バッファローの11ac無線LANルータ「WXR-2533DHP」 - 4×4 MIMOで最大1733Mbpsはどこまで速いか
○IEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠で4×4 MIMOの最新スペック
バッファローの無線LAN(Wi-Fi)ルータ「[WXR-2533DHP(http://news.mynavi.jp/news/2015/06/03/305/)]」は、2.4GHz帯のIEEE802.11b/g/n、5GHz帯のIEEE802.11ac/a/nと、現状使われている無線LAN規格のすべてをサポートした製品だ。IEEE802.11ac準拠の製品としては最新スペックとなる、4ストリームMIMOに対応しており、最大1,733Mbps(規格値)という能力を持つ。
今回は発売直前のほぼ製品版を試用できたので、実際のスループットを中心に紹介したい。バッファローの開発陣は、最高の速度を追求するより、安定した転送と使い勝手を重視しているようだ。
○外付けアンテナを含め大きな本体サイズ。設置場所は事前にチェックを
WXR-2533DHPの第一印象は、デカイ。バッファローの無線LANルータだと、3×3 MIMO対応の「XR-1900DHP」も外部アンテナを採用しているが、こちらはアンテナとアンテナのすき間が6cmで本体サイズはW185×D41×H185mmだ。
これに対してWXR-2533DHPは、アンテナとアンテナの間隔が8cm~9cmと広い。全体として、本体サイズはW316×D57×H161mmとなる。
参考までに、同じく4×4 MIMOモデルで、最大のライバルになるであろうNECプラットフォームズの「Aterm WG2600HP」は、内蔵アンテナで本体サイズはW38×D130×H181mmだ。必ずしも小さいほうが良いとはいわないが、WXR-2533DHPの本体サイズと実際(宅内)の設置場所は、購入前にきちんと考えておくべきだろう。
一方、過去からバッファロー製品を使っているユーザーの視点でいうと、薄型シンプルな本体デザインとインジケーター類に好感を持った。従来の無線LANルータ製品は、部屋の中でインジケーターの発光色が気になっていたが、WXR-2533DHPでは照度をグっと抑えた白で目立たない(エラー時には色が付く)。
○セットアップカードが便利
WXR-2533DHPは、本体裏にAirStasionセットアップカードが入っており、片面には初期SSIDと暗号化キー、反対側にはセットアップ用のQRコードが書かれている。必要なときに本体から取り出して、セットアップカードの情報を見ながら手打ち、あるいはスマホカメラでQRコードを撮影し、Wi-Fi接続を設定できる。
セットアップカードはいわゆる「カードサイズ(85x54mm)」なので、なかなか収まりがよい。かつて初期SSIDやパスワードは、マニュアルに用意された空白に自分で書き込んで保管したものだが、それと比べてずいぶん進化したものだ。ちなみに、セットアップカードを紛失しても、本体に初期SSIDと暗号化キーが印字されているので問題ない。
●気になる「電波の飛び」と「転送スピード」は?
○電波の「飛び」は良好
まず、手持ちの11ac対応機器である「Nexus 5」を使って、WXR-2533DHPと通信してみた。自宅内のあちこちで試したところ、接続性はよい。直線にしてどれくらいの距離で通信できるのかと、屋外でも利用できる電波(W56の100ch)に設定し、家の外からも通信してみた。すると、おおむね40mまで接続していることが確認できた(もちろん転送速度は落ちる)。
○条件しだいでギガビット有線LANに比肩するスピード
2015年6月の時点では、11acの4×4 MIMOに対応した「子機」が存在しない。
よって、WXR-2533DHPの最大通信速度(規格値)である1,733Mbpsに対して、実際にどれほどのスループットが出るのかをきちんと検証するのは難しい。
今回は2台のWXR-2533DHPを用いて、WXR-2533DHP同士の実効速度を計測してみた。計測用のPCはWXR-2533DHPの有線LANハブに接続しているため、1000BASE-T(Gigabit Ethernet)が規格上の上限となる点はご容赦いただきたい。仮に、1000BASE-Tと同レベルのスループットが出るとすれば、それはそれで注目に値するだろう。
テスト環境だが、木造二階建ての隅にある仕事部屋に、WXR-2533DHPを設置。そして転送テスト用のサーバーマシンを接続した。もう一台のWXR-2533DHPはブリッジモードにして、仕事部屋に置いたWXR-2533DHPに接続(いわゆるイーサネットコンバータとして使用)。ブリッジモードのWXR-2533DHPには、転送速度テスト用のノートPCを1000BASE-Tで接続し、WXR-2533DHP(仕事部屋)とWXR-2533DHP(ブリッジモード)の無線LANスピードを計測した。
テストには「LAN Speed Test」という有償ソフトを使用し、500MBのデータを同時に10ストリーム流して比較している。
事前のテストとして、WXR-2533DHPの有線LANハブにサーバーマシンとノートPCをつなぎ、100BASE-Tの実効速度を計測。これは950.4Mbps程度となった。
WXR-2533DHP同士の無線LAN通信は、仕事部屋の中に二台のWXR-2533DHPを設置した場合は「912.6Mbps」程度と、1000BASE-T有線LANとほぼ同等だ。さらに、仕事部屋から壁を一枚へだてた隣室では「655.7Mbps」、さらに二部屋を離すと「402.0Mbps」だった。距離と障害物の影響はあるものの、十分な速度といってよいだろう。
●外付けアンテナの利点。アンテナの向きを調整して速度アップ
○アンテナの向きを調整して接続性と通信速度を高める
また、仕事部屋から見て隣室の真下にあるリビングで通信を行いつつ、WXR-2533DHPのアンテナを調整した結果、701.7Mbpsまで通信速度が上がった。
木造住宅とはいえ、1階と2階の無線LAN通信で701.7Mbpsも出れば上々だろう。
一般論として、無線LANアクセスポイントの設置場所と住居の構造によって、最適な設定は異なる。アンテナを動かして最適な「電波の飛び」を調整できる、WXR-2533DHPのメリットを感じ取れた。アンテナの調整は、大きなファイルを転送してネットワークのスループットを確認しつつ、WXR-2533DHPのアンテナを動かしながらスループットの変化を見るとよいだろう。
アンテナ向きの調整に関しても一工夫ある。バッファローのWebサイトで「アンテナ設置ガイド」を配布しており、これを印刷して使う。
このアンテナ設置ガイド、WXR-2533DHPの標準的なアンテナ配置が型紙のようになっている。WXR-2533DHPの後ろにアンテナ設置ガイドを置き、型紙の図に合うように、WXR-2533DHP本体のアンテナ向きを調整する。
標準設定のほかにも具体的な4種類の設定例があるので、アンテナ設置ガイドで仮設定したのち、実際のスループットを見ながら微調整するとよいだろう。WXR-2533DHPは、安定感の高さと良い意味で見た目の地味さ、そして外部アンテナならではの、環境に合わせたアンテナ調整が可能という点に魅力を感じる。使い勝手を考えたセットアップカードやアンテナ設置ガイドも完成度が高く、設定しやすい作りは高く評価できる。逆の見方をすれば、アンテナが目立って本体サイズが大きい点は、人によってはデメリットにもなるだろうが、無線LANの親機はあまり買い替えるものではない。筆者個人としては、WXR-2533DHPのような安定性を重視するだろう。