味の素研究者が生んだ『九州力作野菜』プロジェクト -事業にイノベーションをもたらす、技術者ならではの視点
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科(一橋ICS) 国立大学初の専門職大学院として2000年9月に開校。50~60名という小規模なクラスで日本人が2~3割、後はアジアや欧米、中東などからの学生で構成され日本にいながら海外留学をしたかのごとく、密に国際ビジネスを学べる。対象は実務経験3年以上の社会人で、高橋氏のように国内企業から派遣されてくるケースも少なくない。
○地球温暖化防止活動環境大臣表彰も受けたプロジェクト「低炭素化と農業振興につながる農業バリューチェーン」
バイオテクノロジーの技術者として味の素に入社した高橋氏だが、事業開発のフィールドでイノベーションを起こしたという、一風変わった経歴の持ち主だ。
高橋氏が手がけた“『九州力作野菜』『九州力作果物』プロジェクト”は、味の素のみならず、農家、農作物の流通・小売業者、消費者のすべてに利益をもたらす「共通価値の創出(CSV:Creating Shared Value)」を実現した。
バイオテクノロジーの技術者として味の素に入社した高橋氏だが、事業開発のフィールドでイノベーションを起こしたという、一風変わった経歴の持ち主だ。高橋氏が手がけた“『九州力作野菜』『九州力作果物』プロジェクト”は、味の素のみならず、畜産家、農家、農作物の流通・小 売業者、消費者のすべてに利益をもたらす「共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)」を実現した。
大学院でバイオテクノロジーを研究していた高橋氏が、味の素に入社したのは2000年。 「味の素の主製品の成分は、グルタミン酸ナトリウムというアミノ酸です。どうすればこれを効率的に つくれるか、というのが研究内容でした」(高橋氏) 10年間、アミノ酸製造の研究をした後、佐賀の九州事業所(九州工場)の事業開発部門へと異動になった。ここで高橋氏は、発酵副生バイオマスと向き合うことになる。発酵副生バイオマスとは、 アミノ酸をつくる際に生まれる発酵副産物で、酒粕のような柔らかい粘土状の物質だ。
すでにすぐれた有機系肥料として知られており、九州事業所ではこの粘土状のバイオマスを重油を燃やして作った温風で乾燥させて、肥料業者に販売していた。
「ところがこれが大赤字でした。年間600klもの重油を燃やして2000tの炭酸ガスも排出しながら赤字を出し続けるというのはもったいない。どうにかしなければ、と考えていました」(高橋氏)
○突然の人事異動。信念を持ち、伝え続けた結果だった
自分の仕事とは直接関係ありませんでしたが、この考えを色々な人に話していたところ、発酵副生バイオマスの事業開発を任されることになった。 2011年のことだ。 「突然の人事異動、しかもこれまで全く関わったたことのない副産物の担当ということで、周囲からもびっくりされました」(高橋氏)
そこから高橋氏の奮闘が始まる。乾燥工程を省いた、湿ったままのバイオマスを販売するために、「カオスでした」というほどの苦労を経験した。
従来乾燥させたバイオマス由来の肥料を使っていた農家にも持ち込んだが、湿ったままでは農業用機械を使って撒くことができず、多くから断られたという。しかしある一軒の農家が行った試みをヒントに、重油を使わずに乾燥させる手法を発見する。データ分析により、その手法で乾燥させたバイオマスを肥料にすると、甘味やうま味成分を多く含む作物をつくれることも証明できた。「このデータがあれば作物の売り先を探しやすくなる」と、農家や卸売業に大好評のサービスになったという。
「乾燥方法を見つけるところで終わりではなく、その後のことまで考えられていたんですね。高橋さんが自分の領域のことだけしかしていなかったら、イノベーションは起こらなかったかもしれませんね」(平田氏)
結果的にこの肥料で育った作物は、イオン九州で『九州力作野菜』『九州力作果物』ブランドとして販売されるようになり、また肥料そのものもホームセンターで『九州力作堆肥』として販売されている。さらにこのバイオマスが、下水処理で発生する汚泥肥料と混合してより質の高い肥料を生産できることがわかり、全国の下水道を管轄する国交省からも注目されるようになった。
「自分だけの力でできたわけではありません。
味の素のみならず、畜産家、農家、農作物の流通・小 売業者、行政、それぞれの関係者がこれまでに蓄積してきた強みをつなげられたのでイノベーションが起こりました。なぜつなげられたかは、セミナーでお話できればと思います」(高橋氏)
ここまで事業が広がった裏には、ドラマで言うところの伏線が数々ありそうだ。この辺りについてはシンポジウム本番でのトークに譲ろう。
○技術力だけでは、他国の安い人件費に勝てない?
「高橋さんは、もともとは技術をやっていたわけですよね。技術から離れて事業開発に行くことに、未練はありませんでしたか?」と服部氏から問われた高橋氏は、「最初はありました。でも、今回のような事業開発は、自分が技術職だったからできたことだとも考えています」と答える。
「グルタミン酸ナトリウム(味の素製品の主成分)などのアミノ酸は、装置産業なので、アミノ酸を作る菌と発酵プラントがあれば、どこでもつくれるものです。日本では技術力を使って効率的に生産していますが、人件費が安い国で作ると、それほど技術力が高くなくても日本の方が割高になってしまうことがあります。
せっかく日本の技術者が頭を悩ませてつくったものを、コスト競争の結果、安く買い叩かれているという状況のままでは、工場が疲弊していってしまいます。その解決のためには、商品に当社ならではの売り方やサービスを融合させなければならない、という考えは以前からありました。今通っている一橋ICSで習ったのですが、「モノかサービスか」ではなく、「モノもサービスも」一緒に販売するという「サービスマネジメント」という考えです。だから事業開発へ行く決心がついたんです」(高橋氏)
作物の味や成分についての分析結果をデータ化して、販売促進やネットワークづくりに役立てるというアイディアも、こうした考えから出てきたものだ。高橋氏の起こしたイノベーションは、技術者ならではの危機感と、並々ならぬ行動力から生まれたと言える。 高橋氏は最後 に「技術者に戻るのではなく、技術を活かすような仕事ができるようになりたいですね」と、今後の目標を語ってくれた。同Cafeが7月に行うシンポジウムでは、「現在の延長線を追求するだけでは、イノベーションは生まれない」という前提のもと、「では何 を、誰とつくればいいか」に焦点を絞ったものになる予定だが、高橋氏の実例もその好例の一つとなるだろう。当日は高橋氏自身の口から イノベーションの詳細や、本稿では触れなかった興味深い話も聞けるはずだ。
現在企業内で技術開発、事業開発のどちらに携わっている方 にも、参考になるに違いない。
関連リンク
-
映画『スペシャルズ』佐久間大介インタビュー「ダンスって好きにならないとうまくならないんです」
-
new
福島牛メガ盛りと蜜桃ジュースを在庫限りの特価で販売!さらに!年に一度の大決算セールで対象商品が20%OFF!JAタウンの「JA全農福島」から産地直送でお届け
-
new
親戚のいる場で『育ちが違う』嫁を馬鹿にする義両親。しかし直後「いい加減にして!」まさかの救世主が義母を黙らせた!?
-
new
真夜中に…『ママ!こっち来て!』娘が号泣?⇒不審に思った妻だが…【窓】から目にした光景に凍りつく!?
-
『リブート』後輩刑事役で話題! 中川大輔が語る“猫”の魅力「気まぐれな態度にも心を奪われてしまうんですよね」