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FTF 2015 - 基調講演で語られた注力市場の未来

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FTF 2015 - 基調講演で語られた注力市場の未来
●戦略の発表がなかったFTF 2015の基調講演
○過去最短の1時間半で終了した基調講演

2015年6月22日から25日(米国時間)にかけて開催された10周年記念となったFreescaleのイベント「FTF 2015 Americas」に関する一連のレポートをお届けしたい。まず最初はCEOの基調講演から始めたいと思う。これまで何度となく書いてきたが、従来のFTFにいけるCEOの基調講演は、まず業界動向とか社会の動きを織り交ぜながら同社の戦略を大きく語るところからはじめ、次いでその戦略の個々の要素に対して同社がどう取り組んできたか、その取り組みの中でどんな製品を提供してきており、そしてこれからどういうものを提供してゆくかを順次語るものになっていた。

こうしたフォーマットは別にFreescaleに限ったものではなく、一般にある程度の規模の会社ならば当然こうしたフォーマットを取る事になる。個別の製品発表会ならばともかく、FTFのクラスのイベントであれば一番重要なのは戦略だからだ。ところが今回のCEOの基調講演はこれと大きく異なるものだった。マーケットセグメントごとに同社がどんなポジションにあり、そしてそこにどんな新製品を投入するかを語るという、まるで製品説明会の拡大版になっていた。もちろん今年後半にはNXPによる買収を控えている状態で戦略を語る事に意味は無い訳で、その辺りを反映した結果であろうが、結果として過去最短の1時間半で基調講演が終わることになったのはちょっと寂しさを感じるものだった。


さてその基調講演であるが、まずは現時点のFreescaleのポジションの再確認から始まった。まずIoT分野で言えば、eReaderでNo.1、自動車のInfortaiment向けでNo.2、中国ではMCUおよび自動車向けNavigationでNo.1のポジションにある。Network分野では同社がデファクトスタンダードであり、Network MPUではNo.1のサプライヤーであり、しかも64bit ARMとPowerPC製品は16nm FinFETプロセスに移行することも明らかにした。自動車向けとしては100種類以上のMPUをすでに出荷しており、多くの自動車メーカーとの協業を行い、北米ではNo.1、全世界ではNo.2のサプライヤーであるとしている。Analog/MEMS分野では、特に自動車向けのAirbag/Rader/Tire Pressureといった製品群でNo.1のサプライヤーであり、しかもISO26262の対応も済んでいることを説明、最後にRFは年率57%で成長しており、特に中国における基地局ビジネスで強みを持っているとした。

そうした説明の後で、先に述べた通りNXPと今年後半に合併を行うことになるが、これによってメモリを除くと世界第2の半導体会社となり、自動車向けのNo.1サプライヤーとなること、両社の持つリソースを組み合わせることでIoTのSolution全体を提供できるサプライヤーになること、両社の提供するポートフォリオが相互に補完しあえるものであり、これによって完璧なポートフォリオが実現することなどを説明した。またこの合併に当たっては、顧客のシームレスな移行を実現すべく、合併チームが現在懸命に作業を行っていることも明らかにした。

●注力市場であるIoT/セキュリティ/自動車の各分野に向けた新製品群
さて、ここからは新製品紹介に切り替わった。
まずConnected Deviceが2020年には200億台にも達するとし、こうしたConnected Devicveが安全に接続されるためには高いセキュリティ性能が求められる。これに向けて低消費電力で低コスト、かつ高い性能を持つプロセッサが必要ということで同社のNancy Fares氏(Photo02)が登壇、「i.MX 6Dual SCM」を発表した(Photo03)。これは同社のi.MX 6DualをベースにFlash MemoryとDDR SDRAM、PMICまでをPoP(Package on Package)の形で積層したSCM(Single Chip Module)である。またInhand Electronicsが8週間で開発したとする、i.MX 6Dual SCMをベースにしたボードも披露された(Photo04)。

次はIoT Truckの紹介が行われたが、こちらの紹介はTechnology Labsと合わせて行うことにして今回は割愛する。次いでIoTにおけるセキュリティの重要性をあらためて説明した後で、Gowri Chindalore氏(Head of Technology & Business Strategy)が登壇、同社が新しく発売した「Kinetis KW40Z」の紹介と共に、Proximityの開発したIoT Device Management Softwareをi.MX/Kinetis向けに提供してゆくことを明らかにした。基調講演ではこれに続き、Kevin Mitonick氏(Photo06)を招いてセキュリティに関するさまざまな話題を取り上げた。話題は多岐に渡り、またTwitter経由での質問も受け付けたりしたのだが、一番聴衆を沸かせた話題は「Hackingの成功率は100%」と断言したことだろう。
Reverse EngineeringとSocial Engineeringを組み合わせることで、Hackingが出来なかった例は無い、とした事だろう。また最後に披露されたMitonick氏の名刺(Photo07)もなかなか沸かせるものだった。

