Googleの無料音楽サービスはApple Musicにどれだけ影響を与えるか?
23日(現地時間)、米Googleは同社のオンラインミュージックサービス「Google Play Music」において、広告収入型の無料サービスを開始することを明らかにした。Web版が23日から、AndroidとiOS用アプリでは今週中にサービスが開始される予定だ。
○Google Play Musicとは
Google Play Musicは、ユーザーが自分のライブラリを最大で5万曲までアップロードして、ストリーミング再生できるオンラインストレージ&プレーヤー機能が提供される無料版と、月間9.99ドルのサブスクリプション制サービスで、Googleが提供する3,000万曲以上のライブラリが聴き放題になる「Google Play Music All Access」の2つのサービスがある。
残念ながら、現時点でサービスが提供されているのは南北両米大陸と欧州、豪州を中心とした58カ国で、日本を始めとするアジアは対象外のサービスとなっている。日本のAndroid端末にも「Google Play Music」アプリはあるが、基本的にパソコンから楽曲ファイルをコピーして再生するプレイヤー扱いで、クラウドからストリーミング再生などはできない。
今回公開される無料機能は、Googleが作成したプレイリストを選択して再生するという仕組み。ユーザーが曲を自由に選ぶことはできない。プレイリストは「運転中」「トレーニング中」といったテーマに分かれており、その時のシチュエーションに応じて選択する。
また、ユーザーが曲を選択すると、その曲に類似した曲を集めた独自のプレイリストを作成することもできる。こうしたプレイリストの作成には、Googleが2014年に買収した音楽キュレーションサービス「Songza」の技術が使われているようだ。
広告は、プレイリストの最初に広告が1回入るタイプで、Youtubeのように再生時に途中キャンセル可能なCMを採用するなど、いくつかの方法を検討しているという。
●Apple Musicとはどう違う?
○ライバルはApple Music?
同様の音楽配信サービスとしては「Spotify」などがあり、今月末にはAppleの「Apple Music」もスタートする。また米Amazonも有料会員(Amazon Prime)向けに、自己ファイルアップロード無制限、楽曲聴き放題の「Amazon Music」を展開するなど、米国では有料・無料を問わず聴き放題系サービスは激戦区だ。
Googleがこのタイミングで無料サービスを提供してきた狙いとしては、もちろん有料サービスに移行するためのきっかけとして無料サービスに触れてもらうということもあるだろうが、1番大きいのは今月末に始まるApple Musicへの牽制だろう。実際、Apple MusicとGoogle Play Music All Accessは非常に似たサービスとなっている。
GoogleはiTunes Matchに対抗して保存可能な曲数を2倍に設定し、ファイルのアップロードだけなら無料にしている。
最後のラジオサービスの部分が無料版Google Play Musicに追加されたわけだ。
Apple Musicは基本的に有料サービスだが、24時間放送のラジオサービス「Beats 1」と、「iTunes Radio」は無料で利用できる(iTunes Radioは広告付きサービスだが、iTunes Matchに加入していると広告をキャンセルできるため、Apple Musicユーザーも同様になると思われる)。
おそらくGoogleは、この部分でAppleに対して同様に無料で利用できるサービスを提供することで、ユーザーに対して存在感をアピールしたいのだろう。なお、無料版ではオフライン視聴機能やプレイリストの作成機能、楽曲数、曲のスキップ回数などに制限が加えられる。
スペックだけでみればApple Musicより2倍の容量を持ち、無料ユーザーでも曲をアップロードできるといった点で魅力的なGoogle Play Musicだが、現実的にアップロード曲数が2万5000曲を超えるユーザーが全体の中でそう多いとも考えにくく、今回のラジオ機能が、はたして有料サービス契約への有効なきっかけになるかどうかはわからない。
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サービス開始1週間前という、実にいやらしいタイミングでの発表してくるあたり、Apple Musicへの牽制としては、十分な役目を果たしているが、逆にこれで、Apple Musicへの注目度が再び上がるのではないだろうか。
ところで、日本ではGoogleの音楽配信自体がまだ始まっておらず、Google Play Storeも映画と電子書籍、アプリのみだ。AWAやLINE MUSICといった国内サービスはようやく始まったが、世界的なトップブランドであるSpotifyの日本展開もメドが立っていないなど、外資系サービスには参入が難しい土地柄だ。
残念ながらGoogleのブランドを持ってしても、Google Play Musicの日本展開は当面、難しいのではないだろうか。それならそれで、クラウドサービスくらいは使わせてもらいたいところなのだが……。