信じている未来というのは、ウォルト・ディズニーが語っていたものと共通するものでした。「未来というのは、起こるものではなく作るもの」。私もそう思いますし、楽しく、努力していくものだと。そして、恐れるものではない、受け入れていかないといけないものだと思います。
――CGやセット、そして実在の都市でも撮影し、"トゥモローランド"を作り上げたそうですが、この理想の未来都市を描くにあたってこだわったことを教えてください。
とにかくリアルに感じてもらいたい、鮮明な夢になるようなものにしたいという思いがありました。
また、都市であってもキャラクターの一つであるようにとの思いもありました。いろいろ姿を変えていくものでしたので。
――都市をキャラクターとして考えられていたんですね。
初期の"トゥモローランド"は約束に満ちた、約束の場所というような雰囲気が出ているのですが、ケイシーが訪れる"トゥモローランド"は80年代っぽさがあり、80年代バージョンの未来というものになっています。その後の"トゥモローランド"は、閉ざされ始めているような情景になり、未来というのは常に変わり続けているというのを伝えているんです。未来は日々変わっていくものなので、ちゃんとお世話をして、明日というものに対して食事を与えないとうまく育っていかない。生き物と同じですね! ちゃんと食事もきちんと与えて世話をしていればよく育っていくんですが、飢えさせてしまうと悪いものになってしまう。私たちは長らく飢えさせているところがあるので、ちゃんと世話をしてあげないといけないと思います。
――なるほど。ちゃんと食事を与えないといけないですね。この"都市をキャラクターとして描く"というのは、アニメーション出身のブラッド・バード監督ならではのように感じます。
そうですね。アニメーションの経験から、すべてを視覚化する、どう物が動くのかをわかっていないといけないというのがあります。そして、何でも動きに対して個性、性格のようなものを与えないといけないというのは、私が幼い頃にディズニーで学んだことでもあるので、今回の街・都市に対するアプローチも性格を与えるというものでした。
――きっかけはディズニー作品だったんですね!
子供の頃にディズニー作品を見た時に、砂糖の入れ物自体が命を持っていたんです。そういう考えは頭になかったので、すばらしいことだなと思った経験があります。
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●南の島でのジョージ・クルーニーとの撮影秘話
――"トゥモローランド"の謎を知る男・フランク役のジョージ・クルーニーさんが、複雑な感情を見事に演じられています。彼を起用した理由を教えてください。
質問の中にある通りで、複雑な感情を持っている役を、とても説得力のある素晴らしい、そしてみなさんが共感してくれる形で演じてくれました。今まで彼はこのような役を演じたことがないと思いますが、彼は優れた役者ですので、そういう役であっても容易に演じているように見えるようにやってくれましたね。彼と一緒に仕事ができて最高でしたし、興奮でした。
――作品の中で変化していく感情が見事に描かれていました。
ジョージ演じるフランクは、昔は未来を信じていたんですが、未来に裏切られたという思いと、未来に対する恐れを抱いてしまい、彼の住む家はまるで未来に対して自分を防御するような家になってしまいました。彼はそれを見事に演じてくれていましたね。
その後、結果的に、昔抱いていた思いにまた導かれていくというところも。
――今回の撮影で印象深いエピソードを教えてください。
映画の中で、パラダイス(楽園)のようなものを撮影する必要がありました。すでにフロリダでほかの撮影が進行していたため、最初はフロリダのビーチで撮ることになったのですが、そのビーチにはパラダイスに見えるものがなかった。そこで、バハマに行きたいと言ったんです。近いし必要だと。ところがプロデューサーの1人が、そこまですべての機材や人を動かすのはお金ががかかりすぎると言い、だったら少人数で手早く撮るのはどうかって提案したんです。そして、少人数でバハマに行って撮影したんですが、その撮影は印象深いものになりました。
とてつもなく巨大な映画を撮っている時に、インディーズ映画を撮っている感じでしたね。
――パラダイスの撮影に、そんな裏話があったんですね。
本当に少人数で行ったので、1人が複数の作業をしなければいけないという状況でした。ジョージ・クルーニーと、(デイヴィッド・ニックス役の)ヒュー・ローリーも、機材を動かしてくれるなどして、撮影を敢行しました。さらに、ヒュー・ローリーが小さなバーでピアノの演奏もしてくれたんです! 南国の小さな島で撮ったんですが、これ以上にない経験でした。
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