セキュリティ繋がりで次に紹介されたのが、新しい「Kinetis K8xシリーズ」である。これはCortex-Mプロセッサをベースに高いセキュリティ性やAnti-Tampering性を持たせたもので、汎用ではあるものの、POS端末などセキュリティ要件が高いマーケット向けのものである。これに加え、ネットワーク分野に向けてRubicon LabsとAkamaiで協力していることを紹介(Photo08)。同社がAkamaiと開発しているZero Knowledge Keyという技術がFreescaleのNetwork Processor上にインプリメントされていることを説明した。

次に話は自動車分野に移った。ここではGMのJohn Capp氏(Photo09)を招き、GMの取り組んでいるより安全な運転システムについてビデオを交えて紹介。
そのシステムが2017年モデルのキャディラックに搭載されることも明らかにされた。

最後に紹介されたのは、「SAM Project」への取り組みである。これは元Indy CarのRace Driverであり、2000年に負った怪我でリタイアしたSam Schmidt氏(Photo10)に、再び運転を出来るようにしようというもので、Arrow ElectronicsとFreescaleのコラボレーションで成立しているものだ。「四肢麻痺の状態でどうやって運転を行うか」はProjectサイトの動画を見てもらうのが早いが、要するに首の動きでハンドルを、口に咥えたチューブへの圧力でアクセル/ブレーキのコントロールを行うというもの。この首の動きやチューブの圧力検知はKinetisで、その検知結果から車を制御する部分のシステムはi.MX 6をベースとしており、システム全体はArrow Electronicsが構築した。こちらのデモはTech Labsでも展示されたので、これはまた改めて紹介したい。

●NXPとの合併により自動車向けの最大サプライヤーに
○NXPのCEOも参加したCEO Roundtable

さてこの基調講演後にCEO Roundtableが行われたが、そこにはGregg Lowe氏に加えてNXPのCEOであるRichard L. Clemmer氏も同席した(Photo11)。

まず合併によるシナジーとして、「Freescaleの持つMCUのポートフォリオに、NXPのSecurityのポートフォリオを組み合わせることで完璧なIoT向けのポートフォリオが完成する」(Clemmer氏)とした上で、ネットワークのインフラ向け製品やRFに加え、自動車向けの最大のサプライヤーになる事を強調、特にADASなどの運転安全性に向けた取り組みは相互のポートフォリオが補完し合えるとし、現在は顧客がシームレスに移行できるように作業を急いでいるとした。
また合併について、「両社は共に有力な半導体製造会社であり、また同じような経緯をたどってきており(親会社からスピンアウト、一度IPOをするもののファンドにMBOされ、Private Companyの時期を経て再びIPO)文化的に近い」とした。

また重複する部門については、「すでにNXPはRFの部門を売却しており、FreescaleのRF部門はそのまま残ることになる。また自動車分野は重複がほとんど無いので、現在はどういう形で統合するのがよいかを検討している最中。MCUについては、Geoff Lees(SVP & General Manager, Microcontroller。元はNXPで同じ職にあった)がSecurityとConnectivityを核にConnected Deviceの実現に向けて(統合を進めて)いる。Network Processorに関しては、Power Architectureは大きな市場をすでに獲得しており、合併後の会社でもこれは大きな売り上げになると期待している」(Clemmer氏)とした。

ただし明確にされたのはこのあたりで、例えば今後の製造に関しては「例えばMCUは90nmを経て28nmに向かっているし、我々もそうしたトレンドは理解しており、適切な時期に適切なプロセスを使うことになる。ご存知の通り90nm以上は内部の、65nm以下は外部のFabを使っているが、今後どうして行くかは現時点ではまだ発表できない」(Lowe氏)といった感じで、明確にはされなかった。
また統合に伴うリストラに関しては「合併によって、例えばR&DコストとかEDAツールのライセンスなどのコストが削減できることになる」(Clemmer氏)とし、リストラそのものについては明言されなかった。

深読みすれば、例えばR&Dコストの削減というのはかなりの部分それに携わる人間の削減に繋がるし、間接部門のコスト削減についてもしばしば人員の削減が必然的に発生する。ただ、現時点ではこれをどの程度の規模で行うかまで、まだ煮詰めは終わっていないと思われる。このあたりは、実際に合併が行われるまで外部からはうかがい知る事はできなそうだ。

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