祝儀袋のデザインとつかいかた (2) 結婚式に出席する場合
お祝いのきもちを自分らしいデザインで表せるようになった反面、贈る相手によってどういったデザインのものを選んだらいいのか、また贈る際のマナーなどについて、迷ってしまうのもまた事実。そこで、祝儀袋をはじめとした紙製品を長年販売している文具メーカー・マルアイの担当者に、祝儀袋に関する豆知識やマナー面について聞いてみました。
今回は、祝儀袋の主な用途でもある「結婚式に出席する場合」の使い方について、解説してもらいました。
――祝儀袋には「表書き」用に「寿」などと印刷された短冊がついてきますが、中には表現の異なるものが複数付いてくることがあり、どれを使うか迷うことがあります。どういった使い分けをしたらよいのでしょうか?
表書きは、「寿(ことぶき)」「ご結婚御祝」「御祝」などが一般的ですが、地域によっては「贐(はなむけ)」「御贐(おはなむけ)」などを用いることもあります。
例えば、青森県では、会費制の結婚式も多く行われますが、「御贐」と印字された金封がよく使われています。
(青森以外でも岩手の三陸海岸沿いや秋田、山形の一部でも使われています。)また、会費制の場合、会費はそんなに大きな金額にならないので親戚等は結婚式の前に祝い金を「御贐」金封を使って渡すこともしばしばあるそうです。
――祝儀袋には自分の氏名や金額などを書き込む部分がいくつかありますが、気をつけるべき部分は?
書体は、楷書で書くのが原則です。特に、目上の人に対しては丁寧に書きましょう。筆記具は、毛筆で書くのが正式です。しかし、近年の筆離れと筆記具の目覚ましい開発で、毛筆に代わって筆ペン、フェルトペンなどが多く使われています。ただし、毛筆でも筆ペンでも、文字の色は濃い色で書きましょう。薄墨(うすずみ)で書くのは、弔事の作法になります。
最近は冠婚葬祭両方に使えるよう、薄墨と濃い墨がセットになっている筆ペンなどもありますので、間違えないようにしましょう。
中袋への記入方法は、表側中央に漢数字で包んだ金額を書き、裏側に自分の住所・氏名を書きます。ただし、中袋にそれぞれ記入欄がある場合もあるので、その際は記入欄に合わせて書きます。たまに弊社へお問い合わせがある表書きの書き方で、「グループで金封を送る場合、贈る人の氏名どう書いたら良いか」というものがあります。基本的に、2~3名の場合は、個人で渡す場合と同じように水引の下に連名で記入しますが、それを超える人数のときは、グループ名を「○課一同」「○会有志一同」などと書き、別紙にメンバーの名前を書いて袋にいれましょう。
――前回解説いただいた熨斗ひとつ取ってもさまざまなデザインのものが売られていますが、その基本や習わしについてお聞かせください。
祝儀袋の中央に配されている水引は、真結びが基本です。水引がほどけないような、いわゆる固結びの形で、「結び切り」といいます。
これは、二度とほどけない結びであることから、「二度はないように」という願いから、婚礼や弔事、全快祝い、また、近年日本でも度々起こる自然災害の御見舞いなどに使用します。逆に、何度あっても良い祝い事(一般的なお祝い)では、花結び(蝶結び)を使用します。これは、出産祝いの項で、詳しく解説しましょう。
婚礼用としては、この真結びを装飾的にした「あわび結び」が多く使われます。水引の端は上方に左右対称にはねているものが原型で、その他にはねた端を「老の波(おいのなみ)」といって波のように縮れをつくるものがあり、また「日の出」といって、はねあげた水引の先を再び交差させるものや、鶴・亀の形にするものなどがあります。
また、水引には本数の形式もあり、5本、7本など奇数に結ぶのがしきたりになっていて、丁寧になればなるほど本数が多くなります。これは、「奇数が陽で、偶数が陰」とする古代中国の陰陽説からきていると言われています。ただし、婚礼の場合は、10本というしきたりになっていまして、これはなぜかというと、10本は偶数=陰と捉えるのでなく、奇数の5本を倍にした数で、二重におめでたい、豪華であるという意味合いを持っているそうです。
また、熨斗の形も、飾り熨斗(松竹梅などで飾ったもの)・宝尽くし(吉祥文様のひとつで、小槌や巻物など宝物を集めた文様)・蝶花形など様々なものが使われます。
近頃は若い世代を中心に伝統的な水引の形式を離れて、お付き合いを楽しむようなデザインされた水引や熨斗を使った祝儀袋も多く使用されています。
――ご祝儀に包む額面や、包む際の注意点、額面と祝儀袋のデザインの関係について教えてください。祝儀袋に入れるお金ですが、婚礼の場合は慶事なので新品のお札で用意し、中袋にいれて金封に包み、お渡しします。使用済みのお札を使うのは、弔事のならわしになりますので、ご注意ください。
新札を使うという点は気を遣う方が多いのですが、つい忘れがちなのが、中袋へお金を入れる際のお札の向きです。お札には表裏があり、主に肖像画がある方が表側なので、中袋の表側に向くようにして、さらに肖像画が上に来るようにしてお札を入れます。ただし、お札の入れ方にも地域性があり、肖像画を下に入れるケースもあるようです。
最後に、祝儀袋の選び方ですが、まず金額面としては、入れる金額の1~2%程度の値段の祝儀袋を選ぶのが標準的な目安です。ただし、最近は様々な値段設定の祝儀袋があり、例えば大型のサイズの金封でも標準くらいのサイズの金封でも、紙質やデザインによって値段があまり変わらないこともあります。
入れる金額が10万円未満であれば標準サイズの金封を、10万円以上になる場合は、標準より大きめのサイズの金封を選ばれることをお勧めします。(ちなみに、包む金額についてですが、これはあくまで結婚式を挙げられる方とのお付き合いの程度によります。標準的な目安としては、披露宴の一人前の費用に相当する額ともいわれています)
デザイン面については、弊社の製品を例に、贈る方との関係別に例を挙げていきます。
○マルアイ担当者推薦、「結婚式のご祝儀」のデザイン
■対象:年の近い仲の良い友人
■対象:学校/会社の後輩
■対象:上司/恩師
ここでは一般的な使い方について解説いたしましたが、祝儀袋の使い方は古来より少しずつ形成されてきたので、表書きの例にも挙げたように、日本の各地域によってさまざまな"ならわし"があるのも特徴です。移り住んできた方がその土地の祝儀品のならわしに驚かれることもよくあるようですね。
次回は、結婚式を主催する側に立った時の祝儀袋の使い方を解説します。
(取材協力:文房具カフェ)